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M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO + MC-20とM.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISを比較 “鳥を撮り比べ”

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昨年の10月からOLYMPUS(OM SYSTEM) の「M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS」を使っていますが、それ以前にずっと超望遠ズームレンズとして使っていた「OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」とテレコンバーター「MC-20」の組み合わせと比較してみました。

40-150mm F2.8 PRO + MC-20があれば十分だと思っていたけ……

以前は超望遠レンズ使うシーンは限られていましたし、M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROに2倍(MC-20)のテレコンバーターがあれば、自分の必要な望遠域はほぼカバーできると考えていました。
300mm(35mm判換算で600mm相当)までのズームレンズといえば、コンパクトでよく映るM.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 IIもありますが、AF速度や防塵防滴の点でM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO + MC-20の方が安心感のあるシステムです。


数年前から始めた野鳥撮影に関しては、600mm相当ではやや足りないこともありましたが、観察や記録がメインで真剣に作品撮りをしている訳ではないので、手持ちの機材で撮れる範囲で十分だと考えていました。なので、100-400mmを買ったのも勢いというか気の迷いというか……。

実際に手にしてみると、以前はそこまで変わらないだろうと思っていた2本のレンズ(とテレコン)には思ったよりも差があることが分かってきました。現在は野鳥の撮影を考えた際は、重量差が大きなネックにならない限りは(登山で使うなど)40-150mm F2.8 PRO + MC-20を選ぶことは考えられません

実際に使い心地や描写がどう違うのかについて、少し掘り下げてみることにしました。
現在、M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROを持っていて、望遠側を伸ばすのにテレコンか100-400mm F5.0-6.3 ISで迷ってる、或いは既にMC-20を使っているけど100-400mm F5.0-6.3 ISの存在も気になっている…… そんな方にとって少しでも参考になればなによりです。

2本のレンズの使用フィールは結構違う

使っていて楽なのは断然40-150mm F2.8 PRO + MC-20の方。40-150mm F2.8 PRO + MC-20の重量が910g(760g + 150g)なのに対して、100-400mm F5.0-6.3 ISは1120gなので210gの差があります。
重量差だけでなく、鏡筒の太さもかなり違うので(Ø79.4とØ86.4)、鏡筒を手で保持する際にも40-150mm F2.8 PROの方がガッチリ握り込めます。100-400mm F5.0-6.3 ISはレンズ交換やテレコンの抜き差しの際など、しっかりと保持できているか慎重になります。

自分の手の大きさだと100-400mm F5.0-6.3 ISは握り込むことができない

さらに、40-150mm F2.8 PROがインナーズームなのに対して100-400mm F5.0-6.3 ISはズームすると前玉が伸びる仕様。持ち方によっては移動中にズームが伸びてしまうこともあります。このあたりの扱いやすさは40-150mm F2.8 PROの方が良かったです。

AFについてはシビアに比較しなければどちらも軽快で、持ち替えてどちらかがストレスになることはありません。カメラを構えた際に、遠くの被写体、特に小鳥などをスムーズにファインダー内に捉えるのは、焦点距離が伸びるほど難しくなりますが、800mm相当までなら比較的600mm相当に近い感覚で使えるかも。

既に40-150mm F2.8 PROを使っていて、600mm相当よりも長い焦点距離を使うことがないならば、あえて重たい100-400mm F5.0-6.3 ISを使う必要はありませんし、MC-20があれば十分でしょう。

40-150mm F2.8 PRO + MC-20と100-400mm F5.0-6.3 ISの描写を比較

それでは実際に2本のレンズの描写を比較してみます。
左から、40-150mm F2.8 PRO + MC-20の300mm、100-400mm F5.0-6.3 ISの300mm、そして400mm。三脚で撮ってブレのないものを選びました。絞りはF8.0で揃えてますが、開放でも特に大きな違いはありません。ブログ使用サイズぐらいだとそこまで大きな差はないように見えますが……

(クリックで拡大)

40-150mm + MC-20:300mm/100-400mm:300mm/100-400mm:400mm

細かな描写がわかりやすそうな部分を等倍で切り出してみました。中央付近の六角ネジの頭やネジ山の描写を比べるとわかりやすいかも。300mmではほぼ同じか、100-400mm F5.0-6.3 ISの300mmの方が気持ちシャープかか?ぐらい。そこで100-400mm F5.0-6.3 ISの400mmを確認するとネジ頭の数字がしっかり読めているのが分かります。100mm差は思いの外に大きいようです。

(クリックで等倍切り出し)

