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秋の牛ノ寝通り、どこまでも続く鮮やかな紅葉トレイルを歩く

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文化の日の11月3日、奥多摩(奥秩父山塊)の牛ノ寝通りを歩いてきました。快晴の空と静かな山の中、色鮮やかな紅葉の中をゆるゆると歩くことができる素晴らしいルートでした。

秋の「牛の寝通り」を歩いてみたい

「牛ノ寝通り」は奥秩父山塊の大菩薩嶺(山梨県にある標高2057mの日本百名山のひとつ)から東に伸びる尾根のひとつ。榧ノ尾山から狩場山にかけての尾根を「牛ノ寝」、その前後を含めて「牛ノ寝通り」と呼ばれているようです。名前の通り、寝転がった牛の背中のような緩やか尾根道の登山道です。

この牛ノ寝通りの紅葉(10月後半〜)が良いらしいと知ったのは数年前のこと。確かこちらのブログの山行記録を見たのが最初だと思います。それから毎年この時期になると気になっていたもののなかなかタイミングが合わず、ようやく行くことができました。

前週に同じ奥秩父山塊の西沢渓谷に行って、牛ノ寝通りぐらいの標高(1300m〜1500m)の紅葉がいい感じだったのを見ていたこともあり、我が家にしては珍しく2週続けての公共交通山行を決めました。

朝の公共交通の混雑が凄かった……

前週乗ったのは高尾駅始発、7:06の中央本線でした。車内は全員座れる程度には空いていたものの、大菩薩方面の玄関口である甲斐大和駅でかなり大勢の登山客が下りるのを見ています。同じ電車だと甲斐大和駅の到着は8:03なので、8:10の上日川峠(大菩薩)行き始発バスに乗るにはややギリギリの時間かも……。

紅葉シーズンだし1本前の電車に乗っておくかと、6:35八王子駅始発の中央本線(松本行き)を目指して家を出ました…… が、この判断すら甘かった!? 八王子駅に到着すると、すでにホームには登山客の行列ができていました。なんだか先週と全く雰囲気が違うかも。

なんとか座席には座れたものの、始発電車なのにまるで通勤電車のような混み具合。松本行きだからなのか?三連休だからなのか?その合せ技か? 甲斐大和駅ではそこそこの乗客が降りましたが、電車の中はまだ混み合ったまま。そして甲斐大和駅のホームは、降りた乗客で埋め尽くされていました。

階段に近い車両に乗っていたので、すぐに改札を出ると以前のバス停とは反対側(公衆トイレがある側、改札出て右)に栄和交通スタッフによる誘導があり、すでに臨時バスが待ち構えていました。
そのまま臨時便のバスに乗り込んで、本来のバス始発よりも25分早い7:45の出発。駅前にはまだまだ大勢の登山客が並んでいますが、紅葉シーズンはこうやって始発を前倒しして対応しているのですね。

甲斐大和駅を出発したバスが山道を上がって行くと、奥日川渓谷の紅葉がいい感じです。やはり紅葉はすでに標高1500m以下とかなり標高を下げているようです。

上日川ダム(大菩薩湖)を過ぎて、「木屋平(石丸峠入口)」バス停で下車(970円)。乗客の大半は終点の上日川峠までですが、木屋平で下りる乗客も1〜2割ほど。ただし全員が牛ノ寝通りに行く訳ではありません。

登るのは最初だけ、木屋平から石丸峠まで

元々、9時頃のスタートを予定していましたが、なんと8時半には木屋平から歩き始めることができました。最初の1時間弱は石丸峠まで登り道。途中林道に出て少し歩いてからは、南側に富士山や大菩薩湖が見えるようになり、ササ原とカラマツの紅葉などお馴染みの大菩薩的景観を楽しめます。

素晴らしい秋晴れの登山日和です。登るのはもうすぐ終わってしまうのですが……。正面の山は小金沢山。

大菩薩湖(上日川ダム)に富士山。カラマツの紅葉が美しいですね。


石丸峠の先は富士山は小金沢山に隠れてしまうので、この風景を楽しむなら今のうち。

石丸峠。標高1933m、本日の最高地点です。


月が沈んで行く熊沢山の向こうが大菩薩峠です。初めて大菩薩峠〜大菩薩嶺を訪れたのもこのコースでした。


この後、すぐに見えなくなってしまう南アルプスも見ておきましょう。

仙丈ヶ岳から甲斐駒ヶ岳、手前には鳳凰三山なども。南アルプスは雪はまだあまり見られないようです。この先は富士山も南アルプスも見えなくなります。

見晴らしのいい景色はここまで。この先はひたすら樹林帯の中になります。

牛ノ寝通りへ向けて尾根を下る

石丸峠からすぐ、牛ノ寝通りの分岐があります。尾根を少し脇に降りるような道になっています。

この先はひたすら下り道になります。小ピークの登り返しは多少ありますが、本当に多少のレベル。ほぼ下りか平坦のトレイルです。

ちょっと分かりにくいですが枯れ木の奥、右奥に伸びているのが牛ノ寝通り。まだまだかなり標高を下げることになりそうです。ご覧の通り歩いてる1900m台はすっかり葉が落ちていて紅葉は見られません。

