東京都と神奈川県の県境を流れる「境川」を源流部から歩いてみました。といっても河口まで歩いた訳でなく、草戸山にある源流域からJR相原駅までの約7kmほどの区間となります。思いの外に見どころが多く、前半の山歩き以上に何度も足を止めながらのウォーキングとなりました。
- 国境の境川を源流部から歩く
- Nature Factory東京町田(旧 大地沢青少年センター)
- 町田市相原町と相模原市緑区川尻
- グネグネ蛇行する境川
- 住宅地の中を蛇行しながら流れる境川
- 蛇行する川の横には遊水地(調節池)あり
- 右岸が多摩丘陵を抜けて田園風景へ
- 直線化された流れと下の流路が共存!?
- 町田街道から境川を離れてJR相原駅へ
- 散策ルートとGPSログ
国境の境川を源流部から歩く
ざっくり「境川(さかいがわ)」のおさらい。町田市の最高峰である草戸山に源流を持ち、相模原市と町田市の市境(相模国と武蔵国の国境)を流れて、神奈川県藤沢市の片瀬海岸で太平洋(相模湾)に注ぐ二級河川です。
個人的にも子供の頃から馴染み深い川で、相模原市の古淵から町田駅周辺に欠けての境川沿いは日常的に自転車で走り回っていました。この区間の境川はコンクリートで三面護岸された真っ直ぐな川ですが、元々蛇行していた流路を河川改修で直線化したことで、現在も市境が川を挟んだ町田市(相模原市)の飛び地として存在するのは、ブラタモリでも放送されたので有名かも?(この辺の話も後ほどじっくり)
そんな境川の源流からスタート。流れ始めた沢の音を聞きながら谷沿いの道を下って行きます。
たまに谷底を流れる水が見えますが、まだちょろちょろとした小さな流れです。
高尾山口から草戸山までの登山道と比べても整備されて歩きやすい道です。
しばらく下ると足元に砂防ダムが見えてきました。
砂防ダムのすぐ上で2つの沢が合流しています。中央の尾根から右側がここまで歩いてきた谷ですが、左手側の谷も水が流れていて、ここで合流します。
こちらは左側の谷を流れる沢。それなりに水量があるのが分かると思います。先程の場所が唯一の水源という訳ではなく、この草戸山の北東面一帯が源流域であると考えた方が良さそうです。
2つの沢の中央に「境川源流地」の看板がありました。相模湾(片瀬海岸)まで約52kmですか。
山の上の水源地よりは水量が増えています。
砂防ダムの下から流れる境川。
この先は緩やかな林道になります。
林道を下って行くと川の左右から次々に支流が集まってきます。
この絵地図でも先程の砂防ダムがあったポイントで2本の沢が合流しているのが確認できます。
ここから草戸峠に上がる登山道があり、草戸山〜境川源流を周回コースで歩くことができます。
右岸側に比較的新しい治山ダム。やはり大雨となると山からの水の流れが大きくなるのか……?
