パットとライル
わたくしPat Metheny(パット・メセニー)というアメリカのギタリストが大好きでして、主にジャズやフュージョンといったジャンル(他にも映画音楽など)において活動している人なのですが、中でも彼が中心になったPat Metheny Group(以下PMG)というバンドの長年のファンであります。しかしこのバンド、最後にオリジナルアルバムを発表したのは2005年のこと。その年の来日コンサート(東京国際フォーラムで行われ、本当に素晴らしい内容でした)以降、フル編成のメンバーではツアーを行っていません。
確か5〜6年位前に中心メンバーの4人による小編成PMGでツアーを行い、日本でもブルーノートなどでライブを行いました。この時は僕も2公演見に行きましたが、恐らくこれを最後にPMGの名義では活動をしておりません。
(追記)4人PMGの来日、4年前でした…。その時のはてダより。
Pat Metheny Group@Blue Note Tokyo/2009.1.8 (thu.) 2nd Show 21:30〜
http://d.hatena.ne.jp/OKP/20090103
パットはその後「Orchestrion(オーケストリオン)」というデジタル制御でアナログ演奏を行う巨大な自動演奏機械楽器を造り出し、アルバムとツアーを行ないます。何を言っているか分からないと思いますので、下の動画を見て頂くのが一番いいかと…。
Pat Metheny - The Orchestrion Project [Compilation ...
いかがでしょう?(笑)
パットがこのオーケストリオンと共に来日した公演では、オーケストリオンの巨大さとそのサウンドに度肝を抜かれました。
さて、PMGにはLyle Mays(ライル・メイズ)という、パットと長年連れ添った盟友とも言えるピアニスト(キーボーディスト)がいます。僕などはむしろパット本人よりもライルファンと言った方がいい位なのですが、この人の生み出すサウンドがグループの世界観に大きな影響を与えていました。それはライルのソロ・アルバムや、彼が参加した他アーティストの作品を聴くとよく分かります。多くの人が思い描く「PMGぽい雰囲気やサウンド」の多くは彼が担っていたのだな、と。
Lyle Mays - Highland Aire - YouTube
Back Home - Nando Lauria - YouTube
PMGのファンの多くはこのLyle Maysが造り出す世界、そしてパットとライルの2人にしか紡ぎ出すことのできないサウンドのファンなのだと思います。少なくとも僕はそうです。
さて、ここからはあくまで僕の想像でしかないのですが、どうもパットがオーケストリオンにご執心になった頃から、ライルとの関係が良好とは言えなくなってしまったのではないかと…?
これまで、パットはハービー・ハンコックやブラッド・メルドーという世界的な人気ピアニストともバンドやユニットを組んだことがあるのですが、彼らはライルとはかなりタイプの違うプレイヤーでしたし、結局はパットが戻るホームとしてPMGが存在していました(メルドーとのデュオ以降は前述の4人PMGでしたが)。
しかし、このオーケストリオンという機械が奏でるサウンドが、なんともかつてのPMG風だったこと(これもあくまで僕の印象)。かつてライルとの共同作業で生み出してきたようなサウンドを、自動演奏の機械に任せ、パットが1人でアルバムを作り、ツアーに出てしまったこと…。もしかしたらこれらのことが、盤石と思われたパットとライルの間に、溝を生んでしまったのではないか?…と。全て僕の勝手な想像であり、杞憂ならばいいのですが、以後この2人が中心になっての音楽活動は行われていません(と思います)。
その後、パットはトリオ編成のバンドでツアーを行ったり、近年では「Pat Metheny Unity Band」という新バンドを結成して盛んにツアーを行っています。このバンドには鍵盤奏者がいないのですが、ライブでは前述のオーケストリオンの一部をバンドに組み込むことで、かなり複雑なアンサンブルも成立させています。この辺もライルファンとしては非常に気掛かりですね。
Pat Metheny Unity Band - Are You Going With Me ...
こちらはPMG時代の人気曲ですが、Unity Bandのコンサートでも演奏されているようです。キーボード系の音はバックトラック又はオーケストリオンを使って再現しているのでしょうか。これをライルが見たらどう… いやいや。
ここから本題!?
さて、ここで1本の動画を紹介します。
Queen - Bohemian Rhapsody - by one man band ...
Giulio Carmassi(ジュリオ・カルマッシ)というマルチミュージシャンが1人で様々な楽器を演奏し、ボーカルも多重録音してQueenの「Bohemian Rhapsody」を再現したものです。
ちなみに「ひとりBohemian Rhapsody」だと以下の動画の方が有名かもしれません。ロックファンにはこちらの方がウケが良いかもしれませんね、僕も好きです(笑) まぁ、どちらも凄いことには代わりありません。
Split Screen Bohemian Rhapsody Richie ...
そして、昨年僕や一部の仲間内で話題になった動画がこちらです。
First Circle - Pat Metheny - Cover by Giulio ...
ECM時代のPMGの集大成ともいえる代表曲「First Circle」を1人で多重録音し、再現してしまっています。この動画には本当に驚かされました。
ちなみにこの曲のイントロは4分音符で11拍の変拍子上のクラップ(拍手)から始まり、ライブでは聴衆がそのクラップに併せて手拍子を行う曲としても有名です。以下は日本でのライブでの動画ですが、初めて聴いた方には訳が分からないかもしれません。
Pat Metheny Group - First circle -live in japan - YouTube
この曲のイントロについては島村楽器さんのはてなブログに面白い記事がありますので、興味ある方はご覧になってください。
音楽力をアップする「耳コピのすゝめ 」第15回 耳コピテスト「ニューヨーク・シティー・セレナーデ」と「First Circle」 - 島村楽器公式ブログこんにちはサカウエです。前回のインタープレイでひとまずリズムの話はひとやすみ。音楽力をア&...
話がグネグネと蛇行しまくっておりますが、そんなのPMGの代表曲を1人で演奏してしまったジュリオさん。なんと、この度パットのUnity Band改め「Pat Metheny Unity Group」にマルチプレイヤーとして加入してしまったとのこと。どのような経緯があったかは知りませんが「じぇじぇじぇじぇじぇ!」です。
PAT METHENY UNITY GROUP (Promo) - YouTube
PMGはギター、ピアノ、ベース、ドラムというアンサンブルの核を形成する4人のメンバーに、数人のマルチプレイヤー(主な専属楽器がある上で、更にパーカッション、ボイス、ギター、マリンバ…等を演奏するケースが多いです)を加えた編成のグループでしたが、Unity Bandという新バンドにマルチプレイヤーが加わることとなり、バンド名も以前のPat Metheny Groupを彷彿とさせる「Pat Metheny Unity Group」へ…。
もちろんジュリオという新たな才能を加えたパットの新バンドへの期待は非常に大きいのですが、やはりライルのファンとしては、それ以上にPMGの活動が全く見えてこないのが非常に寂しいのですよね。
ちなみに現在のライル・メイズの主立った活動はほとんど聞こえてこない状況で、2011年にTEDxでパフォーマンスを行った動画以来、どの程度ライブ活動などを行っているのかもよく分からない状況です(ちゃんと調べた訳でもないですが)。
TEDxCaltech - Lyle Mays and Friends - YouTube
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本当は「YouTubeでメセニー曲演奏してたおっさんが、メセニーのグループ入っちゃったすげえ!」という驚きを記事にしようと思ったのですが、気付いたら訳分からないことになってしまいました(笑)
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