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府中用水・下の川(市川)に流れる3つの湧水を辿る(郷土文化館下・清水の茶屋跡・谷保天満宮の湧水)

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もう少し府中用水関連の記事が続きます。農繁期が終わって多摩川からの通水を終え、湧水のみが流れるようになった秋の府中用水。今回は多摩川から見て最も武蔵野台地寄りの段丘崖沿いを流れる下の川(市川)と、その水源になっている湧水を辿ってみます。


郷土文化館下の湧水(南養寺のハケ湧水)と城山公園

この地図はヤクルト中央研究所を囲むように整備された緑道沿いの案内板(この緑道部分は崖線沿いを含め自転車の通行禁止。自転車で入る際は押して歩きましょう)。
地図の下側を流れる府中用水とは別に、研究所の北側にハケ(青柳崖線)沿いの湧水路が描かれています。この湧水の水源は、ママ下湧水や矢川おんだしとはちょっと違いそうです。

ということでやってきたのは「くにたち郷土文化館」、上の地図の左上あたろにあります。湧水路を上流に遡ってみたら、くにたち郷土文化館の裏にある森が怪しい感じです。

くにたち郷土文化館は青柳崖線の段丘崖に建てられていて、入口がある地上1階は段丘崖の上、展示場がある地下1階は段丘崖の下にあたり、段丘崖を模した階段が庭として見られるデザインになっています。

職員の方に訪ねてみるとくにたち郷土文化館の裏手にある「南養寺の敷地から湧いていると思う」とのこと。館内になったこの絵地図でも湧水っぽいマークが記されています。


国立市のサイト・資料では「郷土文化館下の湧水」と表記されていました。

国立の水環境/国立市ホームページ

せっかくくにたち郷土文化館に立ち寄ったので、こちらの冊子を購入。2012年に開催された企画展「ハケ展」の冊子ですが、武蔵野台地のハケ好きにはなかなか興味深い冊子だと思われます。

こちらが南養寺。かなり立派なお寺です。

南養寺の中にあった案内板。国立市指定遺跡「南養寺遺跡敷石住居跡」の案内板も。

南養寺の敷地には広い森が含まれますが、段丘崖側にはやはり入れませんでした。

ということで目視できる湧水の上流端はこの正面。崖線の下に湧水の流れと、正面左奥が南養寺の森。

段丘崖に小さな谷戸が切れ込んでいる地形になっています。下の地図のくにたち郷土文化館のアイコンから谷戸を挟んだ段丘崖沿いを湧水が流れています。

恐らくこの中から……

路地を挟んで流れてきた湧水がよく見えるのはここから。

しばらく流れて分岐。正面は府中用水谷保分水方面、そして左に流れているのがハケ沿いの湧水路。

ヤクルト中央研究所裏手のハケ沿いに小さな流れが続いています。


城山公園を流れる湧水路

城山公園に入りました。湧水路はそのまま城山公園内の城山池に引き込まれています。

城山池を出て公園内のハケ沿いを流れて行く湧水路。

道路の下をくぐり……

青柳崖線の下に広がる生産緑地の中を流れてます。

視点を少し右にズラすと稲穂が実った田んぼ。その先に見える住宅地の手前に、前回記事で紹介した府中用水の谷保分水が流れています。左奥の少し開けた場所が「谷保給水所」。

田んぼの周りは100羽は下らない大量のスズメの姿。

田んぼの反対に回り込んで振り返っています。

この先も生産緑地が続いてますが、用水路を流れる水はかなり少なくなっています。

生産緑地の先に回り込んでみると完全に水はなくなっていました。元々水量もそこまで多くなかった湧水ですし、生産緑地の畑で使い切ってしまっているのかも?

下流側もこの通り。完全に涸れた用水路ですが、実はここから100メートルぐらい下流で水が復活しています。ということでどこから水が流れているのか見てみましょう。


府中用水谷保分水:出井の橋〜下の川

こちらは前回の記事にも登場した府中用水谷保分水の出井の橋。現在はママ下湧水と矢川の水が流れています。右奥が本流ですが、左側にも一部が分岐しています。

生産緑地の横を細い水路で流れてますが、先まで水は流れてなく(農繁期はずっと先まで流れてます)、途中で左に曲がって左手の民家の横にあるブロック塀沿いに流れて行きます。

カーブした先の水路。

さらにもう一度カーブして手前側に流れてくる水路。少々分かりにくいですが、奥は水が枯れていて(4枚前の枯れた水路の下流です)中央左から水が流れているのが確認できます。一度途中で涸れた水路が復活しました。

天神橋の左岸から新たな水路が合流しています。この水路は次の項目で紹介します。


天神橋の下流。

天神橋の50メートルぐらい下流から上流を見ています。水の流れが右に寄っていますが……

写真手前側が水路の本流ですが、奥の堰板が外されていることで、水の流れが左側の水路に分岐しています。

分岐した水は短いコンクリート水路を経由して、ハケ沿いを流れる下の川(市川)に合流します。

こちらは分岐の下流側。こちらの堰板も外されていますが流れてきた水は全て下の川側に流れているので(高低差によるものでしょうか)完全に涸れています。農繁期は堰板で流れを変えてるのかも?

