例年9月末から10月の頭にかけて見頃を迎える、北アルプス「涸沢(からさわ)カール」の紅葉。登山を初めてからずっと行きたかったこの紅葉シーズンの涸沢カールを、昨年2015年にようやく念願叶って見に行くことができました。
それまではGW時期の一面雪景色の涸沢しかしらなかったこともあり、鮮やかな紅葉に染まった涸沢はまさに別世界。これは多くの人が幾度となく足を運んでしまうのも分かります。
そんな紅葉シーズンの涸沢を写真で振り返りながら、この涸沢を訪れるにあたっての情報や注意点などをまとめてみました。(追記:2017年の秋にも涸沢カールを訪れているので、その際の情報なども適宜追加しています)。
- 「涸沢カール」って何? 何処にあるの?
- 涸沢カールまでのアクセスは? 初心者でも行けるの?
- 涸沢での宿泊は山小屋かテント泊、混雑は覚悟しよう!
- 涸沢ヒュッテに行ったらぜひ食べたい「おでんセット」
- 軽食の充実した上高地〜涸沢エリア
- 覚えておきたい、撮影スポット
- あくまで登山、登山届けや防寒対策は忘れずに!
- 秋以外の涸沢カール:ゴールデンウィークには雪上テント村が生まれる
- こんな記事もあります
「涸沢カール」って何? 何処にあるの?
「涸沢カール(からさわかーる)」は北アルプス南部、穂高連峰の長野県側にある人気の山岳スポットの名称。「カール」と呼ばれる氷河が削って生み出した、巨大な谷(氷河圏谷)の一帯を指します。
涸沢カール - Wikipedia
涸沢カールは北アルプスの高峰、奥穂高岳や北穂高岳への登山の中継点としても知られますが、秋になるとこのカール一帯が赤やオレンジ、黄色に染まる日本屈指の紅葉の名所なのです。毎年この時期は、登山者だけでなく多くの観光客がこの涸沢カールを訪れます。
涸沢カールの紅葉を代表する「ナナカマド」。真っ赤に染まった実と葉の鮮やかさは、ややもするとデジカメの写真が色飽和を起こしてしまうほど。黄色く染まった「ダケカンバ」との色の対比も目を楽しませてくれることでせよう。
涸沢カールまでのアクセスは? 初心者でも行けるの?
涸沢カールを訪れるメインルートは、長野県松本市の上高地からの徒歩が一般的。上高地バスターミナルから涸沢まで、距離にして約15km、標高差は約800mになります。
上高地はマイカー規制された山岳リゾートなので、長野県の「沢渡」、あるいは岐阜県の「平湯温泉」にマイカーを停め、その先はタクシー又はシャトルバスを利用することとなります。新宿や大阪からの直行バスもありますが、紅葉時期は早めの予約が必要です。
上高地へのアクセス | 上高地公式ウェブサイト
【さわやか信州号】東京 - 上高地 | 路線詳細 | 《公式》さわやか信州号
コースタイムの目安:上高地から最低6時間は覚悟しよう!
上高地から涸沢までのコースタイムですが、中間ポイントである「横尾」までの平坦路を約3時間、その後登りを3時間の計6時間が目安。子供や山道を歩き慣れてない人は、こまめな休憩を取りながらで、コースタイムプラス1〜2時間は余裕を見ておきたいとことろです。
【コースタイム目安】
上高地バスターミナル(河童橋)
↓(平坦:約1時間)
明神
↓(平坦:約1時間)
徳沢
↓(平坦:約1.1時間)
横尾
↓(登り:約1時間)
本谷橋
↓(登り:約2時間)
涸沢
コースは分かりやすく道迷いの心配もありませんが(この時期は常に登山客がいますし)、最低限地図は用意しておきましょう。
山と高原地図 槍ヶ岳・穂高岳 上高地 (山と高原地図 38)
- 発売日: 2018/02/27
- メディア: 地図
横尾から涸沢カールまでは「3時間の登山です」
上高地の平坦歩きを3時間でやってくる横尾まではウォーミングアップ、ここから本格的な登山道がスタートします。吸水やトイレ休憩はしっかり取っておきましょう。
横尾から一時間程で現れるのが本谷橋。この辺りから徐々に紅葉も濃くなり、登山道の傾斜もキツくなっていきます。景色を楽しみつつ、マイペースで登りましょう。
涸沢までならば、初心者でも歩けるコースではありますが、あくまで登山用ザック、トレッキングシューズ(軽登山靴)、上下レインウェアといった基本装備は持っている(使ったことがある)レベルの登山経験者向け。決してジーパン+スニーカーで行くような場所ではありません。
トイレは横尾までは1時間おきに「明神」「徳沢」とありますが、横尾から涸沢まではありません。登りの山道な上に、紅葉が始まってペースが落ちる場所なので、横尾でしっかりトイレは済ませておきましょう。山でのトイレはチップ製(100円)が基本なので、小銭もお忘れ無く。
朝一に上高地をスタートすれば午後には涸沢まで行けますが、長時間歩き慣れてなかったり、スタートが9時を過ぎてしまうようならば、無理をせず途中の徳沢や横尾に泊まって、翌日に涸沢を目指すといいでしょう。せっかくなのですから、日本屈指の景勝地である上高地を楽しまない手はありません!
