VILTROXのEマウント用中望遠レンズ「VILTROX AF 85 / 1.8 Ⅱ FE」をしばらく使ってみたので紹介します。ソニーEマウント用、85mm F1.8スペックの単焦点レンズで、SONY純正のレンズと比べても非常にコストパフォーマンスに優れたレンズとなっています。
今回は販売元のパーギアさんからモニター製品を提供して頂いてのレビューとなります。
VILTROX AF 85 / 1.8 Ⅱ FE
VILTROX(ビルトロックス)は中国深センに拠点を置くカメラ関連メーカーで、マウントアダプター等のアクセサリ類の他、最近はレンズの製造にも力を入れているようです。新興の中華ブランドに多い低価格帯のレンズが中心ですが、マニュアルフォーカスだけでなくオートフォーカスのレンズもライナップしています(APS-C用の単焦点23/33/56mm F1.4三兄弟などかなり魅力的ですね)。
今回紹介するのはフルサイズミラーレスカメラ用、焦点距離85mm F1.8の単焦点オートフォーカスレンズ。ソニーEマウント用ですが、富士フイルムのXマウント用もラインナップされています(APS-C装着時の画角となります)。
同社からは昨年の8月に初代の「VILTROX PFU RBMH 85mm F1.8 STM」が発売されていたのですが、こちらは今年8月に早くもリプレースされた2型モデル。1年でモデルチェンジとは凄いスピード感ですね……。
基本スペックは1型同様ですが、2型では重量が636gから484gまで約152gも軽量化されいています。価格は記事執筆時点で45,900円とEマウントレンズにしては、なかなかのコストパフォーマンスです。
ただし、Eマウント用の85mm F1.8スペックのレンズはソニーから純正のSEL85F18が出ていて、こちらは重量371gと軽量で実売価格も約58,000円ほど。この純正レンズはかなり評判もよく、私も何度か購入を検討したことがあるものです(結局、中望遠単焦点はMFTでオリンパスの45mm PROレンズを使うことになりましたが……)。
重量は純正より100g重く価格は1万円以上安いという、なかなかに絶妙&微妙な立ち位置……。できることなら描写やフィーリングなど純正と比較できれば良いのですが、あくまでこのレンズのみを使ってのレビューとなります。レンズの主な仕様
VILTROX 85mm f1.8 AF Auto Lens Portrait Fixed Focus Lens – Pergear
- 型名:VILTROX 85mm f1.8 II AF
- マウント:Eマウント(Xマウント)
- 焦点距離:85mm
- APS-C利用画角:127.5mm相当(Xマウント)
- レンズ構成:7群10枚(円形絞り)
- 開放絞り-最小絞り:F1.8-F16
- 最短撮影距離:85mm
- 最大撮影倍率:0.125倍
- フィルター径:72mm
- 絞り羽根:9枚
- 最大径×全長:φ80mm×92mm
- 重量:484g
- フード:付属

レンズ外観、付属品等
本体は金属製でなかなかいい感じの質感。500g弱なのでそこそこにズッシリしてますね。
外観がTokinaのatx-m 85mm F1.8 FEとよく似ていて、特に1型とは重量、スペック、価格帯、レンズ構成もそっくりなので、どちらかのOEMでは?という噂もあるようですが、詳細は分かりません。
ちなみに1型→2型の変化は軽量化及びフォーカス性能の最適化で、光学性能などは同じとのことです。
マウントのmicro USB端子はファームウェア更新用。タムロンのEマウントレンズはカメラ(α)に装着した状態でファームアップできましたが、この辺りはソニーとのライセンスの関係なのか、VILTROX版が複数マウント対応なためかは不明です(恐らく前者)。
付属品は英語マニュアルと布ケース(私は付属レンズケースって使わないので、これぐらいが潔くて良い)、保証書は英語と中国語。保証期間は購入から2年で、Amazon等で購入したものも対象になるそうです。(故障内容にもよると思いますが)保証期間内の無償交換にも対応してくれるとのこと。
レンズが割と高級感があるのに対して、付属の花形フードとレンズキャップは少々チャチなのが残念。特にフードはバヨネットの噛み具合が微妙で、ここはもう少し精度の高さが欲しいところ(特に逆付けするのが難しい)。
α7系(写真は7 II)に装着した際のバランスはいい感じ。実際に持ってみると重量的にもまあまあの塊感があり、1型やTokinaのatx-m 85mmだと少々重いのでは…… と感じさせます。フードを付けない方がバランスは良いのではそこは仕方ないですかね。


