少し前から各所で話題になっているDxO PureRAW。私もデモ版を試してみたところかなりの効果を感じたので、即購入して使うようになりました。
既にPureRAWの効果や使い方については各所でレポートされていると思いますが、今回は特に私のメイン撮影機材であるマイクロフォーサーズ機(OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II&III)の使用時における、主に高感度ノイズ低減の効果についてレポートしてみたいと思います。
- DxO PureRAWって?
- デモ版を試したら凄かったので速攻で買った
- 手順はRAWファイルをドロップ&ドラッグして処理するだけ
- 追記:DxO光学モジュール補正と処理後の画角変化について
- マイクロフォーサーズ高感度+PureRAWの処理結果
- PureRAWにスーパー解像度の併用でトリミング耐性もアップ!?
- 追記:RAWファイルのサイズが大きくなります
DxO PureRAWって?
DxOはフランスの写真編集ソフトウェアメーカーで、RAW現像ソフトの「DxO PhotoLab」や、Adobe PhotoshopやLightroom向けの現像プリセット「Nik Collection」でも知られています。私は名前は知っていた程度で、同社のソフトウェアを使用、購入するのは今回が初めてになります。
「PureRAW」は撮影したRAWファイルの最適化に特化したソフトウェアで、具体的には「デモザイキング、ノイズ除去、モアレ、ディストーション、色収差補正、不要なヴィネット、シャープネス不足」の解決をディープラーニングによるAI技術(DxO DeepPRIME)を用いた処理によって行ってくれるそう。
中でも注目されているのが「ノイズ除去」で、デジタルカメラで高感度(高ISO感度)撮影を行った際に発生する、輝度ノイズやカラーノイズといった(一般的に高感度ノイズと呼ばれる)写真のディティールを損なうノイズを大幅に取り除いてくれる効果です。
PureRAWやDeepPRIMEの詳細についてはDxO公式サイトや動画にてどうぞ。
デモ版を試したら凄かったので速攻で買った
なにはともあれ実際に体験してみるのが一番でしょう。DxOのサイトから30日間無料で使えるデモ版をダウンロードできます。そんなデモ版を使った直後の私のツイート。
トリミングで使うとかなり厳しさを感じてたマイクロフォーサーズのISO3200が簡単な処理でかなり見られるように! pic.twitter.com/3cG7uNChAG
— OKP (@iamadog_okp) 2021年5月31日
Pure RAW、これは驚くなぁ……
— OKP (@iamadog_okp) 2021年5月31日
E-M1 Mark IIIのISO6400常用できそう? pic.twitter.com/7owuh34IW6
PureRAW本当に凄いな。映画や海外ドラマで散々見てきた、防犯カメラ映像の「ノイズ消して。解像度上げて」に近い体験をしてる
— OKP (@iamadog_okp) 2021年6月1日
「これは絶対に使う!」と確信したので、30日間の無料体験版期間を待たずに翌日には購入しました。サイト上か購入手続きを行えばライセンスの認証コードが発行されるので、使っているデモ版から入力すればそのまま認証が完了します。
私が使っているマイクロフォーサーズ機に使われているフォーサーズセンサーは物理的なセンサーサイズがフルサイズセンサーに比べて小さいため、どうしても高感度域に弱い(ノイズが目立つ)傾向にあります。その他のメリットがあるとは言えやはり弱点は弱点。
特に高感度が当たり前になる星の撮影や、素早い動きを止めるために速いシャッター速度を必要とする野鳥の撮影では、常にどこまで感度を上げるかと画質のトレードオフを迫られるシーンが多くなります。
具体的には(私のブログ用途の場合)通常の撮影ではISO1600を上限にして(現像時にはほぼノイズ処理を行わない)、星や光量の足りない野鳥撮影などでシャッター速度を稼ぎたい場合に少しディティールを犠牲にしてISO3200まで、最新の画像処理エンジンが積まれたE-M1 Mark IIIでもせいぜい1/2段程度の改善ではあるものの、最近になってISO6400も使うようになっていた感じです。普段はAdobe Lightroom Classicで簡単なノイズ低減を行ってますが、まあブログに乗せる程度ならなんとかなるかなと。
