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奥秩父・雁坂峠〜雁坂嶺で新雪スノーハイクと無人小屋と星空と

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強い寒気が日本列島に入った1月最後の週末(1月23日〜24日)、お天気が期待できそうなエリアを求めて奥秩父の雁坂峠、そして雁坂嶺を目指しました。

© mikuru

当初は全く雪がないことすら覚悟していたのですが、結果的に降りたてのパウダーを踏むスノーハイクから、貸し切りになった無人の山小屋、夜は一面の星空、翌日は素晴らしい快晴に恵まれての充実した週末となりました。

冬の奥秩父主稜を目指す

冬型の気圧配置で北アルプス、東北、八ヶ岳方面は天気予報が微妙だったこの週末、晴れが期待できそうなエリアを求めて前日までに中央・南アルプスそして奥秩父に狙いを絞りつつ、最終的に選んだ行き先は奥秩父の雁坂峠でした。

人気の甲武信ヶ岳や金峰山でなく、ややマイナーな雁坂峠を選んだのは参加予定メンバー(残念ながら当日急な体調不良で不参加となってしまいました)の提案だったのですがが、これが大当たり。途中まで先行者がいた他は、その日宿泊をした雁坂小屋付近に入ったのは我々のみで、翌日下山するまで他の登山者に会わない山の借り切り状態でした。

雁坂峠(かりさかとうげ)は埼玉県秩父市と山梨県山梨市の境にある峠。標高2,082m。奥秩父の山域の主脈の一つであり針ノ木峠、三伏峠と並び、「日本三大峠」に数えられる。
雁坂峠 - Wikipedia

雪が少ない今年の冬、飲料水にする雪がないことも覚悟して飲料用とは別に水を持って上がりましたが(スタート時に日和って1L捨てた)、当日は明け方からの降雪もあり結果的に上には新鮮な雪がたっぷりありました(溶かす手間が省けたので結果オーライ)。

計画は山梨側の雁坂トンネル料金所前の駐車場からの雁坂峠ピストンに、冬期にも無人で開放されている雁坂小屋(有料ですがトイレも仕様可能)に宿泊、翌日は雁坂峠から片道40分程のピーク雁坂嶺(2289m)に登るというものです。
昨年、冬の上高地を一緒に訪れた山仲間とのゆるハイク&山小屋宴会的な計画でしたが、実際は結構歩いたような気もします…… というのもちょっと無駄に歩いてしまうアクシデントがあった訳ですけども……。

雁坂峠登山道、冬期は12本爪アイゼンもお忘れなく

当日朝、集合場所の道の駅みとみ(西沢渓谷や甲武信ヶ岳登山口の拠点してもお馴染み)に到着すると、なんと雪が降っていました。雁坂トンネル料金所前の駐車所へと移動する頃には雪はやんでいましたが、地面には数センチの積雪が残っていました。

駐車場で準備をしたら雁坂峠登山道の入口からスタートです。雁坂峠までコースタイムで約3時間、うち前半の1時間半弱が舗装された林道歩きになります。

先行者は2名いる模様。

山梨県山梨市と埼玉県秩父市を結ぶ雁坂トンネル、その上にあるのが雁坂峠です。かつては「かりさかみち」と呼ばれ1998年4月に雁坂トンネルが開通するまでは、車の通れない山道が「開かずの国道」と呼ばれていたのだとか。

そして峠の少し西にあるピークが翌日登る予定の雁坂嶺(2289.4m)。朝までの降雪でうっすらと雪山になっています。

この橋を渡れば林道はオシマイ。奥に見えるつづら折りから登山道が始まります。

さーて、登りましょう。

15分程で沢のトラバースがあるのですが、ここが完全に凍結して氷の斜面になっていました。実はこの日はルートと雪の状況を考え12本爪アイゼンとピッケルは必要ないだろうと車に置いてきてしまい、手元にはチェーンスパイクのみ……。

