2019年1月18日に発売となる、カシオの最新アウトドア用スマートウォッチ「PRO TREK Smart WSD-F30」。昨年カシオさんから発売前の実機をお借りし、この1ヶ月の間に雪山登山や普段使いのリストデバイスとして使ってきました。
前モデルとなるPRO TREK Smart WSD-F20も2017年の発売直後より当ブログで紹介してきましたが、今回はそんなWSD-F20からの進化ポイントを確認しつつ、最新モデル「PRO TREK Smart WSD-F30」の魅力についてがっつりご紹介して行きましょう。
- WSD-F30のここに注目! 前モデルから明確に進化した3つのポイント
- ここはちょっと残念かも?と感じたポイント
- 改めて開封&使い始めるまでの手順を紹介
- 今後もレビューは続けて行く予定です
- CASIO PRO TREK Smart関連エントリ
WSD-F30のここに注目! 前モデルから明確に進化した3つのポイント
前モデルであるWSD-F20からこのブログでは何度も取り上げてきたシリーズということもありますし、基本的なスペック、機能の紹介などは一旦脇に置いて(記事後半で少し触れることにします)進化を遂げたWSD-F30の核心部から見ていきましょう。
現在WSD-F20を使っている方、そして新たにWSD-F30に興味を持っている方が最も気になっていると思われるポイントについて、両モデルを実際に使ってみた筆者の率直な感想をお届けします。
「そもそもWSD-F30ってなに?」「アウトドア用のスマートウォッチ?」という方は、この辺りの記事を先に読んでいただけると理解が深まるかと思います。
ひとまわりコンパクトになりディスプレイ解像度がアップ
まずはひと目で分かるガワ部分の変化から。WSD-F30比でひとまわり以上小型化されています。数値でもベゼル周辺部のサイズで縦-3.8mm、横-3.9mm、厚みで-0.4mmの小型化、重量にして-9gの軽量化がなされています。
実際に腕に付けてみてもWSD-F20ほどの「デカッ」っと感じる威圧感はなく、かなり通常のスポーツウォッチ的(よりはさすがに大きい)な雰囲気に近づきました。
F30のイメージカラーでもあるブルーやF20でも人気色だったオレンジはアウトドアウォッチらしいスポーティなイメージがありますし、ブラックは落ち着いた雰囲気なので、普段使いのリストデバイスとしても十分に活用できるでしょう。
本体サイズが小さくなったことで、カラー+モノクロの2層ディスプレイは1.32インチから1.2インチへとサイズダウン。物理サイズが下がる一方で解像度は320×300pixelから390×390pixelへとアップしているので、地図などの表示領域はむしろ広がっています。
専用GPS機やスマートフォンに比べ、表示領域が狭く一覧性においてハンデのあったスマートウォッチだけに、この解像度アップは待望の進化と言えるでしょう。
また、カラーディスプレイがTFT液晶から有機ELに変更となりました。輝度や鮮やかさはTFTに一歩劣るものの、視野角が広くなり登山中などディスプレイを正面から見づらい際などの視認性が大きく向上しています。
さらに画面の明るさ調整がこれまでの5段階に「自動」が加わり、周囲の光度に合わせて最適な画面の明るさを調整してくれます(ただし、雪山での登山中は雪の反射やサングラスにより視認性が落ちるので、基本的に最大輝度で使用しています)。
バッテリー性能が明らかに向上している
今回、メーカー的にもWSD-F30のアピールポイントとしてバッテリー持ちの向上、特に新搭載の「エクステンドモード」によるカラー地図&GPSを使用しながら最大3日間のバッテリーライフを大きく打ち出しています。
さらに2層式ディスプレイのモノクロ表示のみで駆動時間をアップさせる「マルチタイムピースモード」(F20ではタイムピースモード)では時刻の他に気圧、方位、そして高度が表示されるようになりました。
ただし、エクステンドモードは使用できる地図がMapboxに限定され、任意のアプリも使えなくなってしまうものなので、まずはエクステンドモードを使用しない状態でのバッテリーライフを確認していきましょう。
YAMAP使用でもバッテリーライフの向上を実感
ということでやはり気になるのは、普段の登山でメインとして使っているYAMAPアプリの動作とバッテリーライフ。
