先日、オイシイ部分だけを写真集記事にしましたが、7月の三連休前半(7月14日〜15日)に行ってきた北アルプス五竜岳〜唐松岳の山行レポートです。
- 遠見尾根から五竜岳、唐松岳から八方尾根の一泊二日
- 白馬五竜スキー場からのスタート
- 灼熱の遠見尾根は命の危険を感じる暑さ……
- 五竜山荘でテント設営、お金で買える回復魔法
- 五竜岳への楽しいピークハンド
- 最高のテント場から最高の日没ショー
- 満天の星と五竜岳から立ち上がる天の川
- こんな記事もあります
遠見尾根から五竜岳、唐松岳から八方尾根の一泊二日
五竜岳は北アルプスの後立山連峰にある標高2,814mの山で日本百名山のひとつ。南には鹿島槍ヶ岳、北には白岳を経て唐松岳(2,696m)へと稜線を結んでいます。当初、扇沢からの鹿島槍ヶ岳&爺ヶ岳も計画にあったのですが、連休中の駐車場事情やコース難易度も考えて、今回は比較的のんびり楽しめそうな五竜岳&唐松岳の縦走に決定しました。
初日は遠見尾根を登り五竜岳へ、五竜山荘にテントを貼って一泊。2日目は唐松岳へ縦走して、八方尾根から下山する一泊二日のルートです。八方尾根の麓から車を停めた「五竜とおみ」まではタクシーかバスで戻る予定です。
五竜岳・唐松岳(遠見尾根〜八方尾根) / OKPさんの小遠見山・五竜岳・西遠見山の活動データ | YAMAP / ヤマップ
14日の土曜日へと日付が変わってから都内の自宅を出発。三連休スタートということもあり普段よりもやや治安の悪い中央道から長野道の安曇野インターへ。そこから下道で白馬町の「白馬五竜スキー場」(エスカルプラザ/とおみ駅)を目指します。
この白馬五竜スキー場は遠見尾根の入口にあたり、下山路に使う予定の白馬八方尾根から数キロ南に位置しています。麓のエスカルプラザ周辺にはスキー場の無料駐車場が整備されていて、夜中のうちから車を停めることが可能です。
八方尾根スキー場同様にゴンドラとリフトを使って標高1,673m地点まで上がることができるのですが(スキー場駐車場の標高は850m弱)、この日泊まる五竜山荘のテント場はかなり狭いらしいので(通常20張〜最大30張程度)、ゴンドラの営業時間よりも前にスキー場を徒歩で登ってしまう抜け駆けプランです(これは後に後悔することに……)。
ゴンドラの始発は休日ダイヤのこの時期で7時、ゴンドラ山頂の「アルプスだいら」までどの程度先行できるのでしょう? ヤマレコで見たスキー場部分のコースタイムは90分程でしたが、これはかなり早い人だったようです。
白馬五竜スキー場からのスタート
朝4時半の日の出前にエスカルプラザの駐車場をスタート。ゴンドラの「とおみ駅」は営業時間前でもトイレが開放されていました(エスカルプラザは深夜帯は入れません)。ちなみに遠見尾根は「アルプスだいら」から先、五竜山荘までトイレがありません。
登り初めは初心者コース(?)の緩斜面から、ひたすらオフシーズンのスキー場を登っていきます。スキー場分の標高差は800mほど。普通に登山じゃん… と今更ながらに気付きます(笑) 目指すは向こうに見えている山の向こうの…… さらにその向こう。
振り返るとスキー場の向こうには雲海が広がっていました。この雲海や日の出を見られただけでも朝早く出た価値はあったかな……? なんて思っていられたのは初めのうちだけ。
徐々にキツくなる斜度。急斜面をジグザグに折り返しながら約2時間、ようやく「アルプスだいら」の駅が見えてきました。ちなみにここまに会った登山者は軽装で抜いて行った2人のみ。すでにかなりの疲労感がありますが、まだスタートラインです(笑)
あまりの暑さに携行していたスポーツドリンクの減りが早いので、ゴンドラ駅の自販機でアクエリアスのペットボトルを1本追加。結果的にこれは大正解で、元々携行していたポカリ650ml+水1.5Lではこの日の暑さではかなりギリギリだったと思います。
アルプスだいらの駅前からしばらく「白馬五竜高山植物園」の中を歩いていきます。ゴンドラ営業前で誰もいない植物園にはニッコウキスゲやコマクサなど様々な高山植物が咲き乱れています。この頃はまだのんびりと花を楽しむ余裕がありました。
灼熱の遠見尾根は命の危険を感じる暑さ……
これから登る遠見尾根越しの五竜岳(中央やや左)。本当に尾根が繋がってるの?と思う位に随分と遠くに見えます……。
ズームアップ。まずは五竜岳と白岳の鞍部に見える五竜山荘が目的地です。ちなみにコースタイムはここからまだあと5時間とたっぷりあります。
「地蔵の頭」6時54分、もうすぐゴンドラのスタート時刻です。ゴンドラ&リフトの乗車時間を考えても、苦労した割には30分弱程度しか先行できなかったかもしれません。
それにしても暑い。既にナルゲンボトルのポカリスエットを飲み干しそうですし、体力的にもこの日の登りはかなり辛くなりそうなことを悟ったので、一旦休憩して昼に食べるつもりだったおにぎりを食べます(疲れたら固形物が辛くなるので先に)。
妻もかなりキツそうなので先を急ぐことはこの時点で一旦諦めて、ペースを落とし熱中症にならないようエネルギー補給をこまめに行いつつ先へ進むことにします。
日陰に入ればややマシですが、風が殆ど吹いていないので辛い登りが続きます。小遠見山のピークは巻いて …ってここがようやく「五竜登山口」かい!