手順はRAWファイルをドロップ&ドラッグして処理するだけ
PureRAWを使っての作業ですが、ワークフローのスクショも撮ってはみたのですが、めちゃくちゃ単純なソフトなので公式サイトを見て貰った方が分かりやすいでしょう。
DxO PureRAW 最高の RAW ファイルのためのシンプルな 4 つのステップ
処理の際のオプションが「HQ」「PRIME」「DeepPRIME」の3種類から選べる他は、細かい設定は一切できません。つまりノイズ低減のさじ加減やシャープネスの調整はできず、全てPureRAW任せの処理となります。厳密に比較した訳ではありませんが、私が試した限りは「DeepPRIME」が比較的処理時間が短く、結果も良好に感じました。
DxO PureRAWは残念ながら(?)Lightroom Classicのプラグインとして使うことはできませんが(RAWファイルを直接PureRAWに読み込ませる手順となります)、PureRAWでの処理済のデータ(DNG形式のRAWかJPEG)はLightroom Classicへのエクスポートが可能です。
追記:DxO光学モジュール補正と処理後の画角変化について
途中に追記を挿入してやや分かりにくなってしまい申し訳ないですが、読み飛ばして貰って構いません。作例を見ていて微妙な画角の変化が気になったら、後ほど確認して貰えたらと。
PureRAWでの処理を行う際にRAWファイルをドロップ&ドラッグすると、使用カメラやレンズに対応した「DxO 光学モジュール」(レンズプロファイル的な補正データでしょうかね?)のダウンロード&選択が求められます(「DxO 光学モジュール」のダウンロードが求められるのは初回のみ)。
以後の作例ではこの「DxO 光学モジュール」を選択した状態で処理を行っているのですが少し気になる件がありました。それはPureRAWでの補正前後で微妙に(主に周辺部の)画角が変化していること。レンズの歪み補正情報の差異か何かが原因かと思っていましたが、どうやらマイクロフォーサーズの場合(オリンパスのORFファイルのみの確認ですが)、DxO 光学モジュールの「該当なし」を選んで処理を行った場合に、元RAWと処理済みのDNGファイルの画角は同じになりました。
細かく検証してないので原因は不明ですが、m4/3でのレンズ補正は他のフォーマットと少し扱いが違ったと思うので(そもそも補正前提でオンオフをユーザー側で選べない)、PureRAW側で補正をかける必要はないのかも?とも(ただし歪曲以外に何かしらの補正が入ってる可能性はあります)。処理前後での画角変化が気になった場合、「DxO 光学モジュール」の項目のチェックを試してみてください。
そういえばPureRAWを使うと画角が微妙に変化するのが気になっていた。恐らくRAWデータを変換する際のレンズ補正情報の絡みなのだろうけど、元のRAWには写ってなかった周辺部が現れるのはなんとも不思議だ(2枚目がPureRAW後) pic.twitter.com/wywmtl6hx8
— OKP (@iamadog_okp) 2021年6月24日いや、これはダメな気がする…… 魚眼(8mm Fisheye PRO)で撮ったRAWをPureRAWに掛けたら謎の絵になってしまった。撮影機材に対応したDxO光学モジュールのダウンロードとは何だったのだろう? pic.twitter.com/5F1DEgwNnT
— OKP (@iamadog_okp) 2021年6月24日解決した。DxO光学モジュールの補正を外せばいいのか。しかしカメラとレンズ名の補正データをダウンロードしたら使った方が良いと思うじゃないか…… pic.twitter.com/yJbB3oE74q
— OKP (@iamadog_okp) 2021年6月24日参考記事:
マイクロフォーサーズ高感度+PureRAWの処理結果
それでは実際にPureRAWで処理したマイクロフォーサーズ機の撮影データを見て行きましょう。
