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途方に暮れる 犬とよばれる でも生きてゆく

多摩・武蔵野エリアの散歩がより楽しくなるかもしれない書籍

コロナ禍による県外移動の自粛を続ける中で、以前よりも頻度が増えたのが近隣の散歩です。私の住む東京の多摩エリアは郊外の住宅地ではあるものの、多摩川水系の各河川に多摩丘陵、武蔵野台地上のハケと呼ばれる段丘崖の周辺に点在する複数の緑地など、散歩や散策の場所には事欠きません。

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さらに府中、国分寺の周辺には古代に武蔵国の国府が置かれていたり、江戸時代に文化の中心地として発展した江戸からも近いことで、多摩・武蔵野エリアには様々な史跡、交通網、水路といった人の生活に密接に結びついた遺構や生活の跡が数多く残されています。
私自身はそこまで歴史に深い関心がある方ではありませんが(触り程度を知るのは好きですが)、歩いてみたくなる地形変化のあるところには人の歴史も残されていることが多く、ただ闇雲に歩き回るだけでなく、ちょっとしたガイドを手にすることで見えてくる景色の解像度も上がります。

今年に入って探鳥(バードウォッチング)を兼ねた散歩をするようになったことで、改めて多摩エリアの河川や緑地の成り立ち、地形に興味を惹かれるようになりました。元々多摩エリアに多い用水路や崖線沿いの湧水、多摩丘陵の高低差が好きだったこともあり、いくつか手に入る書籍を読んでみたところ、ますます多摩エリア歩きが楽しくなってきたので紹介してみたいと思います。

『地形と地理で解ける!東京の秘密33 多摩・武蔵野編』内田 宗治

最初に買ったのはこの書籍のKindle版。私が住んでいる府中周辺にまつわる情報も多く、「府中崖線」「国分寺崖線」「武蔵国府跡」「家康府中御殿跡」「鎌倉街道」「下河原線」等々、これまで調べたり訪ねたこともある場所が数多く登場することもあり、一気に読み終えてしまいました。
初めて知る話はやや少なかったものの、以前から歩いてみたいと思っていた「玉川上水」、町田の「戦車道路」など、早く訪ねてみたくなった場所だったり、戦車道路の項にさらっと書かれている「尾根幹線と尾根緑道の交差点付近は、3つの川(多摩川水系大栗川、鶴川、境川)の分水嶺となっている」というほぼ地元(元々相模原市民だったので)でも気づいてなかった話など、今後の多摩散歩がますます楽しくなりそうな一冊。「戦車道路」歩きと各河川の水源地巡りにバードウォッチングを絡めたら、かなり楽しめそうです。

目次

  • 第一章 武蔵野台地の水と地形
    • 井の頭池の水が突然澄んだのはなぜ? 湧水池の多い標高50メートルライン
    • 多摩川から二段上がる崖線 府中崖線と国分寺崖線
    • 玉川上水 ホームから支流(分水)のせせらぎが見える駅
  • 第二章 戦国大名&国府と地形編
    • 古代武蔵国の県庁ともいえる国府が府中に置かれた理由とは?
    • 家康が秀吉のために建てた!? 府中御殿遺跡発掘で謎が明らかに
    • 八王子城と北条氏照の謎 鉄壁の山城をなぜ放棄したのか?
  • 第三章 武蔵野台地の「道」と地形編
    • 古代道路ミステリー 湿地や丘があっても一直線に造られた謎
    • 鎌倉街道 「いざ鎌倉」への道 鎌倉幕府による街道整備
    • 戦時中に戦車が走った戦車道路 うねうねとしたコースの理由は?
  • 第四章 多摩の鉄道と地形編
    • 武蔵野台地の尾根筋から崖線越えの京王線と地形にこだわらずに多摩丘陵へ向かう小田急線
    • 台地を上り続ける西武池袋線と次第に低地に向かう東武東上線
    • 多摩川へと各地で延びていた砂利鉄道
    • 国鉄下河原線と青梅鉄道福生支線 緑道あり大築堤ありの廃線跡歩き
  • 付章 多摩地域暮らしの地理学編
    • 蔵野市518万円、足立区336万円 年収が高い人が多摩地域は23区より多い?
    • 大学卒業者が多く住む市とそうでない市 八王子周辺に大学が多いのはなぜ?
    • 団地からニュータウンの時代へ 多摩の人口、過去から未来

『凹凸を楽しむ 東京「スリバチ」地形散歩 多摩武蔵野編』皆川典久、真貝康之

凹凸を楽しむ 東京「スリバチ」地形散歩 多摩武蔵野編

凹凸を楽しむ 東京「スリバチ」地形散歩 多摩武蔵野編

タモリ倶楽部などへの出演でも知られる(ネット世界ではデイリーポータルZなどでも)東京スリバチ学会の皆川典久氏と、多摩武蔵野スリバチ学会の真貝康之氏による共著。都市の(中でも東京都心部の)すり鉢状の窪地や微地形に着目して、街歩きを楽しむ行為はタモリ倶楽部やブラタモリの影響もあってかすっかり有名になりましたし、そこには東京スリバチ学会の貢献が多分にあるのだと思われます。

