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府中用水の通水が終わったので、ハケの湧水が流れる水路を辿って多摩川まで

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国立市・府中市内を流れる「府中用水」は、毎年5月の田植えから秋の刈り入れ前までの農閑期の数ヶ月間、多摩川から取水される農業用水路です。今年も9月後半に通水を終えています。

同じく多摩川を水源とする本宿用水(四谷用水)と合流、分岐しながら網の目のように流れる府中用水ですが、多摩川からの通水が終わっても水が涸れない水路を見ることができます。これらの水路には武蔵野台地のハケ(段丘崖)からの湧水が流れているのですが、この時期なら複雑な府中用水の中で湧水を水源としている水路のみを追うことができます。この夏は自転車で走りながら府中用水、本宿用水の流れるエリアを見ていたこともあり、通水を終えた用水路の様子が気になり出かけてみました。

多摩川の水が流れる6月の府中用水

通水の終わった府中用水 取水口

国立市青柳にある府中用水の取水口(府中用水取水樋門)にやってきました。

日野橋(奥に見えている白いトラス橋は架替工事中の日野橋の仮橋)の下流で多摩川の澪筋から分岐した流れが根川からの水と合流して流れてきています。手前の越流堤は多摩川への余水吐です。

既に取水樋門のゲートは閉じられています。

その代わりに多摩川に水を戻す水門が大きく開かれ、多摩川に勢い良く水が流れています。


8月頃の写真と比べてみると水門の開き具合や多摩川へ流す水の勢いが異なることが分かります。

緑川排水樋管と交差して地上に表れた府中用水。通水が終わっているので既に水が涸れています。

青柳崖線の段丘崖の下に沿って流れていきます。

取水直後の府中用水はかなり水路の幅が広く作られていますが水深はこんなものです。

通水は終わってもまだ一部に水が残っているので、餌が取れるのかサギたちの姿をよく見ます。

谷保堰に出ます。この分水堰で府中用水は2つに別れます。


左側が谷保分水。

右側の本流は中央道の下をくぐります。小さな堰があるせいか水が溜まっています。

府中用水本流はいずみ大通りに沿って流れ、石田大橋北の交差点で暗渠となり、日野バイパス沿いに左折して国立府中インター方面に流れているようです。水が涸れている流路はこの辺にしておきましょう。

谷保堰で別れた谷保分水には水があるように見えますが……

上流から流れているのではなく、矢川おんだしからの湧水が上がってきているのでした。

通水期の府中用水は本宿用水や小さな分水まで含めると複雑に入り組んでいて、どう流れているか分からないところがありましたが、多摩川からの通水が止まっている時期は水が流れているのは基本的に湧水由来の水路なので、その流れを追ってみることにします。

ママ下湧水から湧水の水を追ってみる

ということで府中用水に流れ込む湧水の水源といえば「ママ下湧水」。

多摩川からの通水が終わっても、年間を通じて府中用水への供給を続ける続ける段丘崖からの湧水です。見ての通りこの季節になってもそれなりの水量があります。

湧き出したばかりの澄んだ水の流れです。

いずみ大通りの脇にも段丘崖からの湧水がありました。なるほど“いずみ”大通り。

黄金色に染まって刈り入れを待つ青柳崖線下の水田。既に水は抜かれています。

「矢川おんだし」。左側がママ下湧水からの水、右は矢川からの水。矢川は立川崖線からの湧水が青柳面を流れてきた川なので湧水と湧水の合流です。

この付近は段丘崖からの湧水が豊富なようで、小さな流れが度々合流しています。

見えてきた青い水門が「あきすい門」。

ここでも段丘崖から小さな流れが合流しています。

6月の矢川おんだし周辺の写真を比較すると、水量の違いが分かると思います。

谷保分水は段丘崖沿いを直進、あきすい門で南側に分岐しているのが「あきすい堀」。

谷保分水はヤクルト中央研究所方面に流れて行きます。谷保分水は何度か歩いたことがあるのでこの日はスルーしましたが、後日改めて訪れているので、別途記事にまとめます。


府中用水あきすい堀

あきすい堀の方が水量が多く見えたので、こちらを追ってみることにします。

中央道の下をくぐって……

反対側の出口の雰囲気が良かったので。小さな落差工で水量も分かるかと。

国立市の寺之下親水公園の中を流れます。

寺之下親水公園の「秋水橋」。「あきすい堀」はこの漢字なのですね(当て字かも)。

日野バイパス(石田大橋のスロープあたり)にぶつかったところで暗渠になります。この先しばらくは暗渠ですが、先程石田大橋北の交差点で暗渠になった府中用水の本流(現在は空)と日野バイパスの下あたりで合流しているようなので、あきすい堀はここまででしょうか。


