パナソニックの高倍率コンデジ「LUMIX DC-TZ99」を手に入れてから3ヶ月の間に1万枚以上撮影しました。良いカメラだと思う一方でこれはちょっと……と思う部分なども見えてきたのでまとめました。

令和の高倍率コンデジは一周まわって新鮮!?
LUMIX DC-TZ99は35mm判換算で24mmから720mm相当の広い画角をカバーする、高倍率ズームレンズを搭載したコンパクトデジタルカメラ(高倍率コンデジ)です。発売は今年の2月、自分は今年の5月から使っています。

購入直後の大まかな製品紹介、ファーストインプレッションと、望遠域中心のレビュー。
価格はパナソニックの指定価格制度によるものか64,350円(税込)で統一されていましたが、現在一部のECストアでは6万円を下回る販売価格で売られているようです。
高倍率コンデジはかつて多くのカメラメーカーが作っていたジャンルですが、現在は一部のメーカーが作るのみで市場に安定供給されている機種となると、唯一とも言える選択肢になっています(※キヤノン PowerShot SX740 HSは長らく受注停止状態でしたが、今年の8/1より販売を再開しています)。
2025.10.13現在の価格コム「デジタルカメラ」ジャンルより。LUMIX DC-TZ99、ニコン COOLPIX P1100(ネオ一眼タイプ)、キヤノン PowerShot SX740 HSが小型撮像センサーの高倍率コンデジ。
【価格.com】デジタルカメラ | 通販・価格比較・製品情報
キヤノン「PowerShot G7 X Mark III」「PowerShot SX740 HS」の受注が再開 - デジカメ Watch
高性能なカメラを内蔵するスマートフォンを誰もが持つようになり、ほぼ絶滅状態となった小型撮像センサー(1/2.3型等)のコンデジですが、薄型のスマホに搭載することが難しいのが望遠域のレンズ。例えば最新型のiPhone 17 Proの望遠カメラでは48MPの高画素センサー(約1/2.55型)からのセンサークロップで200mm相当の画角を実現してますが、どれだけ高度な画像処理を用いても、デジタルズームとなる超望遠域では画質の低下は否めないでしょう。
新製品レビュー:Apple iPhone 17 Pro - デジカメ Watch
現在のスマホカメラと同クラスの撮像センサーを持つコンデジを比較した場合、超広角から標準域に掛けては明るい単焦点レンズと高度な画像処理により、描写性能も暗所性能も現在のスマホカメラの方がコンデジの性能を明らかに上回っているのですが、光学ズームによる(35mm判換算400〜600mm相当を越える)超望遠域が手に入ることは高倍率コンデジに残された唯一の強みです。


一度は廃れてしまったと思われた小型センサーのコンデジですが、今になって使ってみると一周まわってなんとも新鮮な体験です(令和の最新カメラとして手ぶれ補正やAF性能は進化もしているので、かつての高倍率コンデジよりも明らかに使い勝手は良いです)。
自分の使い方だとこの夏は自転車で移動しながらの記録に活躍してくれたのですが、コンパクト故のメリットはもちろん、撮影した写真をブログに掲載する際に、同じカメラで広角から超望遠まで撮影していることで色味や質感が揃うこともあり、スマホカメラで撮った写真よりもDC-TZ99の写真ばかり使っていました。
DC-TZ99のここが微妙
そんなDC-TZ99ですが、使っているうちに「ここはちょっとなぁ……」と感じる部分もチラホラ出てきました。そんなDC-TZ99の微妙なポイントを3つピックアップ。といって致命的な問題点という程ではなく、気になる人もいると思いますが、人によっては許容範囲だったり大して気にならないかも?
- 起動に比べてワンテンポ遅れる電源オフ
- 手前の小さな被写体に合わないコントラストAF
- やっぱり画質は小センサー機
起動に比べてワンテンポ遅れる電源オフ
DC-TZ99を最初に使った際、レンズを大きく繰り出す高倍率コンデジにしてはスムーズな起動速度だと思いました。決して速くはないものの、電源ボタンを押してすぐにレンズの繰り出しが始まります。

