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F1.4のコンパクトな広角単焦点レンズ、銘匠光学 TTArtisan 17mm f/1.4C ASPH(マイクロフォーサーズ版)レビュー①

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銘匠光学から「TTArtisan 17mm f/1.4C ASPH」が本日発売となりました。しばらく前よりこのレンズのサンプル版を使わせて貰っていました。

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APS-Cフォーマット用のレンズですが、マイクロフォーサーズユーザー的にもかなり注目のレンズだと感じましたので、作例もたっぷり交えて紹介してみたいと思います。

TTArtisan 17mm f/1.4C ASPH

TTArtisan(ティー・ティー・アーティザン)は中国深センの高額メーカー銘匠光学のレンズブランド。いわゆる、最近勢いのある中華レンズブランドの1つですが、売価で5万円を切るような安価なレンズだけでなく、作りや質感の良い10万円前後の中価格帯レンズを含めたラインナップを組んでいるようです。

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日本国内ではPERGEAR(パーギア)の国内代理店であるイングレート・ジャパンの他、焦点工房などが代理店となり、本ブランドの販売を行っています(今回はPERGEARさんからのモニター提供です)。

PERGEAR取り扱い品のデザインは本記事にてレビューしているものですが、焦点工房の取り扱いは通常モデルと直販限定モデルの2種類があるようです(リング部分の書体と鏡筒にプリントされたレンズ構成図のデザインが異なる)。写真で確認した限り、v販売モデルと焦点工房の直販限定モデルが同じデザインのようです。
詳しくはそれぞれのプレスリリースでご確認ください。
TTArtisan(銘匠光学) 17mm F1.4 広角レンズPergearで販売開始|イングレート・ジャパン株式会社のプレスリリース
銘匠光学 TTArtisan 17mm f/1.4 C ASPH 発売|株式会社焦点工房のプレスリリース

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左:PERGEAR販売/焦点工房 直販モデル 右:焦点工房:通常モデル

メディアの報道も各代理店のものを1つずつリンクしておきます。
ASCII.jp:イングレート・ジャパン、TTArtisan(銘匠光学)の17mm F1.4広角レンズ(Xマウント、Eマウント、M4/3マウント)を発売
銘匠光学よりアンダー2万円のAPS-C用17mm F1.4。直販限定の鏡筒デザインも - デジカメ Watch

今回発売された「TTArtisan 17mm f/1.4C ASPH」は同ブランドの中では廉価ゾーンに当たる、APS-Cセンサー搭載のミラーレスカメラ用マニュアルフォーカス単焦点レンズ。既に「TTArtisan 35mm f/1.4 C」(参考価格:8,910円)、「TTArtisan 50mm f/1.2 C」(参考価格:13,950円)の2本が発売されていて、「TTArtisan 17mm f/1.4C ASPH」は3本目となります。

追記:TTArtisan 50mm f/1.2 Cがずっと気になっていたので買ってしまいました(提供でなく個人的に購入したものです)。しばらく使ったらまたレビュー予定ですが、かなりいい感じのレンズです。12ヶ月の延長保証(合計2年保証)や散歩の携帯に便利なミニブロワが付いていたのも良かった。

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「TTArtisan 17mm f/1.4C ASPH」の売価は15,930円と、発売済みの2本と比べると少しだけ高い設定ですが、開放値F1.4の大口径広角レンズとしては十分に魅力的なコストパフォーマンスでしょう。

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外箱はグレーとブラックの凝ったデザインのもので、サンプル版を受け取った当初はもう少し高級なラインのレンズだと思っていたぐらいです。

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ポーチ、レンズフードは付属しません。保証書を兼ねた中国語と英語のマニュアルが付属しています。TTArtisanのブランド名が刻印されたレンズキャップがなかなかカッコイイですね。

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追記:PERGEAR公式(AmazonのEmgreat等を含む)で購入したレンズにはユーザー登録することで12ヶ月の延長保証が付きます。通常の1年保証に加えることで、2年保証となります。

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17mm F1.4の大口径レンズながら重量は246g(マイクロフォーサーズ用、実測)とかなり抑え気味ですが、実際に手に持ってみるとずっしりとした塊感があります。鏡筒やマウントは全て金属製で、1万円前後のレンズとは思えない高級感があります。