私自身も都心部の微地形にも関心はあるものの、やはり実際に住んでいる多摩武蔵野エリアのダイナミックな丘陵や段丘、そこに自然が絡んだ地形変化には特に心惹かれるものがあります。
見どころはやはり2章からの『多摩武蔵野の「スリバチ」を歩く』で、取り上げられているのは15エリア。「井の頭池、善福寺池、三宝寺池、大泉井頭池」といった東京の区部・市部の境にある標高50mライン湧水のスリバチからスタートし、深大寺、小金井、国分寺、東久留米、東村山、府中、国立、立川、羽村、青梅、八王子、稲城、町田、日野と東京西部のスリバチ探訪へと広げて行きます。
元々「スリバチ地形」とは東京東部における微地形の谷地、窪地を指して使い始めた言葉のようで、多摩丘陵のような大きな谷戸の連続をどう扱うかは執筆者も迷うところがあったようですが、稲城、町田、日野辺りの項目では多摩丘陵にも踏み込みつつ、全体では武蔵野台地の崖線エリアを中心に点在する谷地、窪地を中心にスポットを当てています。
『地形と地理で解ける〜』で紹介されているスポットとの被りも多いものの、そこはスリバチ学会ならではの細やかなな着目点やエピソードの紹介もあり、より踏み込んだスリバチ地形の味わい方が指南されているものも。多摩地区を始めとした馴染みのあるエリアの項目から読んでいることもあり、今後の楽しみはまだまだ増えそうな予感。

目次

  1. 多摩武蔵野の「スリバチ」とは〜東京中西部のスリバチ概論
    • 都心よりも複雑で壮大な地形の魅力
  2. 多摩武蔵野の「スリバチ」を歩く
  • 武蔵野台地のオアシス
    1. 井の頭池・善福寺池
    2. 三宝寺池・大泉井頭池
    3. 深大寺
  • スリバチが紡ぐ武蔵野の素顔
    1. 小金井
    2. 国分寺
    3. 東久留米
    4. 東村山
  • 段丘崖が奏でる武蔵野の魅力
    1. 府中
    2. 国立・立川
    3. 羽村
    4. 青梅
  • スリバチ学会のフロンティア
    1. 八王子
    2. 稲城
    3. 町田
    4. 日野

『いるか丘陵ウォーキングガイド 首都圏のグリーンベルト・多摩三浦丘陵』

書籍というか中綴じ32ページ、A5サイズの小冊子。多摩川の右岸から南側の多摩丘陵、三浦丘陵(に京浜の港湾部まで含め)をイルカの形に見立てて「イルカ丘陵」と呼ぶやや無理のある設定はともかくとして、多摩三浦丘陵を中心にウォーキングコースが6本紹介されています。
多摩丘陵では以前このブログでも紹介した「多摩よこやまの道」の他、実家の犬の散歩で何度か出掛けたことのある「小山田緑地」は鶴見川の源流部として紹介されています。その他、丘陵部ではないものの「鶴見川中流部の散策」、「横浜元町・本牧の高台」、ハイキングコースとしても人気の「鎌倉アルプス」、三崎口から油壷にかけてのコースが収録。観光ガイドではなくフィールドワークのためのハンドブックといった趣で、実際のウォーキングにも携行しやすいサイズ。

実際、横浜、鎌倉、三浦方面には魅力的な丘陵地や緑地が多いと思うのですが、どうしても一般の書籍では観光ガイドブック的な切り口が多くなってしまうので、地形、地理に絡めたウォーキングガイドが増えると良いですね。個人ブログ等で発信している人はそれなりに居ると思うので、そういった情報を探してみるのも良いかもしれませんが……。

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この他にもAmazonのKindle Unlimitedで読めるウォーキングガイドなどはいくつかあるのですが、ひとまず今回は実際に買ってみた3冊の紹介でした。

「スリバチ本」の多摩武蔵野編はネットでの新品での入手はやや困難で、私はhontoに残っていた在庫を購入しましたが、現在は品切れ状態。書店の店頭在庫か中古を探すしかないようです。
最初に紹介した『地形と地理で解ける!〜』の方は電子版で気軽に読めるので、そちらを読んでより興味を惹かれるようならば、スリバチ本を探してみる価値は十分にあると思います。

東京スリバチの達人 分水嶺東京南部編 (高低差散策を楽しむバイブル)

東京スリバチの達人 分水嶺東京南部編 (高低差散策を楽しむバイブル)

  • 発売日: 2020/12/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

また、この手の書籍を読む際に手元にあるとより楽しめるのがカシミール3D赤色立体地図などの立体地図サービス。私はカシミール3Dのスマホアプリ版である「スーパー地形」をiPhoneに入れて読んでいます。このアプリを使うようになってから、街歩きがより楽しくなりました。

スーパー地形

スーパー地形

  • Tomohiko Sugimoto
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