最初はE-M1 Mark IIIで撮った蝶の写真。動きを止めて撮りたかったのでシャッター速度を1/1600秒に設定していることもあり、感度はISO6400まで上がっています。写真はLightroom Classicに読み込んだRAWファイルに編集作業を一切加えずにそのまま書き出していて、デフォルトで入ってるカラーノイズ低減もオフにしているので全体的にかなりノイズが目立ちます。
PureRAWの「DeepPRIME」で処理を掛けたものがこちら。全体のノイズが消えてかつピントが来ている蝶や植物はシャープに、かといって背景のボケが汚くなることもない自然な仕上がりです。PureRAWで処理した画像はJPEGの他RAW(DNG形式)でLightroom Classicに書き出せるので、この後でいつもの現像作業を行うことが可能です。
蝶の部分を拡大して切り出したものがこちら。スライダーで処理前後を比べられますが違いは一目瞭然。言うまでもありませんが、左側が元RAWで右側がPureRAW処理結果(以後同じ)。羽根の鱗粉の感じが戻ってきているのは、一体どんなマジックなのでしょう!?
続いてE-M1 Mark IIのISO3200で撮ったカワセミ。光量もなく飛び待ちだったので感度を上げざるを得なかった状況。こちらもスライダーで比較できるようにしました。
カワセミの部分だけトリミングしてみましょう。PureRAWによる処理でノイズ除去と合わせて解像感が上がったことで、少々怪しかったピントが合ったような錯覚すらあります。
暗い橋の下で撮ったハクセキレイ。E-M1 Mark IIIの高感度を試すのにISO6400まで上げてみました。E-M1 Mark IIのISO3200並…… は言い過ぎですが、1/2段ぐらいは高感度に強くなっている気がするE-M1 Mark III、PureRAWがあればかなり使える絵が出てきます。
オリンパスのM.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROレンズは開放がF4.0と暗めなので室内ではあっという間に感度が上がってしまいます。ザラザラだったISO6400もこの通り。
こちらのムクドリもISO6400。
さらに厳しい条件を見て行きましょう。夕刻のすっかり薄暗くなった立山で撮ったライチョウ。マイクロフォーサーズ機(しかも少し古いGX7MK2を使用)では限界を越えていそうなISO12800で撮ったもはや証拠写真のレベルですが、驚くぐらいに綺麗に処理されています。
ライチョウ部分のトリミング。これはかなり驚きの効果です。
同じくISO12800で引きのライチョウ3羽。ノイズのせいで「ライチョウを探せ!?」状態だったものがやはり綺麗に処理されています。まるでフィクションではお馴染みの、不鮮明な画像をコンピューター処理で鮮明にする技術のようですね(まさにそれなのですけども)。
これはもう完全にカメラの設定をミスって撮ってしまったISO25600のラーメン写真ですが、やはりPureRAWの処理後は十分にブログで使えるレベルに。
先日ブログレポートで掲載した野川のカワセミ兄弟でもPureRAWを使っていました(ISO6400)。超望遠をさらにトリミングしているのでただでさえ高感度は厳しいのですが、ここまで処理できるなら野鳥撮影ではISO6400は常用できそうです。
マイクロフォーサーズが苦手とされる高感度の場面といえば、星空でしょう。m4/3でもコンポジット(加算平均)処理を使って丁寧にノイズ処理すればもう少しはましな結果が出るかもしれませんが、私は基本1枚撮りの撮影しかしてないので、PureRAWによる恩恵は絶大。星空部分よりもガタガタだった山肌のディティールが改善されているのがお分かりになるでしょうか(ISO3200/30秒)。
こちらは処理前はカラーノイズも酷かったISO3200の20秒。結構大きく変わっているのですが、ブログサイズだとそこまで分からないかも……。
星の写真の場合は加算平均合成などによるノイズ処理もありますし、PureRAWでは処理設定を細かく調整できる訳ではないので、全ての人にとって有効なツールと言えるかは分かりませんが、私の撮影や公開スタイルは手軽さ重視なので、1枚撮りの結果をPureRAWを通すだけで1ランク上の仕上がりにできるのは非常にありがたいのです。
PureRAWにスーパー解像度の併用でトリミング耐性もアップ!?
