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標準地図アプリを登山で使う:PRO TREK Smart WSD-F20のオフラインマップ機能

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カシオのアウトドア用スマートウォッチ「PRO TREK Smart WSD-F20」のモニターレビュー第3弾。今回はメーカー標準でプリインストールされている「ロケーションメモリー」や「アクティビティ」といったアプリケーションについてチェックしていきましょう。

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主に、WSD-F20の発表当初から多くの方が注目していると思われる(前モデルWSD-F10には搭載されていなかった)、オフライン地図機能についての紹介です。

はじめに:PRO TREK Smart WSD-F20の地図機能について

まず、改めてWSD-F20で使うことができる地図機能についてざっくりとおさらいしておきます。オフライン地図のみについて知りたい場合は、読み飛ばして貰ってOKです。

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また、WSD-F20ではiOS/Androidどちらのスマートフォンとペアリングしているかによって、地図回りでもいくつかの違いが発生します。本レビューはiPhoneとのペアリング環境を前提に進めますが、一部Androidペアリング時の仕様についても触れています。

「GoogleMap」と「Mapbox」

メーカー標準のアプリを使った場合、WSD-F20で使うことができる地図は「GoogleMapとMapbox」の2種類。「Mapbox」はFoursquareなども採用している地図サービスで、WSD-F20では任意のエリアをユーザーがダウンロードすることで、オフライン時にも地図を見ることができるようになります。

※その他、前回紹介した登山地図のYAMAPや、ViewRanger(Androidペアリング時のみ使用可能)といった、純正以外の地図アプリも存在します。

Wi-Fi接続時の地図表示(GoogleMap)

WSD-F20をWi-Fiに接続している場合は(またはオンライン状態のAndroidとペアリング時)、スマートフォンと同じようにGoogleMapを見ることができます。選べる地図のタイプは通常のGoogleMap「地図」と「地形」「航空写真」の3種類。

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ペアリングしたスマホがオンライン状態の場合(iOS/Android)

Wi-Fi環境がなくBluetoothペアリングしたスマホがオンライン状態の場合。これはAndroidがClassic Bluetooth接続なのに対して、iOSではBluetooth Low Energy(BLE)となることで、地図の読み込み速度や仕様が異なります。

オンライン状態のAndroidスマホとペアリングしている場合、屋外でもGoogleMapをストレスなく見ることができますが、iOSペアリング時は地図が表示されるまでに時間がかかり、正直言ってしまうとあまり実用的ではありません。

「GoogleMap」と「ロケーションメモリー」(iOS/Android)

Androidとのペアリング時にはGoogleMapの専用アプリ「マップ」をPlayストアからインストールすることができますが、iOSとのペアリング時には使えません。といってもGoogleMap自体が見られない訳でなく、プリインストールされている「ロケーションメモリー」アプリ上にてGoogleMapとMapboxを切り替えて表示させることが可能です。

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* *

以上、WSD-F20で使うことができる地図機能について、ネットワークやペアリング事情よって、変化する諸々をざっくりと確認しました。大夫差は埋まってきたとはいえ、iOSペアリング時に発生する制限を知っておくといいでしょう。

「ロケーションメモリー」でオフライン地図を表示する

さて、ここからがようやく本題。内蔵GPS機能と併せて力を発揮する、WSD-F20の「オフライン地図」について。地図のダウンロードや使い方、実際のフィールドでの使用レビューなど、順を追って紹介していきます。
使うのはプリインストールされた地図&行動記録アプリ「ロケーションメモリー」です。あまり地図アプリっぽい名前ではありませんが(?)、「ロケーションを(表示して)記録するアプリ」みたいに捉えると良いかもしれません。

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対象エリアの地図を事前にダウンロード

WSD-F20には、GARMINのfenix 5X Sapphireのように元からフルカラーの日本地図が内蔵されてる訳ではないので(ただし定価99,800円!)、事前に対象エリアの地図をダウンロードしておく必要があります。
まず、ロケーションメモリーの[設定]→[地図の種類]から[Mapbox]を選びます。当然ですがGoogleMapの地図はダウンロード不可です。

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続いて[設定]→[地図のダウンロード]を選択。ダウンロードできる地図の種類は[ストリート/衛星画像/アウトドア/ライト/ダーク]と選べますが、ひとまず[アウトドア]を選んでおきます。都市部の情報は[ストリート]の方が精細なようですが、[アウトドア]地図でも道路や駅名などはある程度表示されます。

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ダウンロードする地図の範囲を選んで(次で説明します)ダウンロード。Wi-Fi接続されていればだいたい3〜5分程度で完了します。

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ダウンロード範囲によって最大ズーム時の縮尺率が異なる

ダウンロードできる地図の範囲ですが最大にすると、これ位のエリア。都心部から奥多摩、北は埼玉県の所沢、西は神奈川の丹沢東部あたりまではカバーしているでしょうか(実際にダウンロードされる地図はディスプレイ通りの円形でなく、もう少し広いエリアです)。