追記:フードをHAKUBAのラバーフードにしたらいい感じ
いいレンズなのですがどうしても付属フードが好きになれないので(精度の悪さと大きいのでカメラバッグ収納の際に邪魔になる)、以前オリンパスのM.ZUIKO 40-150mm PRO用に買ったHAKUBAのシリコンフードに交換してみたらかなりいい感じでした。
フィルターネジに取り付けるタイプなので、保護フィルターの上に装着しています。サイズ(深さ)は純正フードとほぼ変わりませんし、当然ケラレなども発生しません。折りたたみ式のシリコンフードなので、カメラバッグ収納時には折りたたんでその上からレンズキャップも取付可能です。




AFはかなり高速、瞳AFにも対応
STM(ステッピングモーター)によるAF動作はかなりスムーズ。私自身がEマウントレンズをあまり知らないこともありますが、純正レンズのSEL35F18Fとも遜色ありません。動作音は当初無音かと思いましたが、静かな部屋だと合焦時に「ウィン」と小さな音が鳴っているのが聞こえます。屋外だと全く気になりませんが、動画だと気にする人はいるかも?
もちろん瞳AFもちゃんと動作し、オートフォーカス周りでストレスになることはありません。
ただしフォーカスリングが割と重め(ネットリといい質感ではあるものの)で、最短から無限遠まで1回転弱あるので、MFを多様する場合は少し大変かも。
描写とか絞りの変化とか(さらっと)
周辺部の歪みは糸巻き型のものが多少ありますが、Lightroomのプロファイル補正に対応しているので(なぜかメーカー表示がSonyになっている……)、RAW現像する場合は簡単に修正可能です。


絞り解放から中央の描写はかなり良く、周辺部も少し絞れば平均的に安定します。自分の用途なら開放からガンガン使って行けそう。開放では若干周辺減光もありますがF2.8〜F4.0ぐらいまで絞ればほぼ気にならないレベル。こちらもプロファイル補正で簡単に消すことができます。
ちなみに色収差がそこそこあるという噂を聞いていたのですが、今回色々と撮った条件ではそこまで目立つフリンジを出せませんでした(以下の写真は出てる気もしますが、いかんせん被写体の色が……)。この後で作例として掲載している写真も全て、Lightroomの色収差の除去は入れてません。私の許容範囲や条件もあると思うので、この辺りはもう少し条件を変えて作例撮りしてみます。

以下、解放のF1.8、F2.0からF11まで1段ずつ手持ちで撮り比べたものを貼っておきます(ピントは全て中央)。少し大きめのサイズで貼っておくので、気になる人は画像を拡大するなどして比べてみてください(Exifも残っています)。全てRAWファイルをLightroomに読み込んだそのままの書き出しで、プロファイル補正は全て外しています(周辺減光が分からなくなってしまうので)。





