行程は山慣れしてる人なら一泊二日も可能ですが、そうでなければ二泊三日以上のスケジュールを確保しておきたいところ。せっかく美しい紅葉の涸沢に行くのですから、涸沢で丸1日過ごせる時間の余裕は欲しいものです。山が好きな方なら、北穂高や奥穂高に登るのもいいでしょう(登山計画は事前にしっかりと)。
涸沢での宿泊は山小屋かテント泊、混雑は覚悟しよう!
人気の観光地といっても、涸沢は標高2300mの山の上。当然ホテルなんてありません。宿泊は「涸沢ヒュッテ」か「涸沢小屋」のどちらかの山小屋、もしくはテント泊をすることになります。
有名な「涸沢ヒュッテ」は収容人数180人以上の比較的大規模な山小屋ですが、年間で最も混み合うこの時期はその数倍の人が泊まることも当たりまえ。1枚の布団を2〜3人で分け合うような、そんな混雑は覚悟してください。
事前に電話で予約をしておくのが基本ですが、山小屋では訪れた登山客は基本全て受け入れるので(断ったら遭難してしまう!)、人が来れば来るほど混み合うもの、と理解しておきましょう。
涸沢ヒュッテ 公式サイト - 北アルプス穂高氷河圏谷 涸沢
涸沢小屋|北アルプス穂高連峰
朝方のトイレ渋滞も秋の涸沢ヒュッテの名物だそうですが、美しい景色を眺めたり、食事や出発時間をズラすなどして頑張りましょう(笑)
テント泊の場合はマットやコンパネが必須!?
テント泊なら自分のテントの中は自由な空間ですが、週末ともなるとテント場も相当混み合います。また、涸沢のテント場は大きな石がゴロゴロしていて、平らな場所からすぐに埋まってしまうので、シュラフ(寝袋)の下に引くマットは必須です。
数に限りはありますが「コンパネ」というベニヤ板をテント場の受付で借りることもでき(500円/1泊)、これを敷けば尖った石の上でも快適にテントを張ることができます。
なんにせよ夜には心ゆくまで星空を眺めていられるのはテント泊の特権。この時期は涸沢カールの中央に立ち上る天の川も、肉眼で楽しむことができます。
そして、朝目覚めてテントを出ると、山肌を赤く染めるモルゲンロート(山での朝焼け)。特にこの時期は紅葉と相まってなんとも幻想的な風景です。
もちろん山小屋に泊まっても星空やモルゲンロートは楽しむことができますが、寝床の込み具合を気にすることなく、自分のペースで行動を決められるのがテント泊の魅力。そのまま朝食を取って穂高にアタックするもよし、温かくなるまでテントで休むもし、行動は全てあなたの自由なのです。
テント泊の際は防寒対策は抜かりなく
10月の頭といっても標高2300mの涸沢は太陽が沈むと一気に気温が下がり、朝晩には一桁やときに氷点下まで下がることもあります。ある程度保温力のあるシュラフを用意し、ダウンジャケットやダウンパンツなどの防寒対策は抜かりなく行いましょう。
また、この時期の涸沢に行くテント泊の装備だとどうしても荷物は15kg〜20kg位になってしまうかもしれません。それだけの装備を背負って涸沢まで歩いて行けるか、自分の体力や経験と相談して慎重に決めてください。
秋の涸沢なら私はモンベルの#3でも眠れますが(上下のダウンを着た状態で)、人によっては寒いかもしれません(妻だと#2を使います)。
参考記事:2017年に涸沢カールに行った際のテント泊装備を紹介しています。
涸沢に泊まらず横尾泊&涸沢ピストンというのも…
「混み合う山小屋はちょっと…」というならば、宿泊を横尾山荘にして、1日かけて涸沢を往復してくるというのもひとつ。横尾山荘は早めに予約をすれば、二段ベッドのプライベート空間を確保することができます。
この場合、最低2泊3日以上の日程を確保し、中1日を横尾と涸沢の往復に充てるスケジュールとなります。
横尾を起点にして涸沢の往復に約5時間(行き3時間/帰り2時間)、涸沢で紅葉を眺めながらのんびり過ごしても、朝からの行動ならさほど無理はないでしょう。
横尾山荘には私も以前泊まったことがありますが、山小屋にしては珍しくお風呂もあり(石鹸は使えませんけども)、食事もなかなか美味しかったですよ。
奥上高地 横尾山荘 | お風呂のある山小屋
涸沢ヒュッテに行ったらぜひ食べたい「おでんセット」
そんな涸沢ヒュッテの名物といえば、穂高を一望できるテラスで食べる「おでん」。特に生ビールとおでんがセットになった「おでんセット」(1400円)は大人気で、次々に売店で注文が入っています。
この美しい穂高の山々と紅葉を眺めながらのビールなんて最高ですね!