PureRAWの処理はノイズ低減だけでなくピント面のシャープネスを上げてくれる効果もあるので、ちょっとしたトリミング耐性も上がります。
さらに最近Lightroom Classicにも搭載された「スーパー解像度(強化)」(先行したAdobe Camera RAWに搭載されて大きな話題になりましたね)を併用することで、トリミング耐性も元データとは比較にならないぐらいに上がりまます。ここではPureRAW処理の後で、スーパー解像度を掛けています。
オリジナルのRAWデータとPureRAWを通した後で「スーパー解像度」で解像度を上げて大胆にトリミングした写真の比較(現像設定は同じ)。個人的にはなるべく少ない手順で写真を仕上げたい気持ちもあるので、PureRAWの工程はあるものの画像はRAWデータのままで編集が行え、Camera RAWを使うことなくスーパー解像度が使えるようになったことも大変ありがたい。
手持ちの機材では最大600mm相当までのレンズしかなく、高感度にも弱いマイクロフォーサーズ機での野鳥撮影は少々厳しい部分もありましたが、PureRAWとスーパー解像度のおかげで当分は新たな機材に手を出すことなく野鳥撮影を楽しむことができそうです。
いくら長い望遠レンズを手に入れたことで、動く鳥を撮る場合は画角内に収められなくては身も蓋もありませんし、まずは600mm相当の画角でも外さずに撮れるレベルを目指しつつ、PureRAWやスーパー解像度の力を借りることで、今までマイクロフォーサーズの弱点でもあった高感度や画素数以上に、システムの軽さという強みを生かした撮影に集中できそうです。
それにしても、今のところはまだギリギリ元のRAWデータを元にしたレタッチ(ノイズリダクション)の範疇に感じられていますが、今後ディープラーニングによる画像補完技術などがより進歩することで、撮影時には記録されていなかった(?)データまで補完、復元されていくようになると、記録写真やレタッチについての線引きを改めて考えさせられることになりそう。
今回の記事、昨日の昼頃から書いていて「もうすぐ公開できるぞ!」と思っていたらtoshiboo氏に先を越されてしまいました(笑) マイクロフォーサーズの高感度とカワセミ、見事に被ってしまいました……。
追記:RAWファイルのサイズが大きくなります
そうそう、これも書いておいた方が良いですね。PureRAWで処理を行った場合に生成されるDNGファイルは、元のRAWファイルよりかなりサイズが大きくなっているようです。今回作例で使ったファイルを確認すると、オリンパスのORFもパナソニックのRW2も(それぞれRAWファイルの形式)、なんと約3.5倍のサイズに増加しています。1.5倍ぐらいならなんとなく理解の範疇でしたが、まさか3倍以上に増えていたなんて!!(手元のSONY ARWファイルを試した際には2倍強の変化だったので、処理前後の変化量は一律ではないようですが)。
大量にRAWファイルを処理して、かつ元ファイルも取っておこうとすると、それなりにストレージ容量を食うことになるので、留意しておいた方が良いかもしれません。
さらにスーパー解像度を使用した場合、ピクセル数で4倍になるのでファイルサイズも4倍強に……。元のRAWファイルと比較すると、なんと10倍以上のファイルが生成されてしまっていました!!(300MB超のRAWファイルはヤバい……) 低画素機を使っていると日頃そこまでファイルサイズを気にしていませんでしたが、高画素とはなんと恐ろしいものなのでしょう。