先日、富士山に登った際、標高3,050mにあるわらじ館(山小屋)の前から明け方にご来光を見ていたのですが、その際70%以上残量のあったミラーレスカメラSONY α7の電池残量表示が突然空表示になるということがありました。
電池を一旦撮りだして手で温めてから再投入すると復活するのですが、しばらくするとまた同じ表示に…。このときは電源が落ちることはありませんでしたが、この程度の気温(恐らく0℃前後)でデジカメのバッテリーにこれほどの影響が出た経験は始めてのことなので、改めて自宅で確認してみました。
※テストとしては非常にアバウトなものなので、あくまで参考程度にご覧ください。
α7を冷凍庫に入れてみる
その確認方法ですが、α7を自宅の冷凍庫に突っ込で、強制的に寒冷地を再現!? 先日富士山で起こった症状が再現するか、確認することにしました。なんて酷いオーナー!
バッテリーはフル充電状態の純正バッテリー(NP-FW50)を使います。NP-FW50は所謂「インフォリチウム」のリチウムイオン電池。単純な電圧変化のみで容量のチェックを行うタイプではない、1%刻みで残量が表示される充電池だそうです。
インフォリチウムシステム - Wikipedia
インプレスブックス - 本、雑誌と関連Webサービス
冷凍庫内の温度は恐らくマイナス20℃位?(それ位が冷凍庫の標準だったと思います)。確認のために何度も冷凍庫を開け閉めしていたので、中盤から庫内の温度は一定でなかったと思われますが、だいたい冬山や冬の北海道などに近い氷点下の環境です。
レンズは必要ないかもしれませんが、シャッターを切るなどの動作確認を行うので単焦点レンズのSEL50F18Fに協力して貰いました。
ちなみに、α7の仕様を見ると動作環境や使用可能温度については記載されてなく(録画時間について20℃以上の記載があるのみ)、メーカー的にも氷点下環境などでの使用はあまり想定してない製品だと思われます。あくまで、私の使用環境を想定した上での無茶なテストになるので、その辺は留意した上で読み進めてください。
α7 主な仕様 | デジタル一眼カメラα(アルファ) | ソニー
しばらくは特に問題なかったのですが…
まずは一気に本体の温度を下げるため30分程連続して冷凍。そこから電源を入れっぱなしの状態にして、数分おきに冷凍庫のドアを開け、シャッターを数枚(10枚前後)切ってバッテリーの残量表示を確認します。
それからしばらく特におかしなことはなく、10数枚シャッターを切ると残量表示が1%ずつ減っていく正常な状態。富士山のことを考えたら、とっくに症状が出てもいい頃ですが…
突然あの症状が発生
そう思い始めた頃、残量95%の表示を確認した後、数枚シャッターを切った所で突然電池「残量なし」の表示に変わりました。私が富士山で遭遇した症状はまさにこれと同じもの。
リチウムイオン電池が低温時に電圧低下によりパフォーマンスが低下するのは知っていますが、残り100%に近い状態からいきなりここまで下がってしまうのは恐らく初体験(オリンパスのOM-D E-M1 MarkIIでも寒冷地で10〜20%程度容量が低下するのは経験済です)。そして「インフォリチウム」の残量表示のチェック基準はどうなっているのでしょう…?