中央道国立府中インター周辺を流れる府中用水

日野バイパスを渡ったあきすい堀改め府中用水の本流(?)は、暗渠のまま北多摩二号水再生センターの敷地に沿って歩道の横を流れています。グレーチングの中には水の流れが確認できます。

北多摩二号水再生センターの正門付近まで流れて、中央道方面に90度流れを変えているようです。

再び中央道の下をくぐったところで(暗渠の蓋を外したような)開渠となります。

川幅のある開渠になり、日野バイパスと中央道、国立府中インターチェンジのランプウェイに囲まれた中洲のような工業地域の中を流れて行きます。

そして中央道国立府中ICの上り線 出口ランプウェイの下に流れて行きます。本宿用水も中央道下り線のランプウェイ下に流れている水路がありますし、国立府中ICは府中用水の込み入ったエリアのど真ん中にあるので、インターの敷地内に府中用水の複数の水路が出入りしているようです。

府中用水の水位が上がるとこの管の中に水が落ちて行くようです。雨水管に繋がっているのでしょうか。ここに水が流れ込んでいる様子を見てみたいですが、多摩川からの通水期なら見られるのか、雨などで増水しているタイミングに見にくる必要があるのか?

先程ランプウェイの下に消えた府中用水は、上り線 入口ランプウェイの下から現れました。護岸のブロックの色を見ると農繁期よりもかなり水位が低いことが分かります。

この辺り、中央道と日野バイパス、野猿街道の終点付近に囲まれた一角で(住所は国立市谷保)、それぞれの通りは車ではよく走っているのですが、中に入ってきたのは初めて。

インターチェンジ周辺の工業地域ですが水田も結構ある。この田んぼは刈り入れ前。

焚き火の臭いがすると思ったら刈り入れを終えて集めた稲わらを焼いました。比較的近所に住んでいるのですが、国立府中ICのすぐ横でこんな光景が見られるとは思っていませんでした。

インター周辺にあるラブホテル横、國宮橋のたもとに国立市による府中用水の看板。



府中用水と雨水第一幹線緑道

この辺りから府中用水沿いの緑道が「雨水第一幹線緑道」になります。用水路の左岸側が国立市、右岸側は府中市になり、しばらく2市の市境付近を流れます。

用水路の上をカワセミが飛んでいました。写真は撮れず。

分水堰がありましたが左側には水は流していませんでした。

農繁期になったら両方を水が流れる様子が見られるのか。半年後のお楽しみ。

野猿街道と大山道が交差する府中西高校前交差点に出ました。

野猿街道を渡りました。写真右奥は八王子方面。府中用水は交差点の下を流れています。左から交差する道が大山道、府中用水の上に「大山橋」が架けられています。


再び雨水第一幹線緑道を進みます。

日新通りに突き当たります。正面の緑は府中崖線で、その上は府中市西府町。


雨水第二幹線緑道と下の川(市川)

日新通りの日新町一丁目北交差点。ここから先は完全に府中市に入ります。左側が府中崖線の段丘崖で、ハケ沿いの緑道は雨水第二幹線緑道。段丘崖沿いにはハケの湧水を集めた「下の川(市川)」が流れていて、ここで府中用水と合流します(下の川の上流側では谷保分水も合流しています)。

雨水第二幹線緑道の西府駅付近は市川緑道とも名付けられているようですが、府中用水沿いの緑道は全て掘や川の名前で統一してくれた方が助かりますね。

下の川を少し遡ると「西府町湧水」があります。名前の付いてない場所も含め湧水ポイントが点在する国立市の青柳崖線と比べると、府中市内の目の見える湧水ポイントはかなり限られています。

青柳崖線に比べたら水量は少ないもののしっかり水が湧き出しています。

親水施設的に整備された市川緑道(雨水第二幹線緑道)を進みます。

雨水第二幹線緑道と日新通りが分岐します。正面の歩道橋は日新通りと段丘崖を越えてJR西府駅とNECの府中事業場側を結ぶもの。

歩道橋の上から。左が雨水第二幹線緑道(下の川)で右が日新通り。府中用水もそれぞれに分岐します。

府中用水的には雨水第二幹線緑道沿いの方が本流だと思うのですが(?)、この時期、下の川の水は止められていました。雨水第二幹線緑道は新府中街道にぶつかる手前で暗渠となり、分梅町、本町の緑道下を流れています。途中で雑多堀などに分岐しますが、今回は水の流れてる水路を追うのが目的なのでここまで。