実際に昨年12月からの雪山登山で同じ設定(バッテリー残量スタート時100%/機内モード/画面輝度最大)にしたWSD-F20とWSD-F30の両方でYAMAPを使用、行動ログを記録しました。
結果は以下の通り、5時間半弱の使用ではその差10%、7時間半の使用では12%の差でWSD-F30の方がバッテリー残量に余裕が出る結果となりました。YAMAP使用に関してはここまで差が出ないと予想していたので正直かなり驚きました。
製品 | WSD-F30 | WSD-F20 |
---|---|---|
5.5h行動後のバッテリー残量 | 63% | 53% |
7.5h行動後のバッテリー残量 | 57% | 45% |
1日7.5時間の記録でとしても残り6割近いバッテリー残量があれば、日帰り登山でバッテリー消費を心配する必要はほぼなし。さらに泊まりの山行においても追加の充電時間は最小で済みます(恐らく1時間未満でしょう)。
もしかしたら6時間+6時間位の行動時間ならノー充電でも行けるかも……? こればかりは試してみないことには分かりませんけども。
スマートフォンと違い氷点下でも安心して使える
ちなみにどちらのシーンも雪山登山で使用時の大半は氷点下の気温でした。最近はスマートフォンの地図アプリを使っている人も多いと思いますが、筆者が使っているiPhoneなどは(体に近い位置で温めながら使ってるにも関わらず)電源が落ちないまでもバッテリー表示が残り数パーセントとなってしまいかなり不安な状況……。
そのような状況でも-10 °Cの耐低温仕様(実際それ以下の気温でも動作確認してます)になっているPRO TREK Smartなら、ハードシェルの上に装着して氷点下の気温でどんな強風を受けても一切動じません。一般的なトレッキングシーンにおいて、気温の影響を気にする必要はまずないでしょう。
更に大きな差が生まれるエクステンドモード
さらに新搭載の「エクステンドモード」もWSD-F20でのYAMAPと使い比べてみました(エクステンドモードは少々ややこしいので、別途紹介記事を作成予定です)。WSD-F20はYAMAP、WSD-F30はエクステンドモードに設定して、先日の木曽駒ヶ岳〜伊那前岳での登山ログを取得しました。
エクステンドモードでも行動中は等高線の入った地図上に現在位置と移動の奇跡が表示され、Mapboxの地図でも一般登山道を歩くような登山ならば、それなりに使えるなと。
そして、なんとバッテリー消費に関しては25%もの差が出ました!?
WSD-F30+エクステンドモード 5弱時間の記録でバッテリー残りは余裕の83%。一方のWSD-F20+YAMAPでは残り58%まで消費していました。
確かにこれならば途中で継ぎ足し充電をせずに2日以上の山行ログ記録も可能かもしれません(「バッテリーライフ3日」は伊達じゃない!?)
ただし、国土地理院の地図をベースにしているYAMAPと比べると、Mapboxの地図はアウトドア用でもかなり精度の面で省略されているので注意が必要です。
例えば同じ八ヶ岳のエリア(阿弥陀岳付近)を比較してみても、国土地理院1/25000地形図がベースになったYAMAPに対して、Mapboxでは大まかな等高線と一般登山道が分かる程度の表示精度であることがよく分かります。
Mapboxの地図からある程度の登山道のキツさ(斜度)などは予想できても、尾根の形や岩稜帯の有無などは読み取ることは不可能です。
エクステンドモード(Mapbox)を使用する際は、より精度の高い地図を紙やスマートフォンで必ず合わせて携行することが必要でしょう。
調整穴ピッチが細かくなって外れにくいリストバンド、交換も可能
直接的な本体の機能ではありませんが個人的に嬉しかったのがリストバンドの改良。WSD-F20では調整穴のピッチが広く丁度いいポイントで止められないことが地味にストレスでしたが、WSD-F20ではバンドが変更され細かい調整が可能となりました。
具体的には7cmの調整域においてWSD-F20では10ピッチ(全体で11ピッチありました)だった所が、WSD-F30では14ピッチと細かく刻まれています。
バンド自体もWSD-F20比で幅が狭くなっていて女性など腕が細い人でもストレスなく着用できるようになっています。
