登山のお供として愛用している高倍率ズームは「M.ZUIKO PRO 12-100mm F4.0 IS PRO」が文句の付け所のないレンズなのですが、カメラ2台持ちかつ広角レンズをメインで使う場合、サブ機に付けて持っていくには少々重いなと感じることがあります…
そこでもっと軽量コンパクトに設計されている「M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II」を使ってみたいなとTwitterで呟いたところ、状態のいい製品をお譲りいただけるという申し出があり、数度のやり取りの後、私の元にこのレンズがやってまいりました。
早速、GWの立山登山に使ってみたり、先週末にはこのレンズ1本だけ持って奥多摩登山を楽しんできたので、今回はこの新しい高倍率ズームレンズを紹介してみたいと思います。
- OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II
- 実写編①:立山でライチョウを撮る
- 実写編②:奥多摩で滝やビールを撮る
- 実際にM.14-150mm IIで撮ってみてどうだった?
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OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II
このレンズ(以後「M.14-150mm II」と表記)はオリンパスのマイクロフォーサーズ用レンズの中では、スタンダードレンズシリーズに属するものになります。
35mmフィルム換算では28-300mm相当となる10.7倍の高倍率ズームで、オリンパスのMFT用レンズで初期からあったものが、2015年にII型としてリニューアルされたものです。
防塵防滴の軽量高倍率ズームレンズ
同時期発売のOM-D E-M5 Mark IIのキットレンズの1つとしても採用され、デザインもOM-D世代に合わせたPREMIUMシリーズ辺りの流れを汲むものとなっています。
I型からのリニューアル時の大きなトピックは防塵、防滴に対応したこと。その他、逆光耐性をアップさせるZEROコーティングも施されています。
MFTの高倍率ムーズはこのレンズの他にパナソニックのLUMIX G VARIO 14-140mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S.、タムロンの14-150mm F/3.5-5.8 Di III Model C001がありますが防塵防滴が採用されているのはオリンパスのみ(ただし、広角側の開放値がやや暗め)。
開放でF4.0からF5.6という明るさは普段使いには少々暗めなものの、OM-Dの手振れ補正と組み合わせれば十分に実用レベルですし、なにより本体重量285gという驚異的な軽さは旅行やアウトドア携行時に大きな魅力です。
私が普段使っているM.12-100mm PROと並べてみてもこのサイズ差です。
ダブルズームキットの望遠ズームとしてもお馴染みの「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0-5.6 R」とはズーム側のスペック(150mmでF5.6)がほぼ同じですが、本体サイズはこの通りほぼ同じ。「ダブルズームキットとは一体?」となってしまいます(笑)
軽量コンパクトで気軽に使える正に「便利ズーム」
このM.14-150mm IIを手に入れて早速登山のお供に使っているのですが、このレンズのコンパクトさ、軽さはこれまで使ってきたレンズとは別次元です。
試しにE-M1MarkIIにこのレンズ1本だけを付けて山に入ってみましたが、いつも(カメラ2台+PROレンズ2本)との違いに笑ってしまえるレベル。
じっくり腰を据えて撮影するならば別ですが、登山中に足を止めてサクサクと写真を撮っていくようなスタイルには最適な選択肢のひとつかもしれません。
また、この手の高倍率ズームの例に漏れずテレ端ではかなりレンズ先端が伸びてしまいますが、歩いている最中に勝手に鏡筒が動く(伸びる)ようなことはありません。
実際に使ってみた感想ですが、これまでに歩いたことのあるコースや、写真的にそこまでの目新しさを求めない山行ならば、このセットで全く問題ないように感じます。
さて、外観や基本スペックのチェックはこの辺にして、早速このM.14-150mm IIを使って撮影した写真を見ていきましょう。
実写編①:立山でライチョウを撮る
- カメラ:OLYMPUS OM-D E-M1(初代)
- レンズ:OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II
GWに立山の周回ルートを歩いた際ですが、初めて歩くコース、さらに広大な立山を撮るには広角がメインになると考えM. 7-14mm PROを付けたE-M1 MarkIIをメイン機に、もしも雷鳥に遭遇できたときの保険的にM.14-150mm IIを付けたE-M1をサブ機として携行しました。
結果的にはこのM.14-150mm IIが次々に現れる雷鳥の撮影に大活躍してくれました。
次の写真は望遠端の150mmでノートリミングのもの。多少絞っていますが、画面隅の尾羽までかなり綺麗に描写されています。結構よくないですか?
こちらは135mm。羽毛1本1本の描写も繊細です。これが大きな望遠レンズでなく、300g弱のコンパクトなレンズで撮れてしまうのですから「便利ズーム」なんて言葉で呼んでしまっては失礼なぐらい!?