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また、ダウロード時の縮尺によって、地図を見る際の最大ズームが変化します。例えば最も広域でダウンロードした場合(上)と、そこから2段階縮尺を大きくしてダウンロードした場合(下)、渋谷付近の最大ズームがこれだけ変わります。

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山間部の地図読みや行動ログの記録ならば、広域の地図でも充分ですが、観光地などの街歩きに使うならば、細い路地までズームできるよう数段階縮尺を上げてダウンロードしておいた方がよさそうです。

ちなみに、広域サイズで落とした場合の、奥多摩御岳山山頂付近の地図表示が以下。上の渋谷の地図を見てもお気づきかもしれませんが、地図上の地名や駅名表示はアルファベットの表記が中心で、所々に日本語表示が入ったもの。

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ダウンロード時の縮約によるズーム範囲の違いについては、メーカーのQ&Aページにも例が掲載されているので、併せてご確認ください。

Smart Outdoor Watch WSD-F20/F10 - Support - CASIO

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ダウンロードした地図を見る

屋外でGPSを掴んでいれば、現在位置が画面中央に表示されます。ズーム範囲の変化は上下ボタンで設定可能。特に行動記録を取らずに、気になったときだけ現在位置を確認するような使い方ならば、バッテリーも長持ちします。

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「ロケーションメモリー」で行動記録やメモを取る

今度はロケーションメモリーを使って行動記録を取ってみます。[設定]→[毎日の位置情報を保存]を選ぶと、以後の行動ログが取られます。「スタート/ストップ」のような記録方法でないのが少々意外です。

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その際、記録の頻度を[1分ごと/6分ごと]から選ぶことができ、当然後者の方が省電力設定。さらに行動記録中の軌跡を地図上に表示したい場合は[ルート表示]を[ON]におきましょう。

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行動中に気になったスポットには任意のマークでチェックを付けたり、音声でメモを残すことも可能です。スマホを取り出さずにこれができるのは、スマートウォッチならでは。

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行動記録をKMLファイルで書き出す

ロケーションメモリー(や後述のアクティビティ)で保存した行動記録ですが、[設定]→[エクスポート]を選ぶことで、ログデータをGoogle Driveに書き出すことができます、KMLファイルでエクスポートされるので、GoogleMapなどに貼り付けることも可能。

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これにより、普段利用している地山地図アプリ/サービスなどに、行動ログをインポートすることも可能です(場合によってはGPX形式に変換が必要な場合もあります)。

「アクティビティ」で登山や釣りの行動データをリアルタイム確認

続いて「トレッキング/サイクリング/フィッシング/パドルスポーツ/スノー」という5種類のアウトドアアクティビティに特化した、行動データの表示&記録アプリ「アクティビティ」を紹介しましょう。ロケーションメモリーが行動記録を保存するアプリなのに対して、アクティビティは「今、自分がどのような状態なのか」を確認するアプリ。

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例えば「トレッキング」モードの場合は、設定した目標高度との高度差や時間当たりの移動高度、サイクリングならば移動距離や平均時速、フィッシングならば気圧の変化といった具合に、その時点でのデータをリアルタイムで表示。GPSの行動ログも保存されます。

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GPSロガーの機能があることで、ロケーションメモリーとの使い分けに悩むかもしれませんが、アクティビティ試用中の地図表示/ルート記録部分は「ロケーションメモリー」と共通、という判断で良いみたいです(つまりアクティビティを使う際は、ロケーションメモリー側で記録を取らなくてOK)。

「アクティビティ」のトレッキングモードを登山に使う

登山アプリはYAMAPがあってWSDシリーズに、最適化されたアプリですが、メーカー純正のトレッキング専用アプリは「アクティビティ」という位置づけ。先日、奥多摩の大岳山に登った際には、この「アクティビティ」を使ってみました。

アクティビティを立ち上げて任意のアクティビティ(ややこしいですね)を選択。あとは[START]をタップすれば記録が始まります。登山の場合は、ゴールとして山頂などの標高を設定しておくと、そこまでの高度差が表示されます。

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トレッキングモードで記録中の画面が以下の3画面。まずはメインの画面が以下のもの。目標1266m(奥多摩の大岳山山頂)に向けて、残り334mの標高差。さらに1時間あたり標高302m/hのペースで登っていいて、歩き始めて3時間17分が経過していることが分かります。

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ちなみに、ゴール(山頂)を過ぎての下山時ですが、今度は増えていく標高差も「残り」として表示されます。あくまで設定値との差分の表示なので、細かいことは気にしない方がが良さそうでしょう。
1回スワイプ(←)で累積の移動距離(上り/下り)とそれぞれのペースの表示画面。

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もう1回スワイプで地図+ルート軌跡の表示になります。ここで表示される地図は、ロケーションメモリーでダウンロードしておいたMapboxの[アウトドア]地図。登りの軌跡はオレンジ色、下りは青色で表示されますが、標高差がない平地の移動中についても基本オレンジ色で表示されるようです。

