多摩川のいきもの観察エリアを少し広げようと思い、福生市とあきる野市の間に掛かる「睦橋」周辺を訪れました。1本にまとめていますが2回訪れた際の記録をまとめています(写真の天気が違う)。
- 多摩川緑地福生南公園
- 睦橋の上から多摩川を眺める
- 水鳥公園〜九ヶ村用水取水口跡
- 昭和用水堰
- 昭和用水(立川用水・立川堀)、拝島給水所、ハケ沿いの水路
- 多摩川横断水道橋と不思議な造形の河原
- 西部6号排水樋管と信玄堤
多摩川緑地福生南公園
最初の拠点にしたのは福生市の多摩川緑地福生南公園。
多摩川左岸の河川敷にある細長い公園で、芝生の広場や子どもの水遊び施設、周回ジョギングコースやテニスコート、バーベキュー施設などを備えた公園です。





園内の案内図にはJR五日市線の熊川駅が最寄りとなっていましたが、拝島駅も同距離で道も一直線、青梅線と西武線が通じてますし、そちらの方が便利だと思います。
トイレは園内に3箇所あり、入口付近には管理事務所も。駐車場は臨時駐車場含め3箇所ありますが平日は利用者が少ないためか、入口付近の駐車場のみ開放されていました。


公園の北側には睦橋と睦橋通り、拝島駅から武蔵五日市駅まで五日市線の南側を並走している四車線道路。
多摩川の対岸、あきるの市側には巨大パチンコ屋やKICの物流倉庫。
川に出られそうな場所には秋川漁協による看板がそこかしこに。アユのルアー釣り(友釣りのおとりアユの代わりにルアーを使う釣り。結構流行っているみたい)可能エリアだそう。


公園からすぐに出られる多摩川の流れ。メインの澪筋は中州を挟んで左岸寄りにあります。
公園に沿って多摩川と反対側を流れている「下の川」。左岸はすぐ段丘崖になっていて、その上は拝島面。青柳面などと同じく立川面の中で発生している段丘の1つです。
熊川分水の水を合流し(どうどうの滝)、公園の敷地に沿ってカーブして多摩川に流れ込みます。
睦橋の上から多摩川を眺める
さて、公園の上流側の睦橋も見て見ましょう。
睦橋のたもとにある石碑に『伊那宿から江戸へ向かういな道の「熊川の渡し」があり』と記述がありますが、長野の伊那のことでなく、五日市の東あたりにあった宿場町だそう。
睦橋には公園側から直接上がる階段もあります。
低水護岸のすぐ横が多摩川緑地福生南公園ですが、この辺りは段丘崖が隣接しているせいか左岸堤防は特にないようです(もう少し下流に行くと多摩サイ沿いに左岸の堤防が現れます)。
睦橋の上から見た多摩川下流側。写真の右側に見えているのが澪筋ですが、左岸寄りにも先程見た流れが隠れています。
正面奥が左岸の滝山丘陵。右側の森の奥から秋川が合流しています。
橋の下に澪筋から切り離された細長い池「くじら池」があります。ググってみるとヘラブナやバス釣りで人気の池みたい。
くじら池から下流には広大な緑地が広がっています。この奥が多摩川と秋川の合流点、所謂「多摩川トライアングル」になります。
睦橋を渡ってくじら池の上流側はヘラ台で埋め尽くされていました。
水鳥公園〜九ヶ村用水取水口跡
今度は多摩川緑地福生南公園の下流側。先程の「下の川」を渡ると福生市から昭島市になります。隣接しているのは「水鳥公園」。
振り返るとようこそ福生市。
水鳥公園を過ぎるあたりから左岸の段丘崖が離れて行くので左岸に堤防が現れ、何やら古い取水口の跡のようなものが見えてきました。
「九ヶ村用水取水口跡」。九ヶ村用水(くかむらようすい)は江戸時代の用水路で、現在の昭和用水(立川用水・立川堀)の前身。村山・山口貯水池の完成後に多摩川の水量が減り、1933年に現在の昭和用水堰の場所に堰と取水口が移動したことで役目を終えた古い取水口の跡。
堤防の外と内側。
左岸の堤防を進むと青いフェンスの構造物が見えてきました。
昭和用水堰
大きな取水堰がありました。「昭和用水堰」です。
多摩川に8基ある主要な堰では上流側から3番目の取水堰。府中市の大丸用水堰(既に堰ではない)からは日野用水堰の次にあり、左岸側から昭和用水への取水を行うための取水堰です。現在のコンクリート製の堰になったのは1933年のこと。
左岸側に短い可動堰があり、長いコンクリート製の固定堰の左岸寄りにハーフコーン型の魚道が設定されています。
右岸側の滝山丘陵の上から見た昭和用水堰。以前はあまり気にしてなかったけど、堰にも色々な形状、仕組みがあって面白いかも。近所の大丸用水堰は堰でなくなってしまったけど、昔から周辺の村々に農業用水として利用されてきた多摩川、取水堰にも多様性があります。
昭和用水堰の周囲でしばらく生きもの観察。堰の上は水が滞留して緩やかな流れ、堰の下には澪筋から切り離されたプールなどもあり、数種類の鳥やトンボ、魚などを見ることができました。
堰を流れていく水、対岸には滝山丘陵。床止めのブロックは長年の摩耗ですっかり角が丸くなっています。
右岸側に設けられた可動堰。
昭和用水の取水口。
昭和用水(立川用水・立川堀)、拝島給水所、ハケ沿いの水路
堤防の外に取水された水が流れて行きます。
「一町二箇村用水樋管」のモニュメントと解説。九箇村用水の取水口が現在の場所に移動したのが1933年、九ヶ村が1町(立川町)と2ヶ村(拝島村、昭和村)になったため、名前を「一町二箇村用水」に改めたそう。旧水門は2001年まで使われていたそうなので、比較的最近のことですね。
拝島緑地広場の横を流れて行く昭和用水。
昭島四小前の交差点で道路に沿った用水路に。
隣の建物は「東京都水道 拝島給水所」。昭和用水から引き込んだ水を玉川上水路へ送るポンプ所の役割もあるそうです。
東京都水道局拝島給水所(拝島給水所、拝島原水補給ポンプ所)
拝島給水所は、南多摩西部地区への送水を行うため、平成18年に運用を開始しました。東村山浄水場及び小作浄水場で浄水処理された水を、多摩丘陵幹線及び八王子線の2系統で八王子市の各給水所及びポンプ所へ送水しています。送水された水は、八王子市、多摩市及び町田市の各ご家庭へ給水しています。
拝島原水補給ポンプ所は、羽村取水堰の下流約 6.5キロメートルに位置する昭和堰で取水した原水を、玉川上水路へ補給しています。
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kankyo/r6_haijima_watersupplystation
拝島給水所の裏に回ってみるとこちらにも水路が流れています。
こちら側の門には「拝島原水補給ポンプ所」と。
水路の上流側には枯れた用水路の跡と、かつて用水路に水車が設置されていた解説と石碑がありました。以前はこちら側が昭和用水の水路だったのでしょうか。