一方で電源オフの際はボタンを押してから画面がブラックアウト(LUMIXのロゴが表示)してレンズが収納されるまで、ワンテンポ遅れて反応します。ストップウォッチアプリでの手動計測の平均ですが、起動(ボタンを押してからLV表示まで)は約1.6秒に対して、電源オフ(ボタンを押してから画面表示が消えるまで)は約3.2秒と、倍近い時間が掛かります。動画で比べてみるとこんな感じ。
カバン等から取り出しての撮影まではスムーズでも(ボタンを押しながら取り出す動作になるので)、撮り終えてすぐ片付けたくてもレンズが引っ込むまで数秒待たされることになります。
またボタンの電源は常に正確に操作できる訳ではなく、うっかり2度押ししてしまったり、起動しているのにうっかり電源を押してしまったりと、ミスでオンオフを繰り返してしまうストレスもあります。
撮影データや設定の保存があるので電源オフまでタイムラグが発生するのは仕方ないにしても、オンオフ動作がノールックで確実に行えるメカニカルスイッチだったらそこまで気にならないのに…… と久しぶりに同じLUMIXのGF10を使って感じました。
手前の小さな被写体に合わないコントラストAF
これはDC-TZ99に限らずコントラストAFのLUMIXカメラ全般(GM1やGF10も、過去使ったGX7系も)に発生するのですが、手前側の小さな被写体、花や草などになかなかピントが合わない。近い距離の大きな被写体に一度合わせてみても、再度AFをさせると背景側にピントが抜けてしまい、そうすると戻ってこない。



これは小さな昆虫や植物を撮影していると頻繁に発生しますし、せっかく近くに止まってくれた虫や鳥を撮影したくても、ピントが合わないままアレコレしてるうちに飛び去ってしまうようなことも。

落ち着いていればMFに切り替えてピントを手前に持ってくるのですが、咄嗟に対応できないこともあり、なかなか合ってくれないAFにストレスを感じながら時間が過ぎて行くという……。

コントラストAFの癖だとは思いますが、抜けたピントを一発で最短距離なり指定した距離に戻す機能(或いはフォーカスリミッターなど)とかあれば良いのにと思ってしまいます。
やっぱり画質は小センサー機
これは仕方がないことですが、画質はやはり小型センサーのコンデジ。レンズにしてもこのサイズで光学30倍ズームというのはかなり無理をしている訳で、画質についてはそれなりです。広角や標準域では同等クラスからより大きな撮像センサーを搭載していて、高度な画像処理を行う今どきのスマートフォンには単純な絵の綺麗さでは全く敵いません。
また720mm相当の超望遠と聞くと凄いですが、実際の焦点距離は129mm。例えばマイクロフォーサーズのミラーレスカメラの100mmを同程度までクロップした写真と解像感やボケはかなり近く、高感度ともなればノイズでも不利になります。


センサーや画像処理エンジン、レンズの大きさも全く違うので画質で比較するのはナンセンスですが、例えば登山などで一眼レフやミラーレスカメラの望遠を補う用途で検討しているならば、同程度の焦点距離のズームレンズをクロップした場合と変わらないこともあるので(クロップに耐えられる画素数があるかはまた別)、小型センサー機の性能を見誤らずに使うべきでしょう。



自分の場合はDC-TZ99は荷物を減らしたい際に単独で使うか、ミラーレスカメラと併用する場合には超広角や超望遠ズームなどの極端な焦点距離を使う際のサブ機として使うことが多いです。
ちなみに以前の記事でも書きましたが、DC-TZ99では光学ズーム以外の「EX光学ズーム」「iAズーム」「デジタルズーム」は使っていません。EX光学ズームはJPEG記録サイズを下げるクロップズームですし、その他もJPEG記録でのみ使えるデジタルズームなので、RAW現像を前提としているならば使う理由がありません。
DC-TZ99のここがナイス
ネガティブなポイントだけではなんですし、今度はDC-TZ99を使っていて「これは良い、便利!」と感じた機能や性能についても同じ数ピックアップします。
- ステップズームでスムーズな焦点距離の切り替え
- 超望遠の画角からボタン1つでズームバック
- マクロも強くて自然撮影に最適
ステップズームでスムーズな焦点距離の切り替え
ステップズームは特に珍しい機能ではないと思いますが(昔使ってたRICOH CX5にもあった)、24-700mm相当の間のズームレンジをよく使う(単焦点レンズでも設定されやすい)焦点距離ごとにスムーズに移動する機能。具体的には[24mm - 28mm - 35mm - 50mm - 70mm - 90mm - 135mm - 160mm - 200mm - 250mm - 300mm - 400mm - 500mm - 600mm - 720mm相当]の15段階(10段階ぐらいで十分な気もしますが)。