まさかここまでが、ゴンドラ&リフトついでの「小遠見山トレッキングコース」だったとは……(スタートから既に3時間経過)。
この辺りでゴンドラ組の最初に1人に追いつかれます。やはりテン場の混雑が気になり同行者に先行してきたのだとか。結局この方(と奥さまのご夫婦)とは五竜山荘まで抜きつ抜かれつで同じ到着でしたし、なんなら五竜岳や唐松岳の山頂でも再会し、さらには下りの八方スキー場でもお会いして最後はタクシー乗り合いで五竜の駐車場までご一緒させて貰いました。面白い出会いってあるものですね。
中遠見を通過。この辺り写真は撮っていますが、ほとんど記憶がありません(苦笑)。
逆さ五竜?が見える池。既に小屋泊や日帰りっぽい荷物を背負ったゴンドラスタート組にはかかなり追いつかれています。
途中何度か軽い雪渓を歩きます。雪渓から流れ出る冷たい水、さすがに飲めませんが顔を洗ったりタオルを冷やして少し楽になりました。その写真を撮っていないのはそんな状態だったから…… 確かここから妻に先行することにしました。
西遠見。五竜山荘まではあと1時間半ほどですが、記憶ではここからが一番キツかったと思います。この先は軽いクサリ場を含む急登が何度も登場し、そのたびに腿やふくらはぎが痙攣(つる)する状態。恐らく暑さによる疲労とミネラル不足が原因で、ゼリー飲料を飲んでしばらくすると解消するものの、数十分ペースで再発する状態。
本当に(この日は)あそこまで行けるのかな…?
もう手持ちの行動食(ゼリー飲料や粉末のアミノバイタル)を全て摂取する勢いでなんとかラスト1時間を歩ききることにします。
写真を見返しても特に難しいコースではないのですが、とにかく炎天下による体力の消耗が激しく、頭の状態や手の痺れ具合を考えても熱中症の一歩手前だったことは間違いないと思います。最悪、この日は五竜岳に登れなくても… と手持ちの水分と行動食を補給しまくったのは正解だったと思います。
簡単なクサリ場でも両足がつっている状態なので、かなり慎重に登りました。
五竜山荘はもう目の前なのですが白岳の山頂を回り込む必要があります。高低差50m程なのですが、この登りがとにかくしんどいのです。こうやって写真を見つつ、もし今「登れ」と言われたら走って登れそうなのに……(笑)
ヘトヘトになりつつ、ようやく登り切って振り返った遠見尾根。
五竜山荘までもう少し、テントも全然ありません! あとはここを下るだけ。
北を見れば翌日歩く唐松岳への稜線。この光景に一気に疲れも吹き飛び…… ません(笑) とりあえず山荘に行って回復しなくては。
五竜山荘でテント設営、お金で買える回復魔法
11時15分、遂に五竜山荘に到着しました。朝4時半前に駐車場をスタートして7時間弱、炎天下での標高差1600mは想像以上にキツかったです。もちろん急がずもっと休憩を多めに取っていれば楽だったと思いますが、テント場が気になってしまい必要以上に無理をしてしまったかもしれません。
幕営量は1人1000円、有名な「山が好き酒が好きTシャツ」の他、飲み物やゼリー飲料等の販売も充実していてひと安心。ここにくるまでかなりの水&行動食を消費してしまいましたが、お金さえ払えばいくらでも回復魔法を買うことができそうです。
テント場はまだガラガラで場所も選び放題でしたが、全体の様子を全く撮っていないのはまだかなり疲労が強かったせいかも…。小屋に近い上から1段目に設営しました。
20分程で妻も到着し(思ったほど先行できてなかった)、冷たいリポビタンDを飲んでひと息ついたらお湯を沸かして昼食。体力を回復させつつ、ウィダーインゼリーやポカリスエット、ミネラルウォーターなどを追加で買って五竜岳に登る準備を整えます。
稜線の小屋で貴重な水は1L100円で小屋の横にて分けて貰うことができます。料理やスポーツドリンクを作るには充分過ぎる水で、もちろん飲用も大丈夫だと思いますが、なるべく山小屋にはお金を落としたいので、少し高めのミネラルウォーターを買っています。
そうこうしているうちにテント場のめぼしいスペースはほぼ埋まってしまい、山荘前の登山道にもテントが張られていきます。やはり少々無理をして早朝スタートして正解だったかもしれませんが、別にゴンドラ始発でも平気だったような気もします?