40-150mm + MC-20:300mm/100-400mm:300mm/100-400mm:400mm

もう少し実践的なシーンでの比較をしてみます。
普段三脚を使った撮影をすることはほぼありませんし、超望遠レンズを使うシチュエーションの大半はカメラ手持ちでの野鳥や昆虫の写真になります。比較のためにレンズを都度交換するのは現実的ではないので、カメラはE-M1 Mark IIIとOM-1を使いました。カメラが違うので厳密な比較にはなってないかもしれませんが、個人的にはよほどの高感度でもないとこの2機種の描写に差はないと思ってます。

早速いい被写体がいました。止まっていて殆ど動かないアオサギの背中。

(クリックで拡大)

E-M1 Mark III, 40-150mm + MC-20:300mm/OM-1, 100-400mm:300mm/OM-1, 100-400mm:400mm

背中あたりの羽毛を切り出してみまっした。300mmの描写に関しては大差ないか、気持ち100-400mm F5.0-6.3 ISの方がシャープ。400mmまでズームするとやはり羽毛の細かなラインが際立って見えるようになりました。100mm差の焦点距離の描写力は最大望遠を使った際に、かなりハッキリと出るようです。

(クリックで等倍切り出し)

E-M1 Mark III, 40-150mm + MC-20:300mm/OM-1, 100-400mm:300mm/OM-1, 100-400mm:400mm

続いてお馴染みのカワセミ。同じ場所からカメラを持ち替えて撮ることができました。ちなみに300mm(600mm相当)でこのサイズにカワセミが写るのは、個人的にはまあまあ近づいてしまったなと感じる距離。警戒される可能性も高く、こちらが不用意な動きをしたら間違いなく逃げます。

E-M1 Mark III, 40-150mm + MC-20:300mm, F5.6, ISO200

やはり400mm(800mm相当)は同じ場所からでもひと回り大きく寄れます。過去、これぐらいのサイズ感で撮りたいと思って不用意に近づいて逃してしまったことが何度もあります。

OM-1, 100-400mm:400mm, F6.3, ISO250

野鳥の写真はトリミングして使うことも多いので、同じ画素数で切り抜いてみました。やはり焦点距離の差が細かな部分の描写の差になっています。嘴の下やお腹のあたりの羽毛の描写を見ると分かりやすいですね。同じ距離から撮ってこの差はやはり大きいと感じます。

E-M1 Mark III, 40-150mm + MC-20:300mm, F5.6, ISO200/OM-1, 100-400mm:400mm, F6.3, ISO250

逆にこの差は求めない。十分な距離を撮って撮るので十分というならば、軽快に使える40-150mm F2.8 PRO + MC-20で何ら問題ないと思います。さらに機材を軽量化したいなら、少々AFは遅くなりますがさらにコンパクトな75-300mm F4.8-6.7 IIを選ぶのも良いでしょう(描写自体は大差ありません)。

超望遠の100mm(200mm相当)差はどれだけ撮影位置に影響するか

同じ距離では長いレンズの方が大きく精細に撮れることについては「それはそう」なのですが、野鳥撮影だとこの差が被写体との距離のアドバンテージになります。長いレンズの方が被写体から離れて撮ることができるので、野鳥を脅かしたり、警戒させる可能性を減らせることができます。

簡単な実験をしてみました。20m以上離れた(Google Mapで測ると30m強なのですが、流石にそこまでないような……?)石の上においたカメラとレンズフードを鳥に見立てて撮影してみました。撮影位置が「A」、被写体がある場所が「B」になります。

まずはA地点から100-400mm F5.0-6.3 ISのテレ端、800mm相当で撮ってみました。カメラとレンズは鳩ぐらい、レンズフードはカワセミぐらいのサイズでしょうか。

OM-1, 100-400mm:400mm, F6.3:Aから撮影

同じA地点から600mm相当で撮ると、当然被写体のサイズは小さくなります。

OM-1, 100-400mm:300mm, F6.3:Aから撮影

では600mm相当の画角のまま、A地点から800mm相当で撮ったときと同じぐらいの大きさで被写体が見える位置(C地点)まで近づいてみることにします。あくまでファインダー内での比較なので正確ではありませんが、2枚の写真を切り替えて確認した分には結構いい線行ってると思います。

OM-1, 100-400mm:300mm, F6.3:Cから撮影

それでは実際にどれぐらい撮影位置が違うか俯瞰で見てみましょう。最初に撮った「A」が手前の石。被写体は左奥に見える石「B」。そして600mm相当で近づいて撮った場所「C」に、緑色のカメラバッグを置いています。A〜Bの距離ですが、歩幅の計測ですが9歩(約6.7m)です。