そういえばこのレンズ、絞り羽根が開放のF1.8では完全に開いてないそうで、F1.6ぐらいまで開くという話もあって1型は開放をF1.6にするファームウェアがあるようです。2型はどうなるでしょうかね……? 2型比でもより軽量なソニー純正レンズが存在するので、ここは明るさでアドバンテージが増えるならば面白いと思うのですけども。
VILTROX 85mm F1.8を「F1.6」にするファームウェアアップデート - とるなら 写真道楽道中記
VILTROX 85mm f/1.8 to 85mm f/1.6 Update - Sony Addict
レンズ作例
昭和記念公園スナップ
本来ならば85mmという中望遠はポートレートレンズになると思いますが、私自身が人を全然撮らないので、作例は普通の屋外スナップが中心です。11月に入り黄葉・紅葉がスタートした立川の国営昭和記念公園の昼と夜を主に撮影しています(作例はRAW撮影したデータをLightroomで現像しています)。
日頃マイクロフォーサーズを使っているのでフルサイズのF4.0(MFTだとF2.0相当)ぐらいの絞りがしっくり来ますね。ただし、今回は開放で撮った作例が多いです。
中望遠は使い慣れないと画角の狭さもあってスナップには難しいのですが、普段よりも少し遠い位置からカメラを構えることを意識すればそれなりに広く移すことも可能です。標準レンズ(50mm)を構えるよりも15歩ぐらい手前のイメージでしょうか(適当に言いました)。
イチョウ並木などを撮る場合、圧縮効果が効くので葉のみっちり感を出しやすいです。絞ってもいいですが、あえて開放にして立体感を演出してみるのもいいかなと。
ボケは柔らかく溶けていい感じですが、背景次第では若干騒がしい感じになることもあるかな?
人が多いお花畑なども大きなボケで背景、前景を整理することできます。むしろ、ボカした人混みの雰囲気を狙っている感じ。
ややワンパターンではありますが、お花畑を浅いピントで撮るのが好きかも。週末などどうしても人の多さが目立ってしまいますが、広角パンフォーカスとは違ってボケた人にも味があるというか。
前回、オリンパスの45mmPROでも同じような写真を撮ってますが、また同じシーンを撮ってしまいました(笑) ボケの大きさもあって、どことなくミニチュアっぽい雰囲気になりますよね。
小さなお花がたくさん咲いてるコスモスは、浅いピントで整理したくなります。
逆光パターン。結構ガッツリ太陽にレンズを向けてみましたが(少し雲がありましたが)、フレアやコントラストの低下はそこまで起こらないかも。これはもう少し日差しのあるときにもう少しテストしてみます。
遠巻きでも人が入るといいアクセントになりますね。
ピントを手前にしたパターン。
これもやはり開放。単焦点開放のスナップは被写界深度の浅さから分かりやすい立体感が出せて、簡単に「いい感じ」が撮れます。あまりそれに頼りすぎてしまうのも良くないかもしれませんが、あまり気にせず撮りたいものを好きに撮ればいいのでは?
紅葉スナップ。85mmではやや長い気もしますがひとまず……。
どうしても切り取るような構図が多くなってしまいますが、それはそれでいいじゃないですか?
人の多い街路樹などは大きなボケを生かして適度に人をボカすとブログやSNSでも使いやすいかも?
夜景スナップ
明るい単焦点なので夜のスナップにも使いやすい。全て手持ちで撮っているので、絞りは開放ベッタリです。被写体から距離を撮るなどすればある程度の被写界深度は稼ぐことができます。
開放の玉ボケ。大口径レンズですし口径食の影響はそれなりにありますね。中央付近でも若干円が歪んで見えるのは、やはり開放絞りが少し絞られているせいなのかな?
いつもオリンパスの手ブレ補正に頼りっぱなしな私にしては、あまり補正効果を感じない(個人の感想です)α7IIを使いながらも、かなり楽に夜のスナップを楽しむことができました。
最短撮影距離が80cmなのでテーブルフォトは面倒、というか向いてません。でも撮れる。
追記:紅葉スナップ(殿ヶ谷戸庭園)
国分寺の殿ヶ谷戸庭園で紅葉スナップを撮りました。
追記:雪山スナップ(北八ヶ岳 坪庭〜北横岳)
普通は登山にあまり中望遠の単焦点レンズは持っていかないと思うのですが、今年の初めにオリンパスの45mm F1.2 PROを雪山登山で何度か使ってとてもよい感じだったので、同じような画角のVILTROX 85mm F1.8 Ⅱも使ってみました。標準ズームの望遠端に近い画角で、より大きなボケも得られるので結構出番が多いのですよね(超広角レンズとセットで持ち歩くのも良いと思います)。
追記:江戸東京たてもの園スナップ
江戸東京たてもの園でのスナップ撮影をブログ記事にしています。




性能・コスパ共に魅力的な選択肢
実際にしばらく使ってみた感想ですが、いわゆる廉価な中華レンズというイメージを払拭するに十分な性能を持っているように感じます。いちいち「この値段にしては……」といったエクスキューズを付ける必要もありません。
それこそTokinaのatx-m 85mm F1.8 FEと同性能であるとすれば(あくまで想定ですが)、VILTROXの2型ではさらに重量面でのアドバンテージもありますし、コスパ面にしても多少でですが一歩リード。同価格帯の海外製レンズを視野に入れるとSAMYANGのAF 75mm F1.8 FEあたりがライバルになりそうですが、重量やコンパクトさが魅力のSAMYANGに対して、VILTROXはビルドクオリティや写りの良さで十分に勝負できるレンズだと感じます。
アフターケアなどを考えた際に、国内メーカー製や純正レンズに安心化があることは間違いありませんが、選択肢の1つとしてご紹介する価値は十分にあると実際に使ってみて感じました。あとは本当に些細な所ですが、フードの着脱精度さえ改善されればなぁ……(勿体ない)。
同レンズのXマウント用もありますが、むしろAPS-Cで使うならば同ブランドの56mm F1.4の方が85mm相当で使えて、かつコンパクト(重量も290g)でいいのではないでしょうか。特にXマウントは、純正レンズが高価だったり安価なサードパーティレンズの選択肢があまりないので、このような選択肢があると楽しいですよね。