さらに、余ったバンドの端を止めるリング部分の内側に突起を作ったことで、このリング自体がカチっとバンドに固定されるようになりました。WSD-F20ではいつの間にこのリングが抜けて少々ヒヤっとすることがあっただけに、地味ながら非常に嬉しい改良です。
その他、WSD-F30ではベルトの交換が可能となり、同時発売の専用交換バンド「WSA-BX1」に付け替えることで、厚いインサレーションの入った防寒ウェアなどの上からも装着可能になります。
ただし、購入時のバンドのままでも筆者は雪山装備のハードシェルの上から問題なく使うことができているので、実際に交換バンドが必要かの判断は実際に一度自身の環境で試してからでも遅くないでしょう。
ここはちょっと残念かも?と感じたポイント
さて、WSD-F30の進化ポイントばかりとアピールしてきましたが、実は「ここはもう少しなんとかならなかったか?」と感じている部分もあります。WSD-F30に限ってというよりはWSD-F20から引き継いでしまった仕様に関するものですが……。
充電ケーブルが相変わらず外れやすいマグネット端子
初代のWSD-F10から不評だったものの、何故か一向に変更されない残念な充電方式。着脱が容易なマグネット式なのはいいのですが、ケーブル側の形状のせいで、わずかな力がかかっただけで簡単に外れてしまいます。自宅の充電でも簡単に外れるものなので、山小屋やテントではとても安心して使える仕様ではありません。
WSD-F20ではこの充電端子の外れやすさを補うための「専用充電ホルダー WSA-H1」(洗濯ばさみ状のパーツで充電ケーブルと本体を固定する)が後日オプション品として発売されたぐらいですが、それならばF30ではケーブル側にこの充電ホルダー的なパーツを組み込む、或いはせめて同梱する位の心意気は見せて欲しかったものです。
ちなみに後日WSD-F30専用に調整された充電ホルダーが発売予定とのことですが、筆者所有のF20用のホルダーでも問題なく固定できることを確認しています。
光学式心拍計は今回も非搭載
Apple Watchを始め、最近のスマートウォッチは光学式の心拍計を内蔵した機種がかなり増えています。フィットネス、ラン系スポーツに特化したスマートウォッチではもはや当たり前の機能でもありますし、3世代目の機種ということもあって少し期待はしていましたが、残念ながら今回も心拍計の搭載は見送られたようです……。
実際、ライバルのSUUNTOなどもアウトドア用途のTRAVERSEシリーズなどは心拍計非搭載だったりもするのですが、ここはあえて一歩リードを狙っても良かったのかなと次世代機への期待も込めて。
もう少しスッキリしたデザインも見たかったかも?
これはあくまで個人的な好みですが、F10→F20の段階でカシオらしいゴテゴテとした見た目に変更されたウォッチフェイス。同社の人気タフウォッチG-SHOCKや過去のPRO TREKシリーズに寄せていることは理解できますが、もっとシンプルでスッキリしたデザインも見たかった気がします。
初代F10のようなロゴや文字を廃して曲線を行かしたデザインの延長で小型化されたらかなり魅力的な気がしますし、PRO TREKシリーズでは比較的新しいデザインであるPRW-6600系のクールなテイストに寄せてみるのも面白かったかもしれません。
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まあ、あくまで私個人の好みでの話ですけども……。
改めて開封&使い始めるまでの手順を紹介
さて、ここまではWSD-F20を使って来たユーザー視点から、WSD-F30の差分的なレビューをお届けしましたが、改めてWSD-F30でPRO TREK Smartを初体験する人のための情報も少々載せておきましょう。
化粧箱からの開封の様子も駆け足で……。付属のマニュアルは簡易的なクイックスタートガイドのみ、この辺りはアウトドアウォッチというよりも、アプリを追加し自分なりにカスタマイズを行うスマートウォッチなので時計のような取説は付属しません。
設定を行う前に前にしっかりと充電を行いましょう。
右サイドにある3つのボタンのうち中央ボタンの長押しが電源になっています。上下ボタンは「MAP」「TOOL」となっていて、それぞれ「TOOL」「APP」だったWSD-F20から変更されていますが、ボタンの割り当てはWear OS側でカスタマイズ可能なので特に問題はありません。