この状態からもしばらくシャッターを切ることができるのですが、どれだけ持つのは分かりませんし、実際にフィールドでこの表示になってしまったら気が気ではありませんね。
あくまで私が所有している初代α7での結果ですが(バッテリー劣化の可能性なども考えられますし)、実際に山で発生して自宅でも再現したということは、当然これからの季節、フィールドで起こる可能性が高いと考えるのは妥当です。
このアホな作業をTwitterで実況していたこともあって、実際に冬山でα7 IIを使ってるユーザーの方からもコメントを貰ったのですが、やはりこれと同様の症状が発生し、さらにしばらくすると電源が落ちてしまうことがあるそうです。
じきに電源つかなくなるんで、ぼくは胸ポッケに白金カイロと予備バッテリー入れといて切れ次第ローテーションしてます。しぬほどめんどいです(
— まだら牛🏔🎲 (@m_Usi) 2017年9月13日
一旦電池をカイロなどで抜いて温めることで復活するようですが、できれば冬山でそんな作業はしたくありません(手袋を外したくない環境なことも多いのです)。
バッテリーグリップを装着して試してた所…
さらに、一縷の望みをかけて今度はバッテリーグリップ(縦グリップ)に電池を移して(電池を2個入れた状態で)冷凍保存を続行します。やはり数分おきに冷凍庫を開けて、シャッターを切るテストを続けてみました。
すると、なんとバッテリーの残量表示はいつまでも正常なまま。毎回10数枚のシャッターを切るので徐々に残量は減っていきますが、これは正しい動作です。先ほどのように突然空の表示になることはありません。
結局、最初のテスト開始から2時間半以上も大事なカメラを冷凍庫に入れることとなってしまいましたが(アホ)、バッテリーグリップを装着してからは最後の段階まで電池残量が突然なるなくような表示異常は発生しませんでした。
もちろんこの結果だけから、即「α7の寒冷地対策としてバッテリーグリップは効果的!」と断言できる訳ではありませんが、少なくともグリップなしの状態でα7を使うよりは、何かしらの対策になると考えてよいかもしれません。
バッテリーグリップを使うと何が違うのか?
正直なところ、外気温の断熱対策としてボディ内とバッテリーグリップ(しかも格安の互換品です)で違いが出るとは思いませんでしたが、電池ボックスの内部を見てみると、ボディ側は半分位が金属パーツになっているのに対して、バッテリーグリップはプラスティック製のステーを介して、さらにその周りもエンプラで囲った構造となっています。
もしかしたら、外装を含め金属パーツが多く使われているボディ側は、電池ボックスまで外気温が伝わりやすいのに対して、バッテリーグリップ使用時は、電池本体の温度が極端に下がりにくくくなっているのかもしれません。
また、「インフォリチウム」の残量チェック機能についても直接バッテリー側の端子が触れているのでなく、バッテリーグリップを介していることもあり、ボディ側で取得する情報に何らかの差違が発生している可能性があるのかもしれません。
どちらにしても詳細は定かではありませんが、経験則としてα7を寒冷地で使う場合にはバッテリーグリップを使った方が安心できそうなことは分かりました。
ちなみに私が使っているα7用のバッテリーグリップですがSONY純正のVG-C1EMでなく、ロワジャパンの互換品です。純正品で同じ結果が出るのかも全く分かりません…。
その他、三脚などを使用して一箇所でじっくりと風景撮影を行うような場合ならば、以下のような機器を使ってモバイルバッテリーなどから直接電源供給する方法があるようです(星景撮影やタイムラプスのときは捗りそうですね)。Amazonのレビューには実際にα7シリーズで使用している方の声もあるので、参考になるかもしれません。
私の場合は行動中のスナップ使用がメインなので、この機材は使えないのですけども。山行でのカメラ携行にバッテリーグリップはちょっと邪魔…?
なんとなく秋冬の登山に向けてα7を使えそうな雰囲気にもなってきましたが、バッテリーグリップ使用時にはちょっとした問題(?)もあるのです。
ボディの重量増については正直大したはないのですが(どうせカメラ2台持っていきますし)、サイズ増、というかカメラボディ正面の形状が正方形に近い形になってしまうことで、現在メインで使っているパーゴワークス フォーカスなどのバッグにかなり入れにくくなってしまうのですよね…。
さらに、行動中に多様するカメラホルスター(b-gripやキャプチャープロなど)に装着した場合、グリップ未装着時に比べてバランスが悪くなってしまうこと。特に重量のあるレンズを装着している場合は、歩行時のショックでかなりカメラが振られることになります。
以前はSEL2870という軽量の標準ズームレンズを使っていたので、グリップ装着時でもそこまでカメラが振られることはありませんでしたが、最近手に入れたSEL1635Zとなるとどうなるか…? やや不安ではありますが、実際にフィールドで試しながらベストな方法を探していければと考えています。