チェーンでも行けないことはないかもしれませんが、雪が被っていて氷の状態も分かりませんし、一度滑ったら一気に数十メートルは落ちてしまいそうな沢です……。

最悪のことを考えたら12本爪アイゼンとピッケルを取りに戻った方が賢明だろうと判断して、一旦駐車場まで戻ることにしました……。
計画時の調査不足もありますが、やはり冬山に入る以上装備は万全を期すべきだと一同大いに反省(低山だからと少々油断していました)。いい勉強になったと、2時間弱のペナルティを食らって再スタートです。

改めてアイゼン&ピッケル装備で氷を歩く私/© mikuru

この沢は12本爪アイゼンがあれば安心ですが、降雪直後は氷に雪が積もって分かり辛くなってる可能性もあるので十分注意してください。

奥秩父の低山といっても降雪後なのですっかり雪景色。

登山道の大半は峠沢という沢沿いのルートになるので、凍結箇所も所々にあります。軽アイゼン、アイゼン等の装備はくれぐれもお忘れなく。

© mikuru

この日は山小屋泊の予定ですが無人小屋(避難小屋ではなく、管理人不在ながら一部が開放されてる状態)での鍋パ予定なので少々ザックの荷物が多めになっています。ゆる登山と言いつつあまり緩くないのは仕方ない……。そしてそれでも写真は撮る。

このような緩やかな登山道が続きますが……

たまにこんな沢があるので気を抜けません。

ここもちょっとヤバイ。危険だと思ったらチェーンスパイク等を使いましょう。

峠手前、笹原のつづら折りに入る頃、雪が降ってきました。

……かと思ったら青空が見えたり……

この笹原つづら折りが意外と長くてザックが重いと結構削られます。

あとひと息、がんばれ!


日本三大峠とは? 雁坂峠に到着

雁沢峠に到着、日本三大峠だそうです(残り2つは針ノ木峠と三伏峠)。先行者のトレースは破風山〜甲武信ヶ岳方面に続いているので、ここから雁坂小屋方面はこの日まだ誰も踏み入れてないようです。もしかして山小屋貸し切りなのでは?

雁坂峠は十字路になっていてさらに雁坂小屋で2つの尾根に分かれるので、奥秩父主脈縦走路上の五叉路的なポイントです。

南東へと延びる尾根は水晶山〜古礼山方面。さらに進むと笠取山、そして雲取山へと続きます。この稜線の左手側が埼玉県、右手側が山梨県になります。

太陽は雲から出たり隠れたり……

よく見ると富士山も半分位見えていて、しばらく雲が晴れないか待ってみたものの、どうもお天気は下り坂のようだったので雁坂小屋に移動しましょうか……。

小屋までは緩い下りを10分ほど。この日は誰も踏み入れてないので浅い雪ではありますが新雪ハイキングです。たーのしー。

すぐに雁坂小屋が見えてきました。

© mikuru

宿泊棟の一部とトイレが冬期開放されている雁坂小屋

夏山シーズンは小屋番のいる雁坂小屋ですが(結構人気の山小屋のようです)、小屋締め以降の冬期も無人のまま宿泊棟の一部とトイレが開放されています。避難小屋という訳ではなく(?)、小屋の使用料を小屋内の料金箱に払い込むシステムですが、冬期に綺麗な山小屋に泊まることができてしかもトイレを利用できることは大変ありがたい。

冬期の利用に関する詳細は下記、公式ブログをご確認ください。
雁坂峠(雁坂小屋公式ブログ) : 2018年シーズン 小屋締めしました

小屋から水晶山に直接向かう登山道に先行者のトレース? ってこれは人でなく動物のもの。恐らく鹿かカモシカだと思いますが、彼らも結構登山道を歩いてるんですよね。やっぱり歩きやすいものね。