こちらは少し上と右側をトリミング、左端などは元々の画面隅のままですが、雪の粒も流れることなくしっかり記録されています。
雷鳥に何度も遭遇できたのは運も大きいですが、それぞれのタイミングで常に300mm相当の望遠レンズを持っていたことは非常に大きいです。
他にも10.7倍ズームレンズならではの広角端14mmと望遠端150mm。極端な例ですが、この間の画角が全て使えるというのは、見せたい光景、切り抜きたい景色、強調したい被写体等々、表現の幅は自由自在です。
同じ場所からこの2枚が撮れることによる、構図の可能性はもう無限ですよね。
実写編②:奥多摩で滝やビールを撮る
- カメラ:OLYMPUS OM-D E-M1 MarkII
- レンズ:OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II
続いて、先週末は1年振りに奥多摩の海沢探勝路から大岳山に登ってきたのですが、これまでも歩いたことのある山、ルートということもありM.14-150mm II 1本のみでどれぐらい使えるのか試してみることにしました。
やや微妙な構図もありますが、どの写真もトリミングは行っていません。
奥多摩駅から登山口のある海沢園地へは途中からやや荒れた舗装路を1時間ほど歩くのですが、そんな道沿いからも美しい渓流を楽しむことができます。
道端から離れたところにある花、水面に浮かんだ葉を150mmで引き寄せてみたり…。
E-M1なら三脚を使わずに滝も撮れる… と思いましたが周辺が盛大にブレていますね。これはレンズ性能でなく私の性能のポンコツさ故。
この日は水辺で滝の飛沫を浴びたり、うっかり濡れた石で足を滑らせて転んでしまったりもしたのですが、そんな際にもOM-Dと併せて安心の防塵防滴に助けられました。
滝の全景と最上部のアップ、この2枚を瞬時に撮り分けられるのは高倍率ズームならでは。
大岳山の山頂からは春霞の空にしては富士山がよく見えた日でした。先日の低気圧で富士山の冠雪がまた少し増えましたね。
あまりボケ表現が得意なレンズではありませんが、望遠側を使えばそれなりにボカすこともできます。PROレンズ程は寄れないのでハーフマクロには届きませんが、それで0.44倍相当の接写が可能です。
描写の甘さが気にならない訳ではありませんが、絞れば多少は解消しますしブログの山行レポに使う用途ならば十分な力はあります。
登山後は奥多摩駅近くのバテレというブルワリーにて美味しいクラフトビールを楽しみました。最短撮影距離は50cmとマイクロフォーサーズ用のレンズにしては少々長めですが、テーブルフォトだってこの通り問題ありません。
私のスタイルだともう少し広角が欲しい用途も多いのですが、一般的には28-300mm相当という画角はほぼ万能と言っていいでしょう。
実際にM.14-150mm IIで撮ってみてどうだった?
まず、正直に書いてしまうと比較テストをするまでもなく、普段使っているM.12-100mm PROと比べてしまえば基本性能は落ちるように感じます。感覚値ではありますが、以下のような感想になります。
- 描写があまりシャープでない:M.12-100mmよりも明らかに甘く感じる
- コントラストが低いのか色ノリが甘いというか、ややくすんだように(?)感じる
- 望遠側での周辺減光がそこそこにある:1段絞った程度では解消せず
- AF速度:遅くはないけど速くもない
- 思ったよりも寄れない:最短撮影距離50cmはMFTにしては寄れない
かなりネガティブな感想が並んでますが、あくまでM.12-100mm PRO比でのこと。価格にして倍以上違うレンズなので、まともに勝負して適うはずもないのですが、使う以上は覚悟しておいた方がいいことなのであえて書いておきました。
PROレンズの描写を求めるならば、素直にM.12-100mm PROを使うべきでしょう。
それでも使いたくなる圧倒的な軽さ、コンパクトさ
そんな描写性能に少々目をつぶっても、M.14-150mm IIの軽さ、コンパクトさ(もちろん防塵防滴も)は圧倒的魅力です。M.12-100mm PRO比で重量は丁度半分。さらに望遠側は200mm→300mm相当までアップするのです。
上で貼った写真を見ても分かるように通常の用途、記念写真やブログで写真を貼る位ならば十分な性能を持っています(そもそもMFTはスタンダードレンズの性能が高い)。
私の用途ならば「広角がメインになりそうだけど、念のため望遠側も欲しい」という用途でかなり出番が増えそうですし、「撮影はあまり力を入れないけど、コンデジやスマホよりいい写真を残しておきたい」なんて山行や旅行にもピッタリでしょう。
結局は道具なので適切なシーンに合わせた使い分けをしてこそ。同じ高倍率ズームでもM.12-100mm PROとは全く性質の異なるレンズとして、これから私のシステムの中で大いに活躍してくれそうなアイテムだと感じています。
そして、改めて(E-M1よりも軽量な)E-M5 Mark IIとこのレンズのキットは、旅行や登山のお供に最適だと感じますし、このレンズの弱点を補うべく星の撮影やここ一番の風景描写のためにM.ZUIKO PREMIUMの12mm単焦点(又はパナライカ15mmなど)あたりを組み合わせてみると、かなり隙のないコンパクトなシステムが完成しそうすね。