被写体との距離が変わるとまた数字は変わってくるはずですが、被写体を変えて何度か確認しましたが普段鳥を撮っている距離を目安にするとだいたい9歩の差がありました。
この7m近い距離の差は警戒心の強い野鳥を撮影する際にはかなり大きいです。今までより9歩離れることができれば、警戒されることも減りますし、9歩近づけるなら今までより大きく写すことができます。
個人的には「だるまさんがころんだ」をするように鳥と距離の駆け引きをするのは、鳥にとって好ましいことでないと感じていたので、より遠くからアプローチできることが一番うれしいですね。

ボケの差とかF値とかISO感度、手ブレ補正など

他にも同じ位置からの2本のレンズの野鳥の撮り比べができました。全てテレ端、絞り開放での撮影です。

E-M1 Mark III, 40-150mm + MC-20:300mm, F5.6, ISO200
OM-1, 100-400mm:400mm, F6.3, ISO200

被写体の大きさの他に、背景のボケ具合も結構異なることが分かります。焦点距離が長い方が大きくボケるのは当然ですが、40-150mm F2.8 PROは条件によってはボケが硬くなりがちな傾向があるので、100-400mm F5.0-6.3 ISの方がより柔らかくボケてくれているように見えます。

E-M1 Mark III, 40-150mm + MC-20:300mm, F5.6, ISO500
OM-1, 100-400mm:400mm, F6.3, ISO640

他にも、2本のレンズではテレ端の開放F値が1/3段違うので若干ISO感度に影響することもありますが、正直誤差レベルだと感じます。現在は現像ソフトに優秀なノイズリダクションがあるので、マイクロフォーサーズでも積極的に高感度を使ええるようになりましたし、F5.6とF6.3なら大した差ではないでしょう。

E-M1 Mark III, 40-150mm + MC-20:300mm, F5.6, ISO250
OM-1, 100-400mm:400mm, F6.3, ISO640

手ブレ補正ですが、ボディ側だけで行う40-150mm F2.8 PRO + MC-20に対して、レンズ側補正に(シンクロ補正ではないものの)ボディ側で回転ブレを補正する100-400mm F5.0-6.3 ISの方がテレ端では気持ち効いてる印象。100-400mm F5.0-6.3 ISに持ち替えたことで手ブレが増えたようには感じません(かといって減ったという程でもない)。

マクロ性能はテレコン付きの40-150mm F2.8 PROに軍配

最後に望遠マクロの性能ですが、これはテレコンを装着した40-150mm F2.8 PROの方が、倍率、ワーキングディスタンス共に有利になります。
40-150mm F2.8 PROにMC-20を装着すると、ワーキングディスタンスは本来の最短撮影距離である73cmのまま、最大倍率0.42倍相当が倍の0.84倍相当に上がるので、ほぼマクロレンズ。背の高い花瓶のユリの花も真上から見下ろす角度で撮ることができました。ピントは雌しべの真ん中あたりに合わせているつもり。

OM-1, 40-150mm + MC-20:300mm, F5.6

一方の100-400mm F5.0-6.3 ISはズーム全域で最短撮影距離1.3m、最大0.57倍相当もそれなりに凄いですが、1.3m以内ではピントが合わないので、足元に置いた花瓶の花を撮ろうと思ったらピントが合わずに少し横にズレて撮ることになってしまいました。

OM-1, 100-400mm:400mm, F6.3

1.3mのワーキングディスタンスは身長にもよりますが立って下向きにカメラを構えた状態で、なんとか自分の足にピントが合うぐらい。屋外で足元にある背の低い草や地面の虫を立った姿勢で真上から撮るならば、100-400mm F5.0-6.3 ISでも大丈夫でしょう。
それぞれのレンズを最短撮影距離に合わせた際のワーキングディスタンスの違いを可視化するとこんな感じ。花瓶の足元付近の手前側(中の水の水滴)にピントを合わせています。40-150mm + MC-20の“寄れっぷり”がよく分かります。

100-400mm F5.0-6.3 ISにテレコンを付けて最大撮影倍率を上げる方法もありますが、F値が1〜2段下がることを考えても、そこまで現実的とは思えません。

野鳥撮影は100-400mm F5.0-6.3 ISのみになりそう?

2本の超望遠ズームを比較してみました。どちらが優れているか、使いやすいかについてはケースバイケースになるので、一概に答が出せる訳ではないものの、自分の場合は野鳥撮影で40-150mm F2.8 PRO + MC-20を使うことはなくなりそうです。やはり焦点距離に余裕がある方が、余裕のある撮影ができるますし、いざとなればテレコンでさらに焦点距離を伸ばすこともできます(現実的なのはMC-14まで)。

40-150mm F2.8 PROについては単独、或いは当初のセット売だったMC-14との組み合わせではこれからも使う予定ですが、MC-20を組み合わせて使うことは減りそうです。