小屋のすぐ目の前には日の出スポット。稜線まで出なくてもいいのはありがたい。

入口には雪が積もったときのための除雪用スコップも用意されています。ドコモの電波も一応入ります(入口付近のみ)。アイゼンは入口で外しましょう。

小屋内はこのような感じ。冬期に利用できるのはこの一階部分。奥の小上がりになっている5畳ほどのスペースで寝ることができます。備え付けのストーブは管理人不在時は使用禁止で、コンロなどは土間部分で使う決まりです。

当たり前ですが下手をしたらテント泊よりも冷えるので、ダウン上下や象足は必須です。

料金箱の前に用意された封筒に代表者の連絡先等の必要事項を記入して、料金を支払います。2000円でトイレ付きの綺麗な山小屋に(冬期に)泊まれるなんて本当に助かります。

雁坂小屋にはテント場もあるので、テント泊も可能です。

集泊料金支払いの封筒/雑誌や漫画の他、星座早見盤もありました

そして冬期も個室の一箇所が開放されているトイレ。このトイレ、雁坂トンネルが開通する以前、かつての国道140号線が通っていた上に作られているのだとか。
雁坂峠(雁坂小屋公式ブログ) : 便所国道

スタート時にロスがあったので15時頃と少し遅い到着ですが、とりあえずお湯を沸かして昼ご飯。すっかり体が冷えてしまったので、カップ蕎麦が美味しい。

それもそのはず、まだ日暮れ前だというのに気温は氷点下8度、小屋の中も風や雪が吹き込まないだけで殆ど変わりません(3人で過ごすには贅沢過ぎる広さなので、体温と湯沸かし程度では外気温との差はせいぜい2〜3度程度)。


夕方からささやかな鍋パ&酒

シュラフにくるまって1時間ほど昼寝をして外に出てみると雪は上がって青空も見えていました。そろそろ夕飯の準備に取りかかりましょうか……。

我が家が用意してきたのはキムチ鍋。一日中氷点下な冬期なら肉や魚の生ものも凍らせたまま安心して山に持ってくることができます。野菜等全て凍ってしまっていたので、火が入るのに少々時間がかかりましたけども……。

同行者の方が作ってくれたのは豆乳鍋。暖かい2種類の鍋で温まりながらお腹いっぱいに。雑炊のご飯(もちろんアルファ米)や生卵も用意してきたのですが、食べきれずに翌朝の朝食に回しました(余ったはキムチ汁は放っておけばすぐにガチガチに凍ってくれます)。

そして各自持ち寄ったお酒を片手にささやかな酒宴へと。以前、谷川岳で飲もうと思って用意していた群馬・永井酒造の谷川岳は冷やも熱燗も美味しかった。

© mikuru

奥秩父の夜、一面の星空

食後、外に出てみればすっかり晴れて満天の星。F1.8の単焦点レンズで(M. 8mm Fisheye PRO)、ISO2000/15秒も開けておけば結構な星が写ってくれます。

魚眼もいいけどE-M1 MarkIIのFisheye補正を使った広角もいい感じです。

JPEG保存にしてはよく撮れてると思うのですがいかがでしょうか。オリジナルの魚眼と並べてみました(フォトライフの表示時の縮小で画質がねむくなっているので、クリックして拡大するともう少し綺麗に見えると思います)。


周辺部の星が細長くなってしまったのはサジタルコマフレアというより、Fisheye補正の影響で引き延ばされてしまったものかな。

徐々に雲が出てきたので切り上げて消灯。夜はそれなりに冷え込みましたが、プラティパスの湯たんぽを抱えて寝袋に入ったらそのまま浅間でグッスリでした。コンタクトなど凍ったら困るものは寝袋の中に入れておきましょう(朝、すぐに食べたいパンなども)。