一方の涸沢小屋に行ったら試して頂きたいのが「もつ煮」。ビールとの相性が抜群なのは明らかですね。朝夕は冷え込みますし、体が温まります。
涸沢ヒュッテからは徒歩で10分程ですし、涸沢小屋のテラスから見下ろすヒュッテとテント場の景色はなかなかに壮観です。北穂高には登らなくても、涸沢小屋までのお散歩、オススメですよ(ソフトクリームもあるよ!)。
軽食の充実した上高地〜涸沢エリア
山小屋泊まりならば小屋の食事がありますが、テント泊でも上高地〜涸沢エリアは食事メニューや軽食が充実した山小屋ばかりなので、それらを利用して荷物(食料)を減らしてみるのも1つです。もちろん山での料理も楽しいんですけどね。
こちらも涸沢ヒュッテの人気メニューであるビーフカレー。ラーメンなどもありますし、ある程度の食事(軽食)は2つの小屋で調達することが可能です。
その他、上高地エリアで食事が美味しいといえば徳沢園。北アルプスを目指すとつい通り過ぎてしまうことが多い奥沢ですが、「みちくさ食堂」のカレーや野沢菜チャーハンも、一度は食べておきたい名物メニューです。
覚えておきたい、撮影スポット
といった感じでご覧頂いた涸沢カールの紅葉。涸沢ヒュッテのテラスをはじめ、そこかしこに定番の撮影スポット、絶景ポイントは存在しますが、初めて涸沢を訪れた場合、案外見落としがちな場所もあるので(?)、2か所ほどご紹介。
まずは涸沢ヒュッテの北側。山岳相談所やテント場の受付の横あたりに、奥穂高方面への登山道やテント場の北側に抜ける道があるので、そこから出てみましょう。より雪渓にも近く、目の前に穂高の雄大な姿を見ることができるポイントになります。
モルゲンロートが見られる時間帯には、多くの写真ファンが三脚を並べているのを見ることができます。みなさん、立派なカメラや三脚を背負って頑張って登ってきたのですね(私はお気楽スナッパーなので三脚なしで軽快に…)。
続いて、主に涸沢からの下山路として使われる「パノラマコース」。起伏が激しく危険な箇所も多いので、ある程度の登山経験を積んでから歩きたいコースですが、このパノラマコース入口から1〜2分入ったあたりに、最高に展望のいい場所があります。
本記事冒頭の2枚目に貼った写真もそうですが、涸沢ヒュッテを含めて涸沢カール全体を一望できるベスト展望スポット。ただし、狭い登山道の途中になりますので、登山道を塞いで三脚を置くようなマナー違反は絶対にやめましょう。
登山道脇に逃げるスペースもほとんどありませんし、谷側はすぐに崖になっている場所です。当ブログではコースを外れての撮影は一切奨励しません。
あくまで登山、登山届けや防寒対策は忘れずに!
初心者でも行けると書きましたし、実際小さな子供でも行けてしまうのが涸沢カール。しかしそこは北アルプス標高2000m以上の山岳地帯であることはお忘れなく。
できれば山岳保険(ハイキング対応のレジャー保険のようなものでも)に加入し、上高地のバスターミナルでは登山届けの提出を済ませてから、トレッキングに入るようにしましょう(「コンパス」等のサービスを使うことで、事前にネット提出もできます)。
また先ほども書きましたが高地ということもあり朝夕はぐっと冷え込むので防寒対策も慎重に。テント泊に限らず、山小屋泊の場合も雨や風を防ぐレインウェアの他に、フリースやダウンジャケットは忘れずに用意しておきましょう。
秋以外の涸沢カール:ゴールデンウィークには雪上テント村が生まれる
秋には多くの登山客で賑わった涸沢カールも、10月いっぱいでシーズンオフ。11月に入る頃には雪もちらつき始め、涸沢ヒュッテ、涸沢小屋を始めとする北アルプスの山小屋は長い冬期休業へと入ります。
11月の2週目頃には上高地へのアクセスもストップ。厳冬期の北アルプス穂高連峰に入ることができるのは、ごく一部の選ばれた登山者のみです…。
涸沢カールが再び賑やかになるのは、翌年の4月末のゴールデンウィークから。例年、本谷橋から先はまだ多くの雪が残る残雪期ですが、毎年多くの登山客(穂高に登る人も涸沢カールで過ごすだけの人も)が北アルプスの春の訪れを楽しみに訪れます。
涸沢までは当然アイゼンなどの雪山装備が必要となります(涸沢から上に登るにはピッケルやヘルメットなども)。テント場は雪上となるため、防寒は秋よりも入念に行う必要があり、初心者に気軽にオススメできる時期ではありません。
ただ、冠雪した穂高の姿を間近に見上げ、雪原に広がるカラフルなテント村など、この時期しか見ることのできない美しい北アルプスの姿がそこにあります。
筆者も2014年、2015年とGWの涸沢カールを訪れていますが、穂高に登ることはなく1日のんびりと雪上のテントで読書したり、ビールを飲んだりと楽しく過ごしています。
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昨年の涸沢カール紅葉については、主に楽天それどこの寄稿記事で書きました。
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