拝島給水所裏手の水路は段丘崖沿いになっています。
ハケ沿いの水路には錦鯉が放され親水公園的に整備されています。
段丘崖から流れ込む湧水は「龍津寺の湧水」(東京の名湧水57)だそう。
ハケ沿いの水路はすぐに暗渠になりますが、しばらく先でまた開渠になったり、分岐しながら昭島市内を流れて行きます。
そんな住宅内の開渠のひとつ。
こちらは拝島給水所の正面?側を流れていた昭和用水。昭島市、立川市を流れ現在も農業用水として活用されています。
この日の昭和用水はここで切り上げましたが(近くのセブンイレブンでの休憩が主な目的でした)、最終的に残堀川の残堀川大滝の少し下流で流れ込んでいます。
多摩川横断水道橋と不思議な造形の河原
さて、多摩川の堤防に戻ってきましたが、かっこいい水道橋がありました。「多摩川横断水道橋」。
低水路に下りて行けそうなので……
多摩川の河原に出ました。
この辺りは河原が一面の粘土質?で、水の流れに侵食された不思議な造形が見られました。
ここ、水面に突き出してる下は完全に空間(というか川)ですからね。上に乗ったら折れてしまいそう。というか自分の足元が大丈夫か不安になる。
そんな不思議な地質が下流に続いています。
川の中にも削り残されたオブジェ。
「牛群地形」と呼ばれる珍しい地形がここから4kmほど下流に分布しているそうですが、それと似たようなものなのでしょうか。牛群地形、初めて知りましたがこちらも面白そうなので今度見に行ってみようと思います。
牛群地形 - Wikipedia
牛群地形(ぎゅうぐんちけい)とは、多摩川中流域の、川の流れに沿うように河底が削られた地形を指す。削り残った細長い高まりが牛の群れ、またはクジラの群れのように見えることから(中略)
最大の牛群地形は多摩川の河口から約45kmほどさかのぼった昭島市のJR八高線多摩川橋梁のすぐ下流に見られたが、2015年からの河川改修により完全に撤去され、現在は痕跡も残っていない。 より小規模の類似地形がそこから800mほど下流に見られる。
白いエントツは昭島市清掃センター。多摩川右岸、清掃工場の近くに下水処理場がありがちですが、この下流、八高線の鉄橋を越えたあたりに八王子水再生センター、左岸に多摩川上流水再生センターがあります。
多摩川横断水道橋、なかなか良かった。
西部6号排水樋管と信玄堤
多摩川横断水道橋の少し上流の右岸に「西部6号排水樋管」。汚水や処理水のような臭いがあまりしませんでしたが、雨水などの排水でしょうか。
しばらく進むと右岸堤防が途切れて天端を走る多摩サイがZ字になっている場所がありました。
振り返るとこんな感じ。どうやら霞堤(信玄堤)のようです。昭島市のデジタルアーカイブサイト(いいですね、このサイト)『「食い違い」堤防』とありました。
詳細|空間でたどる|あきしま 水と記憶の物語
堤防の外には古い水路跡のような石積が見られます。
昭和用水堰に戻ってきました。睦橋と多摩川横断水道橋の間の短い区間ですが、なかなか見どころが多かったです。
このエリアで見た生き物は数日前の記事でまとめていますが、少し前から多摩川等での生き物の写真は、具体的に場所を紹介する記録とはあまり紐づけないようにするか、時間差を付けて出しています(場合によってEXIFも消しています)。見る人が見れば分かるとは思いますが、山と違って誰でも行ける場所ということもあり。