さらに下流に行くとこんな風景が広がっています。写真の正面奥に日野バイパスが通っていて、前回記事のBMWショールーム方面に流れている水路になります。

それでは天神橋まで戻り、左岸から合流していた水路の水源を見に行きます。

清水の茶屋跡のハケ湧水

さて、こちらは国立市谷保にある「石塚古墳(牛塚)」。甲州街道の北、南武線の線路に近い立川崖線の上にある古墳です。府中用水や湧水とは特に関係ありません。近くまで来たので見たかっただけです。

そんな石塚古墳の前から甲州街道方面を見ると立川崖線の高低差がよく分かります。そして正面に白い柵で囲われた水路らしきものが……

甲州街道を挟んだ北側にも湧水の水路がありました。実は今まで気付いてなかったのですが、下流から水路を辿ってきたら甲州街道を渡ることになりここに行き着きました。


湧水は甲州街道の下に流れて行きます……

そこから30メートルほど谷保駅寄りにも同じような湧水が見られます。こちらには「清水の茶屋跡」という案内板がありました。「清水の」ということでやはり古くからの湧水があった場所だと思われます。


やはりこちらも立川崖線。この辺りは立川崖線から青柳崖線が分岐している場所です。

地形図で見るとこんな感じ。谷保天満宮の周辺から西に向かって2つの段丘崖が分かれているのでモヤモヤっとしていますが、谷保天満宮の南西に伸びているのが青柳崖線(地図の左下に先程のくにたち郷土文化館と谷戸が確認できます)、南東側は立川崖線で、甲州街道を挟んだ北西に伸びています。

段丘崖の際(民家の敷地になっているようです)から流れの跡っぽいものはありますが、水があるのを確認できるのは上から覗き込める甲州街道歩道の下あたりからです。

甲州街道は谷保天満宮の交差点あたりまで緩やかな上り勾配で、そこから府中方面に緩やかに下っています。青柳崖線と立川崖線が合わさっているので、ややイレギュラーな地形になっているようです。それでは正面の見える谷保地下歩道で甲州街道を渡ります。

甲州街道の下をくぐった湧水が集合住宅の間を流れて行きます。

湧水は住宅街の中を先程の天神橋に向かって流れて行きます。

天神橋で先程の流れに合流。


谷保天満宮:常磐の清水とハケの湧水

今度は谷保天満宮です。

お馴染み「常磐の清水」。谷保天満宮内にある湧水です。


厳島神社、弁天池にも水(湧水?)がたっぷり溜められています。

境内に埋められたパイプを流れて……

谷保天満宮の西を流れる水路となります。

こちらは谷保天満宮の本殿。右側の鬱蒼とした木々がハケ。始まったばかりの青柳崖線だと思います。

この段丘崖からも数カ所で湧水がいてます。立川崖線と青柳崖線が分岐する周辺なので、それぞれの段丘からの湧水が集中するエリアなのかもしれません。

境内の湧水も境内を横断して常磐の清水と同じ用水路に合流しています。

この水路は住宅街の中で先程の清水の茶屋跡からの水路と合流して天神橋に流れています。

境内のハケ沿いの水の一部はそのままハケ沿いを流れます。

梅園側から段丘崖の歩道を下りると境内から続く水路が見えました。

そしてここから雨水第二幹線緑道、下の川の流れとなります。

右側から府中用水谷保分水が合流しています。

先程の堰板が外されていた分水堰を下の川側から見ています。



下の川と雨水第二幹線緑道と

この先は下の川(市川)となり、水路沿いに雨水第二幹線緑道が府中市まで続いています。

段丘崖の緑地(立川崖線緑地保全地域)を流れる下の川と刈り入れが終わった生産緑地。

道路が横切っている訳でもないのに雨水第二幹線緑道にアップダウンが……

なんでしょうね?

水道管が通っていました。上水道か下水道か(マンホール見ればよかった)。


日野バイパスと交差します。

人間は螺旋の歩道橋で越える必要があります。徒歩の場合、6車線の日野パイパスを渡るのに国立インター入口の歩道橋まで行く必要があるので、日野バイパス下をくぐっている一般道に迂回した方が早いです。

日野パイパスを越えると雨水第二幹線緑道は自転車も入るのが厳しい規模になり……

NEC府中事業所が見えてきました。

大山道と交差します。

大山道と下の川の交差には上坂橋の碑。下の川に架かる大山道の橋で南下すると府中用水に架かる「大山橋」がある。前々回の府中用水の記事に登場しましたね。

大山道を越えてしばらく進むと国立市から府中市に入ります。

雨水第二幹線緑道は市川緑道となり毎回登場する西府町湧水で少し水量を増やします。

日新町一丁目北交差点で府中用水の本流に合流したところで、この記事のゴールとします。前回、前々回の記事も見ていただくと分かりますが、府中用水の流れは基本的にこの下の川に一旦集約されるようです。
これまで府中市民でありながら府中用水と本宿用水の違いもよく分かっていませんでしたが、本宿用水の通水が止まっている時期ということもあり両者の関係が少し理解できました。


今回紹介した湧水ルート。今回は暗渠もないのでシンプルです。途中の涸れていた水路も分かるようにしました(全部でなく記事内に写真を載せた部分だけ)。これまで何度も訪れている城山公園や谷保天満宮ですが、南養寺や石塚古墳下、清水の茶屋跡からの湧水に気づくことができたのが新たな発見でした。

個人的には発見だったのですが、こちらのブログを読んだらしっかり紹介されていました。続き物として読んでいたと思うので、単に忘れていたのか、うっすらと記憶に残っていたのがヒントになったのか……。