Nature Factory東京町田(旧 大地沢青少年センター)
キャンプ場の施設が見えてきました。テントサイトにバンガロー、かなり大規模な炊事場もあります。トイレを利用させて貰い、持ってきた水がそろそろ切れそうだったのでペットボトルを購入。
「Nature Factory東京町田」の研修棟。ここまで来て突然記憶が蘇ったのですが、そういえば昔ここに来たことがありました。以前は「大地沢青少年センター」と呼ばれていた町田市の公共宿泊施設です。バンド仲間に町田市民がいたので、学生時代に遊びに来たことがありました。施設の体育館でバドミントンをしたり、単なるお泊まり会だった気がしますが……。
またまた右岸側に治山工事の跡。2008年にゲリラ豪雨で大地沢の各所で土砂崩れが発生。青少年センターの施設が被害を受け、洪水や土砂の一部は下流の住宅地まで達し、広範囲に浸水被害を引き起こしたとのこと。ちなみに「大地沢」という地名は特にないのですが(大地沢青少年センターも改名してしまったし)、先程から私が歩いている境川源流からの沢筋が「大地沢」だと思われます。
めちゃめちゃ年季の入ったポストは使えません。
大地沢周回コース(90分)と城山湖周回コース(150分)。このコースも悪くなさそう。
確か泊まったのはこの建物だったはず。
Nature Factory東京町田。施設の最奥から入口に向かって逆方向に紹介してしまった。地図を見ると分かりますが、進行方向の右手側を流れていた境川は、キャンプ場の途中で道の左手側になっています。
町田市相原町と相模原市緑区川尻
「小仏層」。千枚岩状の地層の露頭で、中世代とかなり古い時代のもの。文字の前のクモはアイコンでなく、ぶら下がってます。
すっかり秋の空ですね。
ここでも右岸から支流が合流しています。どれだけの流れが集まっているのだろう。正面の山の向こうは城山湖があるはず。
野草と……
キバナコスモス。
しかしここは本当に東京なのだろうか……。奥多摩に行けば東京都内でも里山風景は見られるし、ほぼ多摩丘陵が占める町田市に谷戸地形が多いことも知ってます。それでも、この風景が町田市内ということに驚きが隠せない。……とここまで書いて、正面のコスモス畑の向こうに境川が流れているので、その右岸であるこちら側は相模原市緑区(川尻)のだと気付きました。一方で、向こうに見えている家は町田市相原町。
秋の空にアキアカネ。
めちゃめちゃたくさん飛んでます。そうそう、しばらく道沿いから離れてましたが、境川です。三面護岸の水路っぽいですが、土砂も入ってかなり自然の小川っぽくなっています。
川を覗くとたくさんの小魚たちと入れ替わりで産卵にやってくるアキアカネ。
グネグネ蛇行する境川
正しい日本の田舎。ここは境川の左岸なので東京都町田市。川の向こうは相模原市です。さて、ここで気づくのが川の大きなカーブ。境川の上流部はかなりグネグネと川の流れが蛇行しています。
境川はこの激しい川の蛇行が原因でかつてはたびたび洪水が発生し、河川改修により川の流れが直線化された箇所があります。具体的にはもっと下流の橋本から町田にかけてのエリアなど。しかし市境は昔の川の流路のままなので、川の左右にそれぞれの市の飛び地が発生しているのは、冒頭でも触れた有名な話。町田駅南口にあるヨドバシカメラも住所は町田市原町田ですが、実際には敷地の大半が相模原市だったりします。
NHKブラタモリの町田の回では、ヨドバシカメラ前のJR町田駅南口の階段の途中に市境があると紹介されていました。そんな蛇行した境川の流れが多く残っているのが、今回歩くこれからの上流エリア。これからお届けする境川はちょっと驚くぐらいの蛇行っぷりを見せてくれています。
立派な日本家屋だ。
足を止めてトンボ見休憩。
トンボたちが休憩。
小魚。オランダ仕掛けで爆釣したい……。
今歩いてきた道沿いに有名なお蕎麦屋さんがあるみたい。気になりましたが既に閉店時間過ぎ。
バス停「ネイチャーファクトリー東京町田」。ハイキング帰りっぽい人が並んでいます。草戸山や城山湖方面から下りてきたのでしょうか。
バスはここから1区間城山ダム方面に行った「大戸」が終点で終点で、相原駅や橋本駅を巡っています。草戸山や境川源流、Nature Factory東京町田を訪れる場合は、橋本駅か相原駅からバスに乗ってここで下車。
さて、ここで境川に左岸側からの合流があります。これが恐らく城山ダムのオーバーフローを流す流路。途中の山から湧水も流れ込んでいると思うので、この日も水は流れていました。
住宅地の中を蛇行しながら流れる境川