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休憩時には一時停止できますし、記録終了の際には停止ボタンをすれば、行動ログが保存されます。保存されるのはGPSの移動軌跡のみで、リアルタイムで表示されていた情報は残りません。行動ログを確認するには、ロケーションメモリーの[設定]→[履歴表示]から。

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「YAMAP」と「Mapbox」の山岳地図表示を比べてみる

既にチラチラらと写真に写り込んでいますが、アクティビティアプリのテストを行った奥多摩登山では、同時にWSD-F10でYAMAPも使っていました。せっかくですのでMapboxとYAMAPの表示の違いなどについて、いくつか抜き出してみましょう。

* *

まずは一般登山ルート上を歩いている際の表示。やはり登山ルートが赤線で表示されていて、コースタイムの目安なども記載されているYAMAPの方が分かりやすいですが、Mapboxにもある程度の登山道が表示されているのが分かります。大岳山(おおだけさん)の表記が「Odaki Yama」になっているのは残念(笑)

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さらにYAMAPにコース表示のないややマイナーなルート(実際はごく普通の登山道ですが)を登っている際の表示。国土地理院の地図を使っているYAMAPに比べて、Mapboxは等高線に現れる地形の変化がややザックリしている感もあります。谷沿いに登っていることは、どちらの地図からみ読み取れますが、細かい地形変化だけでなく沢の有無など、より正確な情報を見られるのはYAMAPの地図でしょう。

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下山後に一般道を歩いている際の地図表示。うっかり縮尺が異なる写真を撮ってしまったので、Mapbox側でもズームをすることで小学校や地名なども表示されるかもしれません。

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等高線がビッシリ入る山間部に比べて、平坦な市街地に入ってくると私などは国土地理院の地図はごちゃごちゃしていて読みづらく感じることもありますし、この辺りはそれぞれ好きな地図があるかもしれません。

「アクティビティ」使用時のバッテリー消費について

そして気になる人も多いと思うバッテリー消費について。まず、ロケーションメモリーのみを使った場合ですが、記録の頻度を[6分ごと]に設定した場合は、結構長持ちします(日中丸1日は問題ないレベル)。行動中のみ記録した場合と、1日中オンにしている場合では当然変わってきますが、YAMAPやアクティビティよりも省エネでログ取得できるのが、ロケーションメモリーでの[6分ごと]記録だと思われます。

そして、「アクティビティ」を使って上記の山行(6時間強)を行った場合。前提として、前回YAMAPの紹介記事を書いた際と同様に、以下の省エネ設定を行っています。機内モードはGPSを仕様するアプリを長時間使う場合の基本設定だと考えてよいでしょう。

  • 機内モード:ON
  • [設定→画面]画面の明るさ:1
  • [設定→画面]常に画面をON:OFF

山行が終わった時点ですぐ確認するのを忘れてしまいましたが、帰りの電車内で撮った写真が以下。残量54%は思っていたよりも頑張ったなと。WSD-F20でYAMAPを使った場合さほど変わらないレベル。正直、最もバッテリーを消費するアプリだと考えていたので、意外に使えるなという感想です。

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ちなみに、左側の残量22%になっているWSD-F10ですが、これはこれでYAMAPだけを使っていたのにかなり意外な結果。WSD-F10はGPSを内蔵してないため、常にAndroid機と通信が発生してしまうのですが、以前使っていたときはもっと電池持ちが良かった気がするのですが…。
YAMAPはバージョンにによって、異常に電池食いになることもあるので、今回もその影響なのかもしれませんが…?

私なら都市部はMapbox、山間部はYAMAPで使い分け

上記の山行の他にもこの半月の間、あえて都市部でYAMAPを使ってみたり、もちろんMapboxを使って近隣の住宅地や都市部も歩いてみたりしました。

まず、明らかに登山が目的ならばYAMAPを使うに越したことはないでしょう。一般登山道はほぼルート表示がありますし、地図の視認性、正確性もMapboxより高いです。
一方で都市部や住宅地では、店舗やランドマークの表記のないYAMAP地図(元が国土地理院地図なので仕方ないですね)よりも、Mapboxの方が見やすいのは当然です。

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Mapbox事前にダウンロードの必要があるものの(そこはYAMAPも同様ですが)、それなりに広域でデータを落とせるので、例えば私の場合なら自宅のある府中から仕事で訪れる都心部、登山に行く奥多摩までまとめて落としておけます。一方で登山で八ヶ岳や北アルプスに行くことになっても、その際はYAMAPを使えばいいのです。

Mapboxで数カ所のダウンロードに対応すると嬉しいかも?

もし、今後に期待をするならばオフライン地図の複数エリアダウンロードへの対応。普段の生活圏の他に、旅行で訪れる先の地図を事前に落としておけると街歩きも捗りそうです。
恐らくMapboxの仕様もあり一度に取得できる地図の範囲やデータ容量に制限があるものと思われますが、何かしらの方法(複数エリアDLの場合、1エリア辺りのデータ量が小さくなるなど)で対応してくれると非常に便利。なんでしたら、2本目以降は有料課金というのでも個人的には構いません。

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