ちなみに私は上のボタンに「YAMAP」、下のボタンに「TOOL」を割り当てています。
Googleアカウントの転送からYAMAPインストールまで
AndroidWare改め「Wear OS by Google」と名称が変わった基本ソフトですが、WSD-F30を使うためにはAndroid或いはiOS対応のスマートフォンとのペアリング(Bluetooth接続)及びGoogleのアカウントが必要となります。
アカウント情報がWear OS側に転送されて初めてWSD-F30が使用可能となります。
アプリ等のダウンロードに必要なWi-Fiの登録をしたり……
必要なアップデートを行ったり、基本的な操作はチュートリアルに沿っていけば問題なく覚えることができるでしょう。
TOOLアプリを試してみよう
TOOLボタンを押すと標準で割り当てられているTOOLアプリが起動します。このアプリには「コンパス」「高度計」「気圧計」「日の出日の入り時刻」「タイドグラフ」「活動グラフ」といったWSD-F30内蔵の各種センサーを使ったツールがまとまっています。それぞれの機能は縦スワイプで順番に表示されます。
アウトドアアクティビティで多様されるコンパスや高度計、気圧計の他、個人的に気に入っているのが日の出、日の入り時刻のツール画面からの横スワイプで表示されるこれ。
コンパス上に日の出と日没の方角が表示されるので、山などでご来光や夕日が沈む方角を一目で確認することができます。木や岩陰などに邪魔されず、確実に太陽の位置を知りたいような場合に非常に重宝しています。
YAMAPをダウンロードしてペアリングしてみる
登山地図&GPSログ記録を行うYAMAPはプリインストールされてないので、アプリ選択(中央ボタン)の「注目アプリ」からダウンロードしましょう。
ちなみにYAMAPは1台のスマートフォンに対してペアリングできるWear OSは1台まで。WSD-F20を使っていた場合はペアリング解除を行う必要があります(解除後もYAMAPは使用可能ですが、地図の追加ダウンロードができなくなります)。
YAMAPもWSD-F20の発売当初と比較すると非常に安定して使えるようになりました。ただし地図のダウンロード時は充電ケーブルを接続しておくことをお忘れなく。
普段使いのスマートウォッチとしてもGOOD
このようにプリインストールアプリを含めてアウトドアに特化したスマートウォッチのWSD-F30ですが、当然ですが通常のWear OS機としても普通に使うことができます。
Wear OSの標準機能であるGoogle Fitを活用すればスマホを常に持ち歩かずに活動量計として機能し、フィットネスのお供にもなります。
任意のウォッチフェスを選んだり、スマートフォンの音楽プレイヤーのコントローラーにもなりますし、メールやTwitterの新着メッセージを手元で確認することもできます。
登山中に限らずカバンの中にしまっているスマートフォンを取り出すことなく、諸々の操作や確認が行えるのは何かと便利。手元のWSD-F30に話しかけることで「OK Google」での検索も可能ですが、未だに外で使えるほど吹っ切れていません(苦笑)
今後もレビューは続けて行く予定です
以上、駆け足で紹介してきましたが、アプリを追加することで様々な機能を追加できる多機能なスマートウォッチだけに、1本の記事でくまなく紹介するのは不可能です。
今回少ししか触れることができなかったエクステンドモードやマルチタイムピースについても、また改めてご紹介記事を書く予定です。
また、YAMAPや標準地図アプリのロケーションメモリについては、以前のWSD-F20の記事でも紹介していますので、そちらも合わせてチェックして貰えたらと思います。
さて、気になるWSD-F30の価格ですが売り出し価格で6万円を若干切るくらい(カカクコムで59,281円)。一方のF20は発売当初で5万円を少し切った所からスタートして、現在は4万円前後まで下がってきました。
この2万円程の価格差をどう見るかですが、本体の大きさには拘らず日帰りのアクティビティがメインならばWSD-F20のコストパフォーマンスは魅力的ですし、少しでも小ささを求めたり、バッテリー性能を求めるならば最新機のWSD-F30を視野に入れて検討してみると後悔がないかもしれません。