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ピントリングは適度なトルクがあって最短から無限遠までの回転域は60度程度。最短撮影距離は20cmなので、最大撮影倍率は0.15倍(0.3倍相当)といったところでしょうか。安価な単焦点レンズはオーバーインフになっているものが多いイメージですが、このレンズは無限遠が一発で出るので、遠景やパンフォーカス撮影時はピントリングを無限遠側に回し切るだけでOKです。

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絞りリングはレンズ先端にあり、個人的に嬉しいのは半段ごとにしっかりクリックがあること。安価な単焦点レンズはクリックレスな絞りも多いのですが(コスト故か動画対応を考えてかは分かりませんが)、やはりスチル用のレンズはしっかり絞りを決めて使いたいのでやはり安心感があります。

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絞り羽根は10枚で円形絞りではありません。

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レンズキャップは金属製でTTArtisanの刻印が入った薄型のネジ蓋。装着していると見た目は格好いいのですが、頻繁な着脱には向いてないので私はほぼ外しっぱなしにしています。

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レンズフィルターを付けると先細りデザインが強調されそうなので使っていませんが、前玉の破損防止やうっかり触りたくない人は、薄型の金属フードを付けてみてはどうでしょうか? 1000円程度で買えますし、見た目もレンズフィルターより良いと思います。フィルターサイズは40.5mmです。

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マイクロフォーサーズに丁度いい17mm

17mmの焦点距離はAPS-C機で使った場合、35mmフィルム換算で25.5m相当画角の広角レンズとなりますが、マイクロフォーサーズで使った場合は34mm相当とこれまた丁度いい準広角になります(3:2トリミングした場合、フルサイズの35mm相当にさらに近い画角となります)。

マイクロフォーサーズ専用レンズで17mm付近のレンズはOLYMPUSからは17mm F1.2のPROレンズに、17mm F1.8、SIGMAの16mm F1.4 DC DN(APS-C用ベース)、さらにパナソニックのSUMMILUX 15mm F1.7と、なかなかの激戦区です。この中ではSIGMAの16mm以外は全て所有したことがありますが、個人的にはかなり馴染みのある画角となります。

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軽くてコンパクトなレンズ(オリ17mm F1.8、パナ15mm F1.7)だと開放値がF1.7止まりで、開放が明るいレンズは大きく重くなってしまう(SIGMA 16mm F1.4が395g 、OLYMPUS 17mm PROが390g)。そんな中で250gと切る(実測246g)軽量コンパクトさとF1.4の明るさの共存は、スペック上はかなり魅力的なバランスです。

メーカー 焦点距離 開放絞り フォーカス 重量
Panasonic 15mm F1.7 AF 115g
SIGMA 16mm F1.4 AF 395g
OLYMPUS 17mm F1.2 AF 390g
OLYMPUS 17mm F1.8 AF 120g
COSINA 17.5mm F0.95 MF 540g
TTArtisan 17mm F1.4 MF 246g

……そうそう、ここまで書いて同じMFレンズであるCOSINAのNOKTON 17.5mm F0.95の存在を思い出しました。MFTレンズで最も開放値の明るいNOKTONですが重量は540gと2倍以上もあります……。

中型MFT機がベストバランス?

このTTArtisan 17mm f/1.4を組み合わせるボディですが、私が持っているカメラだとパナソニックの GX7MK3がベストバランスだと思います。

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ちなみに屋外で開放絞りのF1.4を使おうと思うと、最短1/4000秒程度のメカシャッターだとあっという間にシャッター速度が上限に届いてしまうので、1/8000秒以上の高速シャッターが切れる電子シャッター(サイレントシャッター)搭載機との組み合わせがオススメです。

先細りになったデザインは好みが分かれるかもしれませんが、個性的ではありますね。

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OM-D E-M1 MarkIIに装着しても悪くありませんが、同じOM-DでもE-M5系、E-M10系の方がやはりバランスは良いかもしれませんね。もちろんPENやより小型のボディでも悪くないですが、見た目がなかなか硬派なので、カメラカメラした中型機がよく似合うレンズだと思います。今後シルバーなどが出たら、より小型ボディとの相性も良くなりそうですね(35mm f/1.4はシルバーが発売されたばかり)。

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そのまま装着しても良いですが、やはり金属フードを付けてみた方がバランスは良いかも?