白岳からは続々と登山者がやってきますし、唐松岳や鹿島槍ヶ岳方面からの縦走登山者も続々とこの五竜山荘を目指してやってくるようです。
五竜岳への楽しいピークハンド
熱中症一歩手前だった状態から完全に回復したのを確認して出発。五竜山荘から五竜岳の山頂までは約1時間のコース。それほど難しいルートではありませんが岩場もありますしアルプス稜線は念のためヘルメット着用で行きます。
ピラミッドみたいな格好いいミニピーク(登山道はありません)。
階段のような岩は登りやすくてありがたい。何処からでも登れそうな場所ですが、一応目安のルートはあります。目印のマーキングなどもあるので、ご来光を山頂で見るためにいきなり登るよりは、明るいうちに一度下見しておくと確実です。
ルートはそれなりにすいていましたが、登り下りでかち合ったら声を掛け合いつつ、安全な所で待って適当な間隔を開けて行きましょう。
300mちょっとの高度差を一気に上がるのでさっきまでいた五竜山荘がみるみるうちに小さくなっていきます。稜線の向こうには五竜岳や雲に覆われた白馬の山々も見えています。
1時間弱で五竜岳の頂上(2,814m)に到着。午前中の遠見尾根は辛かったですが(苦笑)、五竜山荘から五竜岳山頂のピークハントコースはとても楽しかった!
南にには鹿島槍ヶ岳にかけての稜線、アルプス三大キレットの1つでしたっけ。いつかは歩きたいですが、まずはその前に爺ヶ岳から鹿島槍ヶ岳かなー。
午後になって雲が出てしまったのですが、しばらく待っていると雲が晴れて剱岳やGWに歩いた立山の稜線も見えました。
鹿島槍ヶ岳と槍ヶ岳の槍のトリプル共演…… って前も書きましたっけ?
そうそう、このときの縦走からPaaGo WORKSのザック「BUDDY 33」を本格的に使い始めてみました。30Lクラスのザックでのテント泊は個人的にかなりチャレンジでしたが充分に可能でしたし、夏山の一泊程度ならこれからも多様することになりそう。
ザック本体も1.1kgと比較的軽量なので荷物を絞ってのアタックザックに使っても全然嵩張りませんし…… ってこうして写真を見るとやっぱり大きいですね(笑)
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五竜山荘のテント場をズームしてみるとさらにテントが増えて凄いことになっています。登山道だけでなく、山荘のトイレへ向かう細い通路や発電機の隣にもテントが張られてる……。そろそろ戻った方が良さそうですね。
我々が五竜岳を往復する間、ずっと登山道の整備をしてくださっていたパトロールの方。本当に頭が下がる思いです。
って、マジですかこれ… ここ、稜線の登山道なんですけど、半分以上がテントで埋まってます。連休だからなのか、どうやらテン泊を断ることはせず「張れる所に張ってください」と受付をしてるようです。信じられない斜面にテントを張ってる人の姿も……。
最終的には元々のテントエリアからの導線が完全に埋められて小屋や稜線に出ることが困難になる異常事態になっていました。連休の五竜山荘、想像以上の混雑でした。
とはいえ、こちらは早い時間に景観のいい場所をキープしてますし、周りが賑やかでもテントに来てしまえば私だけの世界。テントの中からは富山湾(の雲海)を望むこの景色。
足下にはコマクサも咲いていて素敵な我が家のお庭です。
こんな素敵な庭先でのビールが美味しくない訳ありませんよね。
ここからの数時間はテントで本を読んだり、周りのテントの人とビールを飲みながら談笑したりとのんびり過ごします。午前中の苦しかった思いが嘘のよう(笑)
最高のテント場から最高の日没ショー
そして日没。目の前の雲海に太陽が沈んでいきます。このアングル、ほとんどテントの中から眺めている光景そのままです。なんて贅沢なテント場でしょう。
左右を見れば夕日を浴びて紅く染まった五竜岳と五竜山荘。
富山湾へと日が沈むと…
雲海に太陽が反射した不思議な光の影が現れました。
そしてマジックアワー……
日没前後の1時間は刻一刻と空の色が変わり続ける、最高のショータイム。
満天の星と五竜岳から立ち上がる天の川
完全にが完全に暮れると空には満天の星。天の川も流れ星も肉眼で見放題です。写真は北、南西、南の順番。広角レンズを持って行かなかったので、天の川と五竜岳の全体を一緒に撮れなかったことが悔やまれます(撮影はSUMMILUX 15mmにて)。明るい魚眼レンズがめちゃくちゃ欲しくなりました(笑)
おまけ:天の川と五竜岳、試しに3枚の写真をパノラマ合成したら結構それっぽくなりました?(周辺減光の処理が甘いのでおもいきり繋げてる感ありますけど……)。
おやすみなさい。
追記:2日目のレポートです。