住所は引き続き町田市相原町と相模原市緑区川尻ですが、バス通りとなり周囲も徐々に住宅地らしくなって行きます。川沿いの道は常にある訳ではないので、面倒くさくない範囲でなるべく川に近い道を歩くようにしました。基本的には川の左岸が町田市、右岸が相模原市になります。
なんて言ってるうちに早速、大きくカーブして道路から離れて行く境川。
ずっと三面護岸されているかと思うと、見るからに関東ローム層がむき出しの右岸。
クリ。秋です。
全ての橋をチェックした訳ではありませんが、「川堺橋」と境川らしい?名前の橋がありました。
この川堺橋を通っているのが神奈川県道48号「鍛冶谷相模原線」。橋を渡ると神奈川県です。
ここでまたそこそこ大きな流れが今度は左岸側から合流します。どうやら法政大学の多摩キャンパス方面から流れてきた支流のようです。
そしてここでも大きく蛇行する流れ。左岸の高い護岸に対して、右岸側は護岸が低いようですが増水時に水を逃がすエリアでしょうか(でも調節池ではなく恐らく畑なんですよね)。
ここでも90度のカーブ。実際に歩いてみるとその蛇行の多さに驚かされます。
対岸の畑?に行くための恐らく勝手橋。
なんなら少し上流に向かってるぐらいのキツいヘアピンカーブ。毎回同じ方向のカーブの写真ばかりなのは、逆カーブの際は川に近づけていないだけ(そこには家があるから)。
ハグロトンボとアキアカネじゃない赤とんぼ。
蛇行する川の横には遊水地(調節池)あり
突然川幅が広がっ(かと思ったら、川の右岸に大きな遊水地(風間遊水地)がありました。若干水が溜まっているように見えますが、先日の雨の名残でしょうか。
風間遊水地の横にハザードマップがありました。やはり蛇行が激しい境川沿いには、浸水想定区域がそれなりにあるようです。帰宅後に町田市のハザードマップを確認しましたが、過去(1966年、1976年)実際に浸水実績のある地域もかなりあり、その対策もあっての遊水地の存在なのでしょう。
町田市洪水・土砂災害ハザードマップ/町田市ホームページ
もう何本目が分からなくなってますが、下水とは思えない規模の合流が左岸側から。まだ川の両岸は少し離れると多摩丘陵なので(正面にも丘が見えてます)、雨水や湧水がすぐ川となって流れ込んでいるのでしょう。
完全にヤブに覆われた川沿いの遊歩道らしき…… ガードレールの外で入れない訳じゃないようなので進んでみます。
どっちが川だか分からん。川沿いには大きな都営住宅の団地があります。
この公園は使われているのだろうか……?
この先、行き止まりでないといいのだけど。
境川もヤブの中。対岸もジャングル化しています。
ようやく水面が見えた。このあたりは完全は三面張りになってます。
団地の駐車場の下が大きな調節池(防火水槽を兼ねている?)になっていて、雨水のオーバフロー分はここから境川に流れるようです。ちなみ真っ暗に見える中にはギリギリまで生温かい水が溜まっていました。
上流側を振り返る。太陽もかなり低くなってきました。
突然畑に出てしまったので道路に戻ります。ちなみにこの畑は左岸にありますが住所は相模原市なので、河川改修が行われた場所になります。
そんな畑のすぐ下流には、また大きな調節池が2つ。やはりここも過去、浸水が発生したので河川改修による直線化や遊水地、調節池が整備されたのかもしれません。
調節池と境川はここで繋がっていました。今も水が流れているようだけど湧水でもあるのでしょうか……?
右岸が多摩丘陵を抜けて田園風景へ
この「下馬の橋」からガラリと風景が代わります。地形図や航空写真の表示を見ると分かりますが、右岸側に伸びていた多摩丘陵が終わり相模原台地に入り、一気に視界が開けました。
正面に見えているビル群は、近年タワーマンションが多く建造された橋本駅付近でしょう。
相変わらず境川は大きく蛇行しています。ここなんて、三日月湖になっても良さそう!?
川の両岸が遊歩道になっていて、水辺にも降りやすい親水公園的な整備された河川敷が続きます。
右岸に広がる水田。
相模原台地は大きく三段の河岸段丘となっていて(上段・中断・下段)最も低い下段の際を相模川が流れています。段丘の境目には川が流れているものの、上段を流れる川はなく稲作には適さない痩せた土地。水田があるのは主に相模川沿いの下段でした(ですが、16号線や横浜線が通って、最も栄えているのは上段だったりする)。
そんな相模原台地の北部にこんな田園地帯があったのはちょっと驚きの光景…… ですが、住所は緑区広田なので、もしかしたらかつては津久井郡(城山町)だったエリアかも。
トンボ天国。
直線化された流れと下の流路が共存!?