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実写編:開放では大きなボケ、近距離から遠景まで安定した描写

開放絞りがF1.4と明るいためマイクロフォーサーズの準広角レンズにしてはかなり大きなボケを得られることができます。開放F1.4の最短撮影距離と50cm程度にピントを合わせた場合のボケ変化。ブリージング(ピント位置による画角変化)はそこそこ発生しているようです。

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F1.4:最短撮影距離付近/50cm程度にピント

背景の種類によってはややボケがザワつくこともありますが、前ボケ、後ろボケ共に柔らかくボケてくれます。

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開放でのピント面はそこまで極端なシャープさではないものの、必要十分でしょう。

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周辺部に掛けてやや樽型の歪みが出ています。より広角になるAPS-Cでは目立つかもしれませんが、マイクロフォーサーズならばこの程度です。

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絞りとピント距離による描写:最短・中距離・遠景

しばらくこのレンズを使ってみましたが、ピントを置く被写体との距離や絞りでかなり印象が変わるようです。比較として「最短距離、近距離、中距離、無限遠」それぞれのピント距離で絞りを変えながら撮ってみました(手持ちでの撮影です)。画像はクリックすれば拡大されます。

まず最短距離。左下のネモフィラの手前の花びらにピント位置を合わせています。この場合は単純にボケ量の変化といった感じですが、開放からF2.0あたりの後ろボケはとても柔らかいですね。

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F1.4/F2.0/2.8/F4.0
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F5.6/F8/F11/F16

続いて1mと少しのピント位置。描写のピークはF4.0〜F5.6あたりで、なかなかのシャープさ。F8〜F11は目立った変化はなく、最大絞りのF16では回折の影響か一気に甘くなります。開放から2段ぐらいはややパープルフリンジが目立つかな。

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F1.4/F2.0/2.8/F4.0
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F5.6/F8/F11/F16

ピントは無限遠に合わせていますが距離は数メートル。全体的にシャープに見えますが開放付近は周辺部がやや甘い。やはりF4.0〜F5.6あたりが描写はピークでしょうか。F16はやはり甘くなってしまう。

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F1.4/F2.0/2.8/F4.0
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F5.6/F8/F11/F16

最後に無限遠で遠景。遠景の描写が少し甘くなる気がした気になっていたのですが、F4.0〜F8あたりの描写を見る限り十分な描写力があると言えそうです。周辺減光は開放ではそこそこ出ていますが、1段絞ればほぼ気にならないレベルですね。この辺はAPS-C用レンズをMFTで使っているアドバンテージか。

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F1.4/F2.0/2.8/F4.0
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F5.6/F8/F11/F16

追記:遠景が甘く感じたのはピント合わせをピーキングで行っていたので厳密にピントが出てなかった可能性も…… 広角レンズということもありピント合わせは拡大で丁寧に行った方が良いかもしれません。

価格帯が大きく異なるレンズと比較してもあまり意味はありませんが、シャープさには定評があるOLYMPUSの12-100mmPROと似たような構図で撮っていたので参考までに並べてみます。

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OLYMPUS 12-100mmPRO(F8)
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TTArtisan 17mm(17mm F5.6くらい)

色味も少し異なりますし(WBを揃えても同じにはならない)、12-100mmPROの方が画面全体にシャープでヌケ感もありますが、TTArtisan 17mmも言われなければ特に問題は感じないと思います。

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OLYMPUS 12-100mmPRO(F5.6)
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TTArtisan 17mm(17mm F5.6くらい)

実はここ2ヶ月程のブログでも何度かTTArtisan 17mmの写真を混ぜて使っていましたが、違和感なく溶け込んでいたと思います。

逆光、光条、玉ボケ

構図内に思い切り太陽光が入るような逆光シーンでは流石にフレアやゴーストも出ますが、まあ許容範囲ではないでしょうか。

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光条は絞りによってはそこまで美しい訳でまありませんが、極端な光源でなければ10本足で綺麗に出ています。

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開放での玉ボケ。形は悪くないですが、光源によっては玉ねぎが目立つかも……。

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一段絞ると絞り羽根の形通りの見事な十角形ボケ。

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長くなってきたので作例はまた別記事として分けることにします。

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