以前から一度確認したいと思っていたことを試してみました。それは、生筋子からいくらを作る際にどの程度熱いお湯を使っても大丈夫か?という件。
自家製いくらを作る際のお湯の温度ってどれぐらいが適切?
生筋子が出回る季節に自家製いくらを作るようになってかれこれ10年近くになりますが、当初参考にした「いくらの作り方」ネット記事の中に「生筋子をほぐす際に熱湯を使うとスムーズ」というものがありました。記事によって「ぬるま湯を使いましょう」というものから「80℃ぐらいのお湯で手早く」とか「長時間熱湯に漬けると(or お湯の温度が高すぎると)魚卵が茹だって(タンパク質が変質して)戻らなくなるので注意」みたいなものまで、熱湯の温度や使い方の情報はまちまちだった気がします。
自分もこれまで色々と試してみましたが、ここ何年かは自宅の給湯器で最も高い設定にした60℃のお湯を使っています。この温度の熱湯なら長時間作業をしていても魚卵はなんともありませんし、わざわざお湯を沸かす必要もなく、なにより素手で作業するには限界の温度でもあります(普通に熱いので手を浸すことはほぼ不可能)。

ちなみに熱湯を使うのは、寄生虫であるアニサキス対策の側面もあります。
アニサキスを殺すために必要な加熱は厚生労働省のサイトによると「70℃以上、または60℃なら1分」とのことなので、普段は60℃の熱湯を繰り返し注いで、破れた皮などのゴミを取る作業をしているのでそれなりの対策にはなってると思いますが、80℃や90℃のお湯でも大丈夫ならばより安心というもの。
他にもアニサキス対策として「-20℃で24時間以上冷凍」もあるので、自家製いくらの場合も作りすぎたものは冷凍保存すれば尚安心。
ということで、どれぐらい熱い熱湯を使っても生筋子は大丈夫なのか気にはなっていたのですが、安い食材じゃないのでなかなか思いきれなかったり、わざわざ熱湯の温度を調整しながら試すのも面倒です。
特に今シーズンはとても生筋子の価格が高く、ここ最近はスーパーでも980円/100gと数年前の倍近い価格が続いていて、とても実験のために買う気分にもなれませんでした。
先週、少し価格が下がった(といっても880円/100gからの値引き品)生筋子が買えたこともあってようやく試してみることにしました。
2本(1腹相当)で250gとかなり小さめの生筋子でした。今年はシロザケが不漁なのでしょうか?
70℃/80℃/90℃/100℃のお湯で1分間
ということでまずは生筋子を軽く手でほぐしてから実験をスタート。いつも60℃の湯で作っているので、70℃から沸騰したての100℃のお湯までで試してみます。
もちろん全部の魚卵を使う訳でなく軽めですよ、軽め。ダメになったら勿体ないもの……。
お湯の温度調整の都合もあるので、いきなり100℃からスタート。沸騰したての電気ケトルの湯をドボドボ注いで行きます。タイマーの設定は1分。アニサキス対策の目安は「60℃ 1分」ですし、ひとまず1分間大丈夫ならそれなりの判断基準になるでしょう。
お湯を注いでから軽く魚卵を撹拌して、いくらをほぐす作業を行います。1分間しっかり経ってからお湯を切ります。少し魚卵の皮が白っぽくなってますが、これは60℃のお湯で作っているときとそこまで変わらない見た目なので、意外とイケてそうでしょうか?
同様に熱湯の温度を少しずつ落としつつ、90℃、80℃、70℃とそれ1分間、ほぐした生筋子を浸していきます(写真を整理していて気づいたのですが、70℃ではうっかり2分間計測していました……)。




熱湯を切った生筋子には、筋子を買うと付いてくるいくら漬けだれで味付け。醤油で漬けるような濃い色にはならず(味と色を見る限り白だしみたいなものですね)、安定した仕上がりが期待できます。
実際にここまでやってみて、どうも全て普通にいくらができ上がりそう? どこかで「これ以上熱いと魚卵がダメになるライン」があるかと思っていたのですが、どうやら1分程度では100℃の熱湯でもいくらはびくともしない? ということで、急遽「100℃の熱湯で3分」パターンを追加してみます。
おや、なんだかお湯を切っても白っぽい色が引かないかも……。
これはもしかしてダメではないか?
でも、タレを注いだら徐々に色が落ちついてきました。もしかしこれも平気だったり? ……ということでこの日の実験はここまで。もう少し違う時間も試して良かったかもしれませんが、残りの筋子で(いつものやり方で)いくらを作る作業が残っていましたので……。
(後々、各温度で2分間で試しても良かった気がしましたが、まああくまで目安を知るものなので……)
翌日:結果確認、ちゃんといくらになっているか?
さて、一晩冷蔵庫で寝かせたいくらの様子を見てみましょう。おや、何か1つだけおかしい……?
70℃〜90℃で1分はすべて問題なく仕上がっています(実際は70℃だけ2分だけど)。試食しても皮の柔らかな美味しいいくらになっています。60℃熱湯で作ってるの際となんら変わらない。
そして100℃ 3分。あっ……
明らかにこれだけ色がおかしいですね。皮が薄っすらと白っぽい。やはり沸騰したての熱湯で3分は長すぎたようです。カップヌードルの指定時間には魚卵は耐えられなかった……。
ではこの白っぽいいくらが皮が固かったり、他ののいくらと仕上がりが違うか? ……と言えば、なんと味は一緒。皮も柔らかく、口の中で適度な圧力を加えたらプチプチと皮が弾ける上等な味のいくらです。
単に見た目がちょっと白っぽいだけでいくらとしての味はなんら問題ない。他のいくらと食べ比べても差が分からないぐらいで、これには驚きました。
てっきり皮が固くなってしまうなど、食感の変質があると思ったのですが……。
100℃ 1分は大丈夫だけど3分はダメ(だけど食べられる)
ということで、生筋子をほぐす際に使う熱湯ですが、浸す時間が1分程度ならば温度の高さはそこまで気にする必要はなさそうです。そもそも作業中に熱湯に何分間も漬けっぱなしにすることはないと思いますし、アニサキス対策ならばあまりビビらずに効果が期待できる温度の熱湯を使って良いでしょう。

とはいえ、私はいくらを作るたびにお湯を沸かすのも面倒ですし、作業で火傷とかしたくないので今後も給湯器の60℃を使い続けることになりそうです。
ところで、ピンポンいくらの原因って何だろう?
そういえば、昔は自家製いくらを作っているとたまに皮が張った、いわゆる「ピンポンいくら」ができてしまうことがあったのですが、かれこれ何年もピンポンないくらができたことがありません。
当初は使う生筋子のタチによるものだと思っていましたが(シーズン終盤は皮が硬い、等)、記憶にある限り今の作り方になってシーズン中に手に入るどんな筋子を買ってもピンポンにはなっていません……。

かつてやっていた方法で今はやってないことは、「塩水を使って作業」「冷水で作業」ぐらいですがですが、どうなのでしょう? 塩水で洗う方法はよく紹介されていますが(中には生筋子に直接「塩を振る」というものも)、塩分濃度によっては浸透圧により味付けが始まってしまいそうでやらなくなりました。水での作業もそこまで問題はなさそうですが、お湯作業で失敗しないのであえて確認もしてません。

今シーズン、また筋子を買うことがあればこの辺も確認してみるかもしれませんが、とりあえず間違いなく失敗しない作り方があるのであえてピンポン作りに挑戦する必要もない気はしますね。