新田川と新田川緑道

府中用水新田川に掛かっていたという坂田橋の碑。ここからの府中用水は「新田川」になります。

新田側はNEC府中事業場を挟んで日新通り沿いを流れます。

日新通り沿いに南町方面まで続く緑道、新田川緑道が表れます。

新田川は新府中街道にぶつかる少し前で暗渠になります。

すぐ横にある行人橋の解説碑。府中用水新田川と本宿用水の流末の合流点であれことが記されています。

右正面が新田川緑道。左から合流している歩道は暗渠なのが分かると思いますがこれが本宿用水からの流路。本宿用水も既に通水は終わっているので、水は流れていないはずです。

新府中街道を渡って新田川緑道の続き。暗渠っぽいですね。

中央道の下をくぐる新田川緑道。

新田川が開渠になる手前で右から別の暗渠が合流しています。写真は合流した側の暗渠の上から撮っていて、左側が新田川緑道。

気になって合流した暗渠を遡ってみると新府中街道の分梅町四丁目交差点で、中央道の下を一瞬開渠になった水が流れていました。水量を見ると新府中街道を渡った新田川の水は、新田川緑道でなくこちらに流れているのかも? 或いは一度分岐しているのか。

この開渠部分、水路は2つに別れていますが……

比較的近い所を並行して暗渠が通っています。

2本の暗渠が並行して住宅街の中を通って↑の新田川緑道との合流ポイントへ(水が流れているのは左側だけ)。

2本の水路が並行して流れていますが、水が流れているのは左側の水路。


親水施設の充実した新田川緑道

新田川分梅公園。緑道を挟んで右側が新田川の本流で左側は親水施設的に整備された流れ。

分倍河原古戦場の碑があります。

住宅地の中の公園だからか人が近くを歩いても逃げないコサギが狩りをしていまいした。

カワセミとキセキレイ。

DC-TZ99ではこれが限界でした(笑)

住宅地の中を流れ京王線の線路を越えて……

新田川緑地。新田川分梅公園と同じく新田川から親水施設(しょうぶ池等)に水を引き込んでいます。

しょうぶ池から戻ってきた水が合流して一旦暗渠になります。

新田川緑道をしばらく進むと再び表れた開渠ですが、下河原緑道との交差が近づくと徐々に水が少なくなっています。

下河原緑道に出る手間で完全に涸れました(写真は上流向き)。あり得るのはこの水路は周辺の田畑に水を送る分水で、メインの新田川は暗渠を流れている可能性。

ちなみに新田川(緑道)はサントリー工場裏の雑田堀親水公園あたりで雑田堀としばらく平行に流れて郷土の森公園の敷地に突入します。写真の白いパイプは矢崎町の辺りで地上に顔を出した新田川。


新田川緑道を外れた新田川?の暗渠を探す

ということで新田川緑地に戻ってみると、下河原緑道方面とは別に芝間公園方面に暗渠が続いていて、グレーチングの下からは勢いよく水が流れる音も聞こえてくるので、こちらの方正しい気が……?

この周辺は水路が複数分岐している生産緑地なので確信はありませんが、南町かえで通り公園の通路が怪しい。

その先のグレーチングの中からはやはり水の流れる音が聞こえます。

グレーチングの先には府中南町浄水所。府中用水は絡んでないと思いますが、水に関連する施設なので。ちなみに府中南町浄水所は東村山浄水場からの水に、深井戸からの地下水を加えて給水を行っています。そういえば近くにある「サントリー 天然水のビール工場」でビール製造に使っている水も、地下100メートルから組み上げた深層地下水を使っていると工場見学で聞いたことがあります。

府中市内にはこの他に幸町・府中武蔵台・若松の浄水所がありますが、それぞれ断水時の応急給水拠点にもなっているので、最寄りの浄水場やアクセスは日頃から確認しておいた方が良いでしょう。

府中市郷土の森博物館と郷土の森公園の間、手前側の新田川緑道に暗渠が合流しているようです。マンホールの中からは水が流れている音が聞こえます。

新田川緑道はここで終点。

多摩川通りと郷土の森野球場の間。古い堤防の下、多摩川通り側、野球場側…… 新田川がどこを流れていても不思議じゃない雰囲気。

そしてお馴染みの郷土の森バーベキュー場横の是政排水樋管へ。この水門が新田川の流末ということで、国立府中の府中用水を旅してきた崖線からの湧水が、ここで多摩川に流れ込んでいるようです。

以上、府中用水の湧水を水源とする水路を辿ってみましたが、この他にも谷保分水や下の川など湧水の流れている別の水路も見てきたのでそれは記事を分けます。


今回の記事の府中用水ルートはこんな感じ。開渠と暗渠は別けようかと思いましたが、面倒だったのでとりあえず。暗渠部分は一部想像を含んでいます。

今回辿った府中用水の流路についてはこちらのブログ記事が大変詳しいです。今回の記事執筆にあたって読み返していたら、チェックの足りてなかった場所が複数見つかり、再取材で出かけることになったりなど……。