さらに面白い場所がありました。ここで右岸から合流……? かと思ったらなんと分岐しています。
分岐を通り過ぎてすぐに今度は合流しています!???
どういうことかと分岐した右岸側に行ってみると、コの字状に曲がった流れがあり、
そこに右岸から別の川が流れ込んでいます。
このコンクリート橋も古い用水路の交差点のようでものすごく気になりますが……。
大きく蛇行して再び合流。
これは地図を見ればすぐ分かりました。分岐に見えた方が恐らく元の流路(市境があります)。しかし蛇行+右岸からの川の合流点なので、やはり浸水の危険性が高いということで流れを直線化。ただし、合流する川は存在するし既に人も住んでいたため、元の流路も残して川に囲まれた島状の土地が生まれた、のでは?
元の流れのS字っぷりも半端ないですね。
「堰のことば」なる詞が刻まれた石碑がありました。やはり昔から川との関わりの深い地域なのでしょう。ちなみに、これは右岸側の相模原市にあったもの。
またまた巨大な調節池が左岸側にありました。やはりこの調節池のすぐ上は蛇行が直線化されているようです。
左岸に並ぶ家、かなり左岸の護岸が高くなっていますが、ベランダ(庭?)が突き出したデザインで並んでいます。偶然かもしれませんが、土地の区画が決まった後で護岸の嵩上げ工事等があって、使える土地が狭くなってしまったことで、本来の区画まで使うことが許されているとか……?
これも単なる想像ですが、そんなことを考えながら歩いていると飽きません。
このあたりは「相原根岸せせらぎ公園」と呼ばれる親水公園として整備されています。釣り人にヒガンバナ、犬を散歩する人達、どことなく野川っぽいかも。
かと思ったら相変わらずの蛇行天国で飽きません。
さて、この先は川沿いの遊歩道が消えてしまったのでしばらく左岸の町田街道を歩くことにします。
町田街道から境川を離れてJR相原駅へ
町田街道、相原十字路とうろこ雲。
相変わらず大きく蛇行するたびに見える境川。
右岸、左岸ともに住宅地の中に消え、今度こそ私も川から離れます。
交差点向かいの建物に写った空がなんだかキレイな気がする……。
窓の角度のせいなのか、左半分は夕焼けが写って右半分は青空にうろこ雲。
西の空を見たら見事な夕焼けでした。
横浜線の線路と交差するあたりで再び境川が見えました(電車の下に川)。できれば橋本あたりまで行きたかったですが、もう暗くて川面も見えなくなっていますし、この日はここでタイムリミットですね。
相原駅からの夕焼けと夕日に染まったうろこ雲。
最後まで楽しい境川散歩でした。
JR横浜線の相原駅。昔はもっと小さい駅舎だった気がしますが、かなり立派な駅になりました。2003年頃からこの駅舎が使われてるようですが、利用するのは始めてです。
高尾山口のスタートから草戸山プチ登山を経て、境川源流からの川沿い散歩。長年境川沿いの相模原市に住んでいながら知らなかったことばかりで、思いの外に楽しむことができました。
充実した散歩ができて気分が上がったこともあり、ちょっと早いですが赤星が飲めるラーメンで夕飯など。
散策ルートとGPSログ
さて、相原からの境川下流方面ですが、今回かなり満足してしまったので続きは特に考えていません。野川のようにに河原に遊歩道が整備されてる訳でもありませんし、町田ぐらいまでは歩いていい気もしますが、それならしっかり時間を作って河口まで…… という気力も今のところはありません。
それよりはまた多摩丘陵周辺で別のハイキングコースを探して歩いてみたいですね。
草戸山・境川源流ハイク / OKPさんの活動データ | YAMAP / ヤマップ