ズームレバーによるズーム操作だけでなく、レンズ部のコントロールリングに割り当てることでパワーズーム(電動ズーム)レンズのような操作でズーム域の切り替えができます。
レンズ交換式カメラに慣れていると、標準、中望遠、望遠のおいしい画角が一発で出せて便利に感じますし、レンズ交換式カメラを使ったことがない人が、焦点距離の感覚を身につけるにも良い機能かもしれません。
「広角で寄るより一歩引いて標準で撮れば歪みが少なくなる」とか「望遠域の圧縮効果」なども具体的な焦点距離で感覚を掴めるので「離れた被写体をを大きく写すだけが望遠レンズの役割ではない」なんてことも実感しやすいでしょう。
超望遠の画角からボタン1つでズームバック
DC-TZ99はコスト削減のためか前世代のDC-TZ95/95Dが搭載していたファインダー(EVF)が消えています。そのせいか、DC-TZ95世代の中古が10万円以上に高騰する逆転現象が起こってしまっていますが、消えてしまったものは仕方ありません。
コンデジに小さなファインダーが必要かはともかく、ファインダーを使うと視線とカメラの向きを一直線に構えやすいことは感覚的に理解できると思います。特に超望遠の狭い画角に一発で被写体を捉えることは、ファインダーのないライブビューモニターのみのカメラでは大変です。
そんなときに便利なのが、Fn2ボタンに割り当てられている(割り当てボタンは変更可能)ズームバック機能。ズームバックボタンを押すと画角が広角にグッと広がる(ズームバック)ってボタンを離すと元の画角までズーム。これによって狙ったポイントをスムーズに画角内に捉えることが可能になります。


ズームバックの動作はこんな感じ。最初にズームレバーの操作(右手人差し指)で広角端から望遠端までズームアップした後、親指でFn2ボタンを押してモニター画面がズームバックする様子です。
マクロも強くて自然撮影に最適
DC-TZ99の最短撮影距離は広角側で0.5mですが、マクロモードに切り替えると24〜50mm相当の間で0.03mとなります。つまり50mm相当で最もクローズアップした撮影ができることになります(それ以上ズームすると最短撮影距離は0.15mに下がり、望遠端で2m)。


マクロ撮影に強いのは小センサーの強みのひとつですが、スマホカメラに多い広角マクロではなく標準画角で最も接写ができるので、適度なワーキングディスタンスを稼ぐことが可能になります。超望遠からマクロまで強いDC-TZ99は自然観察全般で活躍してくれます。

夜間のセミの羽化。これまではOLYMPUS TGシリーズを使っていたようなシーンですが、DC-TZ99のマクロ性能でもここまで寄ることができました。画角は50mm相当ですが手ぶれ補正の効きも良いので、LEDライトを当てながらのカメラ片手持ちで簡単に撮ることができました。

もちろんDC-TZ99の良い部分はこれだけではなく、電池持ちの良さ(スナップ撮影で1000枚以上撮れることも)、よく効く手ぶれ補正、RAWデータでの記録(AdobeのAIノイズ除去を使えば高感度もそれなりに見られる仕上がりに)などなど。
スマホでは撮れない超望遠域まで撮りたいけど、嵩張るミラーレスカメラを持ち出す程でもない…… そんな隙間に見事に収まってくれるカメラだと思います。
画角別の作例
最後にこれまでDC-TZ99で撮影した写真で、以前のレビュー記事では載せていないものをいくつかまとめておきます。
普段のブログ記事で使う際は適宜トリミングしていることが多いので、ここでは全てトリミングをしてない写真を掲載します。
【24mm相当】


広角側はスマートフォンのカメラの方がよく写っていることが多いのですが、いざPCモニター上で比較すると、色味やシャープネスなどどうしても“スマホカメラらしいわざとらしさ”が気になってしまい、DC-TZ99の写真を採用することが多いです。
【35mm相当】



【50mm相当】


【70mm相当】



【90mm相当】

【300mm相当】


【600mm相当】

【720mm相当】





発売からしばらくは品薄状態が続いていたDC-TZ99ですが、ようやく市場在庫も安定してきたようです。暑かった夏もひと段落して、過ごしやすい季節がやってきました。紅葉や行楽旅行のお供として、高倍率コンデジを手にスマートフォンでは撮れない写真を楽しんでみてはいかがでしょう。