しばらくは標高を下げながら歩いて行くと、まずは尾根の左手(南側)から紅葉が現れます。

尾根の反対側は既に終わってますが、谷を挟んだ向こうの尾根の紅葉も見事。あちらは「小菅大菩薩道」「丹波大菩薩道」など、やはり大菩薩嶺の東に伸びる尾根が分かれた登山道。向こうも歩いてみたいですね。

そういうしてるうちにこちらの尾根の周囲がどんどん鮮やかになっていきます。標高1400〜1300m台の緩やかな尾根、「牛ノ寝通り」に入りました。




この区間は赤やオレンジなど特に鮮やかな色の紅葉が多いエリア。見上げても尾根の下も紅葉だらけ。

進行方向にもこんな光景が続いています。


スマホで撮っていた牛ノ寝通りの動画。ひたすらこんな雰囲気です。

www.youtube.com

何度も上を見上げてしまう。

榧ノ尾山。山といっても登り返した記憶がないレベル。

山頂周辺は少しだけ開けています。

少々お腹が減ってきたので、おにぎりを1個食べる休憩。この休憩中に数組の登山者が抜いて行きましたが、この日はこんな感じで紅葉歩きをしてる最中は他の登山者に合うこともなく、休憩ポイントで抜いたり抜かれたりでいい感じに静かな山の中を歩くことができました(自分の熊鈴がうるさいぐらいで)。


まだまだ続く牛ノ寝通りの紅葉

さて、榧ノ尾山から先はますます紅葉の密度が高くなって行きます。

重なった紅葉が織りなすグラデーション。


巨大な木が途中で折れて登山道を塞いでいたのを、チェーンソーで一部カットして整備したのかな。折れた木の下はまだ行きていて、紅葉を見せてくれています。

ため息ものの黄葉トレイルはまだまだ続く。



噂に違わぬというか想像以上の紅葉です。かれこれ1時間以上こんな光景が続いています。



標高によって微妙に植生が変化していくのか赤やオレンジから、徐々に黄色系の黄葉が増えて来ました。



ここが「牛ノ寝」か。


黄色い黄葉が増えたことで上から差す光もさらに明るくなったように感じられます。

もちろんオレンジもまだまだありますけども。

もはや写真を見ただけでは進行方向なのか振り返ってるのかすら分からない平坦っぷり。

赤と黄色が混ざったモミジ。

狩場。そろそろ紅葉が落ち着いたかな…… と思うとすぐにまた次の紅葉がやってきます。




再び少し開けた場所に出ると「棚倉小屋跡(大ダワ)」。この先は「大マテイ山」。

12時と丁度いい時間なのでお昼にします。カップラーメンのミニと残りのおにぎり1個で簡単に。

この時間も数組の登山者が抜いて行きましたが、同じタイミングに集中することなく、いい間隔で山の中を独り占めできている感じ。緩やかなトレイルなので、歩行ペースの差がしっかり表れるのでしょうかね。

大マテイ山、まだまだ続く紅葉

それではこの日最後のピーク、大マテイ山に向かいます。

棚倉小屋跡から直接小菅の湯に下る道もあります。紅葉に見とれすぎて時間が掛かってしまった場合は、大マテイ山をスルーして降りればコースタイムで40分ほど短縮できるようです。

時間があるなら大マテイ山もかなりいい感じ。標高差も50m程度ですし、牛の寝の紅葉ともまた少し違った紅葉が楽しめます。登山道は登山アプリによって表示がまちまちで(2本の巻き道の間に山頂がある感じ)落ち葉も多く踏み跡もあまり明確ではありませんが、稜線の真ん中付近を上がっていけば山頂です。




大マテイ山の山頂。展望はありませんがベンチもあって休憩にいい感じの広場になってます。

大マテイ山からの下山路は鶴寝山方面にしばらく進んでから、折り返すように小菅の湯方面に下るようです。ヤマレコ地図を見ると、山頂から直接沢地形を下り小菅の湯に向かってショートカットするログもありますが、素直に登山道を行った方が紅葉は楽しめる気がします。

というか大マテイ山の紅葉もよくないですか?