翌日は快晴、ご来光から雁坂嶺へ

9時間近く寝て翌朝は6時頃に起床。お湯を沸かしたり朝食の準備をしながら日の出(6時45分頃)を待ちます。風もなく周囲に我々以外に人がいないのでとても静かです。

夜明け前の気温はマイナス15度、奥秩父でもこれ位の寒さになるんですねえ。

山の朝は美しい。


太陽が昇ってきました。雲取山のあたりかな?(山が重なっているのでよく分からない)

奥秩父、いいじゃないですかー。

朝食を食べ荷物をパッキング、小屋の掃除を済ませたら出発です。前日に積もった雪がそのままなので、チェーンスパイスを付けて行きましょう。

埼玉県側の街が見えました。小鹿野や皆野方面でしょうか?

そして再び雁坂峠へ。前日から一転、富士山&南アルプスがクッキリのお天気です。



雁坂嶺への楽しいスノーハイク

重たいザックはデポしてアタックザックで雁坂嶺を目指します。

身軽な装備でのスノーハイクにウキウキで登って行く一同。

© mikuru

誰もいないはずの登山道なのにカモシカが遊びまくったトレース。

2本爪の跡がクッキリ。

樹林帯の雪山歩き、楽しいじゃないですか。立ち枯れの木々が美しい。

爪先を引きずったような足跡。どんな歩き方をしてるのかな?

やっぱり真新しい雪を歩くのは気持ちいいですねえ。ご覧の通りラッセルとも無縁の深さでモフモフが気持ちいいスノーハイクです。これがもう少し雪が深くなると、奥秩父でもワカンが必要になりそうですね。

そして埼玉県と山梨県にまたがる雁坂嶺の山頂に到着。樹林帯の中の山頂ですが、南側が開けていて富士山や南アルプスがよく見えます。

© mikuru

甲武信ヶ岳方面の稜線。実はまだ登ったことがない甲武信ヶ岳、次こそは!

あの岩が見える山はなんだろう?


雪が融け始めた山を下山

さーて、戻りましょう。

なんだか日差しでどんどん雪が融けているような……

再びザックを背負って下山。雪が残ってるといいけど……

甘かった。ここからはもう靴の裏の雪&泥だんごとの戦いです。

氷も日差しでかなり緩んでいました。

© mikuru

例の危険地帯のみ念のため12本爪アイゼンに履き替えて通過。

峠沢の対岸に幅、高さ共にかなり大きな氷瀑ができていました。手前の木々が邪魔で全体像が分かりにくいですが、奥秩父にもこんな所があるんですねえ(標高1500m程度)。

林道まで下りてきました。この崩落箇所、ちょっと恐いですね……

ただいまー。山の雪がすっかり消えてしまいました。

我々が山に入ってる週末の間はなんとか雪山でいたくれた奥秩父。大きなピークこそ踏みませんでしたが、贅沢な時間を過ごした楽しい一泊二日となりました。


ほったらかし温泉から山梨ごはん

帰り道、久々に山梨市エリアに来たのでほったらかし温泉に来てみました。かなり人気になっていると聞いてましたが、あまり混雑してなくて良かった。

前回「こっちの湯」に入ったので、今回は「あっちの湯」に入りましょうか。

ここは露天風呂から富士山や奥秩父の山を見渡せる絶景の温泉としてもお馴染み(この建物の向こうに浴槽があります)。

朝からずっと富士山がよく見えた1日でした。

ゆるキャン△にも登場した温玉あげを食べて……

山梨駅前に移動して山梨感溢れる夕飯を食べたのでした。

行きのドライブでも思ったのですが、奥秩父エリアは本当に近い。夜中なら自宅から1時間半程度の運転で登山口に付いてしまします。
以前は冬の大菩薩嶺なども何度か訪れていましたが、最近は近くても八ヶ岳が当たり前になっていたので、奥秩父にもいい山が色々ありそうだなと見直す切っ掛けになった山行でした。ただ、もう少し雪が欲しいですよね(笑)(ただでさえ今年は雪が少ないですし)

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