昼を過ぎて徐々に日が傾いてきたせいなのか、光線が優しくなってきました。

ここで左手側に折り返すように小菅の湯に下り始めます。まだまだ紅葉がキレイな尾根を進めばバス停のある鶴峠に出られますが、この時期の休日は始発からでないと座れないかも(後述)。



下山路も終わらない紅葉

大マテイ山の北東側に下り始めてからも、まだまだ紅葉は終わりません。



ランドマークになってるトチノキの巨樹。かなり見事な巨木です。

登山道が紅葉の境目になっていました。だいたい標高1200mあたり。

かと思ったら再びこの通り。


牛ノ寝通りが終わってもまだまだ紅葉の見どころ満載なコースなのでした。結局、石丸峠から下って牛ノ寝通りの紅葉ゾーンに入ってから、3時間近くひたすら紅葉の中を歩いています。

前週に西沢渓谷の紅葉を堪能した蓄積もありますが、紅葉でここまで満腹になれたのは久しぶり。


棚倉小屋跡から下りてくる登山道と合流するあたりで、ようやく植林の針葉樹林になります。


山沢川とわさび田が見えてくると、今度は落ち着いた沢沿いの静かな紅葉。



最後は舗装された林道をしばらく歩きます。



小菅の湯で温泉に入ってビールと山女魚の塩焼き

14時過ぎ、小菅の湯に到着しました。奥多摩湖周辺では有名なスポットですが実は初めて来ました。
朝のスタートが少し早まったこともあり、ゆっくり紅葉を楽しんだ割には余裕のある時間に下りてこられました。

小菅の湯からのバスは、西東京バスの奥多摩駅行きが15:25と17:32、富士急バスの大月行きが14:41、上野原行きが15:00と15:48にあります(休日ダイヤ)。15:48のバスなら1時間半以上の余裕がありますし、奥多摩駅より中央本線の上野原駅の方が帰りがスムーズそうなので、富士急バス狙いにします。

フルーツ牛乳で下山直後のカロリー&水分を補給してから温泉へ。登山客の入浴はごく一部のようで特に混雑もなく、高アルカリ性の温泉でゆっくり体を休めます。

まだまだ時間に余裕はあるので食事処でビール休憩にします。公共交通はこれができるのが嬉しい! 飲食なら小菅の湯に隣接して「道の駅こすげ」もありますが、こちらの食事処もかなり充実しています。

公共交通なので気兼ねなく風呂上がりの生ビール!

川エビの唐揚げ。

そして焼き上がるまで15〜20分かかる「山女魚の塩焼き(700円)」を注文。身はふっくら、塩加減も絶妙で頭からガブリと行けます。


やはり混雑する公共交通

……と少々のんびりしていたら、あっという間に15時半過ぎ。外に出てみるといつの間にバス行列が長く伸びていました。食事処の窓から見た際は(角度のせいもあり)そんな人がいるように見えなかった……。

小菅の湯でのんびりしていた間にも下山してきた登山者が結構いたみたい。やってきた富士急バスは普通サイズのバスで、なんとかギリギリ座ることができましたが(妻とはバラバラの相席で)、並ぶのがあと数分遅かったら、上野原駅まで1時間半近くの山道を立ったまま揺られるところでした。

途中のバス停でも次々に登山者が乗ってきたようで、上野原に付く頃にはかなり混み合っていました。ウトウトしながら座っていましたが、山道でかなり振られるので座っていても少々疲れてしまった……。

上野原駅に付いたのは既に日没を過ぎた17時過ぎ。14時過ぎに下山していたはずが、もう3時間が過ぎていました。上野原は相模川上流部(桂川)で釣りをしたり、車でも渋滞回避でインターを下りたりしたことはありますが、駅に来たのは初めて。ホームとロータリーに高低差があるのでエレベーターが設置されています。

やってきた上り中央本線は、予想通りにそこそこの乗車率でしたが、高尾駅までは3駅です。

高尾駅からは中央線の車両も増えますし、京王線に乗り換える人もいるので、さすがに座れます。京王線でも帰れるのですが(先週はそうしました)、この日は谷保天満宮のおかがら火があったのでそのまま中央線で立川へ。立川駅構内の崎陽軒で夕飯のお弁当を買って、谷保に向かいました。


山の紅葉をたっぷり楽しんだ後の「おべんとう秋」。谷保天満宮でだんご汁の振る舞いを食べていたので、少し小さめのお弁当が丁度良かったです。

念願だった牛ノ寝通り。期待以上の素晴らしい紅葉を満喫しました。ずっと下り道でほとんど登った記憶がないので、こんなに楽して紅葉を楽しんでいいのだろうか?と(小菅の湯側から歩けば普通の登山になります)。

行き帰りの公共交通の混雑には少々驚きましたが、紅葉シーズン、快晴の連休初日ともなれば仕方ないことか。マイカーアクセスでは難しい片道コースですし、紅葉時期の週末は車でも中央道の渋滞が待っています。
山の中は静かに歩けたので十分に満足しています。